PERSON

2024.04.30

In The Office in Hawaii 数々の賞を獲得する、ワイキキの凄腕シェフガール「ハワイが目指すべき料理を教えてくれた」

ハワイで、夢を抱き、働く女性たちへのインタビュー連載最終回は、超人気店「ナチュール・ワイキキ」でエグゼクティブシェフを務める小川苗さんにインタビュー。ロコはもちろん、舌の肥えたツーリストたちを魅了する味はいかに生まれたのか。その軌跡を紐解く。【In The Office in Hawaii④】

1992年東京都生まれ。調理師専門学校卒業後、「NARISAWA」で経験を積み、その後ニューヨークやパリの星付きレストランで腕を磨く。2018年にハワイに移り、22年、「ナチュール・ワイキキ」開業で、現職に。ハワイで最も歴史ある賞のひとつ、ハレ・アイナ賞を2022 年、2023年と2年連続で受賞。⾷のアカデミー賞と名高い米国のJAMES BEARD AWARDS2024年北⻄太平洋地域セミファイナリストにも選出された。

「ナチュール・ワイキキ」エグゼクティブシェフ・小川苗

お皿に被せられたガラスの蓋を開けると、中からふわっとスモークが上がり、次いでハワイ島コナ産のアワビがお目見えする。燻製の香りをまとってアワビと肝のソース、蕪のロースト、そして、リゾット。そんなインパクトのある演出とビジュアル、味で多くの人を虜にする「ナチュール・ワイキキ」を率いるのが、この道10年になる小川苗さんだ。

「親族に画家やアーティストなどクリエイティブな仕事をしている人が多くて。私もずっと、ものをつくる仕事に就きたいと思っていました。母が料理上手で、私も子供の頃からお料理をするのが好きだったので、この道に進むことを決めたんです」

誰もやっていないことに挑戦したい

イノベーティブ・フレンチの先駆け的存在、「NARISAWA」で料理人人生をスタートさせ、ニューヨークの二つ星やパリのビストロで修業を積んできた小川さんが、ハワイに挑戦の場を移したのは2018年のこと。

「パリで働いている時に、ワイキキで新しくオープンするフレンチ・レストランがスーシェフを募集していることを知って。ハワイでフレンチ、しかも、イノベーティブというのが新鮮に思え、エントリーしました。新しいこと、誰もやっていないことにチャレンジするのが好きなんです」

とはいえ、ワイキキという街は、それまで過ごした東京、ニューヨーク、パリといった大都市とは勝手が違う。食材の仕入れをはじめ、時間の流れや人々のマインドなどの違いに、当初は戸惑うことも多々あった。けれど、美しい海と山々が街と共存しているハワイ・ワイキキという土地は、小川さんの料理に新たなインスピレーションを与えることになる。

「それまでは、食と自然のつながりをそれほど意識していなかったんですが、ここに来てからは、だんだんと自然に寄り添うような料理をつくりたいと思うようになりました。東京やニューヨーク、パリのような大都市だと、自分がつくりたいメニューに合わせ、必要な食材を、どこからでも取り寄せることができます。

だけど、ハワイではそれが難しいこともある。でも、だからこそ、ハワイにしかないすばらしい食材を使って料理することのおもしろさ、楽しさに目覚めたのだと思います」

ハワイ島コナ産アワビを使った一皿にしても、スモークにはハワイの木、キアヴェを使い、蕪はオアフ島でも著名なオーガニック農場のものというように、食材は“オール・ハワイ”。

どこででも味わえるフレンチではなく、ハワイだからこそのフレンチ。今、小川さんが目指しているのは、そんな料理だ。と同時に、サステナブルであることもコンセプトに掲げている。

「食と自然のつながりを教えてくれたのは、ハワイ。恩返しの意味を含め、お客様が自然や地球の未来を考えてくださるきっかけになるようなお料理を、これからも提供していきます」

小川苗へのQ&A

Q1 リフレッシュにおすすめの場所は?

――ワイマナロビーチ。海の色がすごくきれいで、人があまりいなくて静か。芝生には木陰もあるので、ここで1日のんびり過ごすのが最高のリラクゼーションです。

Q2 よく行くスーパーマーケットは?

――カカアコの「ダウン・トゥー・アース」。オーガニックの食材やローカルフードが豊富で、マンゴーやパパイヤ、アップルバナナなど、フレッシュ・フルーツをよく買います。ナッツの量り売りもあって楽しいですよ。

Q3 お気に入りのB級グルメはありますか?

――マノアにある「オフ・ザ・フック」の「ポケ丼」。とくに、ネギと生姜が効いたジンジャーソースが気に入っています。あとは、「わがや」の豚骨ラーメン!

TEXT=村上早苗

PHOTOGRAPH=KUNI

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