2023年は勝負の年となる。男子テニスの西岡良仁は現在、世界ランキングが自己最高の36位。トップ20入りを目標に掲げ、2023年1月2日に開幕するアデレード国際1で新シーズンのスタートを切る。連載「アスリート・サバイブル」とは……
新しい景色を見るために
世界ランキングのトップ20入り。西岡良仁(27歳・ミキハウス所属)が2023年の目標に掲げる場所は日本男子では錦織圭(32歳・ユニクロ所属)しか足を踏み入れたことがない。2022年シーズンを終えた時点で自己最高の36位。杉田祐一(34歳・三菱電機所属)が2017年10月に記録した順位に並ぶ日本男子2位タイの位置にいる。
西岡は2022年を振り返り「ツアー終盤は自信を持てたことが大きかった。自分が30位台にいることで、自信を持ち、自分を信じながらプレーできた。そのなかで、ある程度の結果を残しながらツアーを終えることができたのでよかった」と強調。そのうえで「来年は20位以内に入ることを目指していきたいし、グランドスラムも勝ちたい。すごい楽しみ。来年のスタートをどうやって切るかが重要になる」と力を込める。
1年前はどん底にいた。2021年10月のモスクワ・カップから2022年全豪オープンまでツアー本戦で5大会連続初戦敗退。世界ランキングは一時123位まで落ちた。約3年4ヵ月ぶりに3桁に沈み、全豪オープン後の会見で「あと2年、結果が出なかったら引退する。このまま落ち続けたら、気持ちが持たない」と発言。気持ちは切れかけていたが、翌週から下部チャレンジャーリーグ2大会に出場して白星を重ねたことで、自身のテニスを取り戻した。
2022年8月にシティ・オープン(ワシントン)で準優勝を果たすと、9月の韓国オープン(ソウル)では2018年9月の深圳オープン以来となるツアー2勝目を挙げた。日本男子の複数回のツアー優勝は12勝を挙げている錦織に続く2人目の快挙。10月のヨーロピアン・オープン(アントワープ)で8強入りするなど好調をキープしたままシーズンを終えた。
2022年12月からはアメリカ人のコーチ、クリスチャン・ザハルカ氏と正式契約を結んだ。9月からの約2ヵ月、試験的にタッグを組み、正式にコーチとして迎えることを決断。今後はフォアハンドの強化に取り組む方針で「フォアハンドのクロスの精度をもっと上げて、そこでポイントを取れる展開を作りたい。今はダウンザラインの精度はだいぶ高いのでそれを維持しつつ、クロスに振れるようになると展開が増えると思う。バックハンドは武器として持ちつつ、そこを一つ追加できるだけで大きく展開を作っていける」とイメージを膨らませた。
新シーズンの初戦は2023年1月2日開幕のアデレード国際1となる。世界5位のノバク・ジョコビッチ(35歳・セルビア)、世界6位のフェリックス・オジェ アリアシム(22歳・カナダ)らも出場予定のハイレベルな大会。上位進出は簡単ではないが、この大会の結果次第では4大大会初戦の全豪オープン(2023年1月16日開幕、メルボルン)で出場する上位32人に与えられるシード入りの可能性も出てくる。
現行の世界ランキング制度が導入された1973年以降、4大大会でシードされた日本男子は錦織だけ。2回戦まではシード選手同士の対戦がないため、長丁場のグラウンドスラムを戦う上で大きなアドバンテージとなる。西岡の4大大会は2020年全豪オープンの3回戦進出が最高成績。2022年は全豪、全仏、ウインブルドン、全米の全ての4大会で1回戦敗退している。
「4大会で2週目(4回戦以降)に残りたい。グランドスラムで勝てないと世界ランキングも20位に上がれない現状がある。(2022年は)すべて1回戦負けなので、これを1回ずつ勝てていれば30位前半から20位台に入るか入らないかになってくる。そこが大きな分かれ目になると思う。いかに2週目に残れるようなテニスをするかを(コーチの)クリスと話し合っている」
新しい景色を見るために、模索を続けているに違いない。
西岡良仁/Yoshihito Nishioka
1995年9月27日三重県津市生まれ。テニススクールを経営する父の影響で4歳からテニスを始める。中学3年で渡米し、錦織圭と同じIMGアカデミーに在籍。2014年1月にプロ転向した。ツアー通算2勝。生涯獲得賞金は439万8435ドル(約6億362万円)。身長1m70cm。左利き。
■連載「アスリート・サバイブル」とは……
時代を自らサバイブするアスリートたちは、先の見えない日々のなかでどんな思考を抱き、行動しているのだろうか。本連載「アスリート・サバイブル」では、スポーツ界に暮らす人物の挑戦や舞台裏の姿を追う。