放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2023年M-1決勝に輩出した・桝本壮志のコラム。
先日、「勝てる組織のつくりかたとは?」というテーマで取材をうけました。
M-1とキングオブコント王者を輩出し、毎年のように教え子が決勝へ進出しているNSC講師の視点から、「組織(チーム)づくり」についての知見を聞きたいとのことでした。
まあ、「教え子が優秀だっただけ」のひと言に尽きるのですが、取材者いわく「こんなにメモしたのは初めて」だったそうなので、今回は僕なりの“チームづくりのコツ”を2つほどシェアしてみたいと思います。
チームづくりのイメージは、世界最古の「法隆寺」
芸人学校には全国から「ややこしいヤツ」が集結します。元暴走族の総長、お笑い留学してきたアメリカ人、元校長先生、はたまた「会社の忘年会の罰ゲームがNSCに入学することでした」みたいなツワモノまでいます。
通常の講師(リーダー)は、漫才やコントのネタのクオリティ、会社で言うところの“仕事ができるorできない”を見て、有望株だけをピックして選抜クラスをつくっていきます。
しかし僕は、せっかく“ややこしいヤツが集まる場所”なので、「仕事はイマイチだけど、なんかオモロそう」な人材も選抜して、どんどんチームに引き入れています。
これは、1400年の歴史をもつ世界最古の木造建築・法隆寺が、“真っすぐな木でなく、あえてクセのある曲がった木を組み合わせて建造された”という知恵がヒント。
上司に従順な「真っすぐな人材」ばかりを集めてチームをつくるよりも、コントロールしにくいけど何かやらかしそうな「クセのある人材」を加えたほうが組織は強くなるし、耐性も上がると踏んだのです。
このチームづくりによって、EXIT兼近くんや、ぼる塾ら、お笑い未経験ながらスターになっていった人材が何十人も生まれたので、“エリートを寄せ集めただけの組織は強くならない”というのが僕の持論です。
いつの間にか「仕事ができない社員を探しまわり排除するリーダー」になっていませんか?
お城の石垣には、巨石の隙間を埋めている小さな石があるし、日本の伝統・お弁当にも、空白を埋めるお惣菜の存在は欠かせません。
チームづくりの大切なポイントは、“社員を「締め出す」のではなく「引き入れる」こと”。これが日本らしい勝ち筋ではないでしょうか。
組織を強くしていく「じゃない方リーダー」思考
次に、強くなるチームづくりは“ムードづくり”と“空間づくり”と連動しています。
甲子園の優勝校は、監督と球児の関係がとても良好だったりしますよね。
これは、試合で采配を振るう前に、リーダー(監督)のチームマネジメントが「優勝」しているとも言えるのです。
では、どうすれば組織に良いムードと空間が生まれるのでしょう?
講師になって14年、僕はテレビ番組でおなじみの「じゃない方芸人」ならぬ、「じゃない方リーダー」を心がけてきました。
じゃない方リーダーとは、ビジネスシーンで一般化されてきたリーダー像の“じゃない方”を試してみる手法。
例えば、社会では長らく「リーダー=権力者」という概念が定着してきました。
これを“じゃない方”で思考してみると、「リーダー=そんなに偉くない」という別解が生まれます。
さらに考えを深めていくと、「組織のトップこそチームの土台になるべきかも?」などといった趣向が発芽し、イノベーティブな組織をつくるキッカケが生まれやすくなるんです。
吉本興業から講師を拝命したとき、芸人学校は礼節に厳しく、講師もどこか恐れられている存在のように思いました。
そこで僕は、ネタ終わりの「ダメ出し(講評)」を、まず良い点からふれていく「ホメ出し」という発想に換えたり、授業は「背筋を伸ばして体育座り」だった決まりを、「一番ラクな体勢で聴けばOK」といったルールに変えたりなど、空間とムードづくりを試みてきました。
今年はついに、Yogibo(ヨギボー)に寝そべって授業を受けている生徒がいたので大笑いしたほどです。
僕の組織マネジメントもまだまだ道半ばです。共に悩み、考え、成長していきましょう。
ではまた来週。