男子テニスで2024年1月の全豪オープン・ジュニアの男子シングルスを制した坂本怜(18歳)が2024年9月20日、東京・有明コロシアムで会見に臨み、プロ転向を表明した。15歳で米国に渡り、IMGアカデミーで練習を積んだ身長1m95cmのホープ。憧れの錦織圭(34歳)の背中を追い、4大大会の優勝を目標に掲げた。
満を持してのプロ転向
日本テニス界の聖地・有明コロシアム。スタンドに特設された会見場で坂本怜がプロ転向を宣言した。
「小さい頃テレビで錦織圭選手を観て夢をもらいました。次は夢を与える側になり、見てくれた方を笑顔にできる選手になりたい。そのためにグランドスラム(4大大会)で優勝を目指します」
1m95cmの長身から放たれる強烈なサーブとフォアハンドが最大の武器。2024年1月の全豪オープン・ジュニアを制し、4大大会ジュニアで2019年ウィンブルドン・ジュニアを制した望月慎太郎(21歳)に続く、日本人2人目の快挙を成し遂げた。
2024年2月の男子国別対抗戦デビスカップで日本代表に選出され、同9月の全米オープン・ジュニアではダブルスで頂点に立ち、ジュニアのキャリアを有終の美で飾った。満を持してのプロ転向となる。
盛田ファンドの支援を受けて15歳で米国に渡り、フロリダ州にあるIMGアカデミーに留学した。盛田ファンドは、元ソニー副社長で元日本テニス協会会長だった盛田正明氏が、70歳でソニーグループ退職後、私財を投じて作った奨学金制度。プロテニス選手を志すジュニアの海外テニス留学を経済的にサポートする。
錦織、西岡良仁(28歳)、望月らも盛田ファンドを経てプロになった。坂本はIMGアカデミーでは練習拠点が同じ錦織と一緒にトレーニングする機会もあり、練習試合でダブルスを組んだ経験もある。
「錦織選手とはたまにIMGで一緒に練習してもらったりして、可愛がってもらっています。練習試合でダブルスを組んだことがあり、天才的なタッチだったことをすごく覚えています」
男子テニスの坂本怜は世界を狙える大器
プロデビュー戦は2024年9月23日の木下グループ・ジャパン・オープン予選1回戦。世界ランキング88位のルカ・ナルディ(21歳・イタリア)に3-6、1-6で完敗した。
ダブルフォルト4回とサーブの精度を欠き、凡ミスも相手の4倍近い15回。「緊張しすぎて頭が真っ白だった。人生で一番緊張した。試合内容も思い出せない」と本来の力を発揮できなかった。
ほろ苦いプロデビューとなったが、目標の4大大会優勝へ、明確な青写真を描く。錦織の全米オープンでのシングルス準優勝が24歳だったことを念頭に「24歳でグランドスラムのタイトルを獲得したい」と宣言して、こう続けた。
「来年(2025年)の全米オープンの予選にかかるようにランキングを上げていきたい。24歳でグランドスラムタイトル獲得からの、ケガが一時期ありつつも1年でカムバックして26歳で2度目のタイトルを獲る。そこで世界ランキングが1位になることをイメージしています」
憧れの錦織と同じようにケガで苦しむことまで織り込み済み。いたずらっぽく笑う姿が肝っ玉の大きさを感じさせた。
日本人で4大大会のシングルス優勝を経験しているのは女子の大坂なおみ(26歳)ただ1人。日本男子テニス界にとっては悲願だ。坂本の当面の課題は体づくり。体重は80kg強で、トップ選手に比べれば細身だ。
「トッププロと比べるとまだ体ができていない。ご飯をいっぱい食べて、フィジカルトレーニングをして体重を増やしてパワーを出せるようにしていかないといけない。追い込まれている状況でもできることをやるしぶとさも僕にはまだ足りていない。フィジカル、メンタルが追いついたら世界で戦えると思う」
サイズで世界に劣らない、日本では希有な存在。高い志を持ってプロの世界に飛び込む。
坂本怜/Rei Sakamoto
2006 年6月24日愛知県出身。6歳でテニスを始める。盛田ファンドの支援を受けて15歳で米国に渡り、米IMGアカデミーに留学。2024年1月の全豪オープン・ジュニアを制した。同2月の国別対抗戦デビスカップのレバノン戦では日本代表に選出。愛知・誉高に在学中。右利き(バックハンド両手打ち)。身長1m95cm。