PERSON

2023.12.04

深夜にSNSで仕事の愚痴を書くのは「残業」です――SNSとの理想的な付き合い方とは?

放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位の桝本壮志のコラム。

うまくSNSと付き合えていますか?

職場の愚痴をSNSでブチまけたり、仕事の鬱憤を晴らすためにネットで仮想敵を探し回ったり、キラキラしている人と自分の日常をくらべて凹んだりしていませんか?

今週は、僕が売れっ子芸人になった教え子たちに伝えてきた「SNSとの付き合い方」を公開しますね。

夜にSNSで仕事の愚痴=それって残業です

深夜に「上司」「辞めたい」などでリアルタイム検索をすると、投稿の多さにびっくりすることがあります。

それだけストレスフルなビジネスパーソンが多いわけですが、僕に言わせると、夜間の仕事に対するヘイトは“たんなる残業”です。

例えば、「企業戦士」や「24時間働けますか?」など、現代人からすると恐ろしいコピーが躍った高度成長期さえ、退勤したあとは、家庭に戻り、仕事と自分を自動切断していました。もし職場でのイライラが頭をよぎっても、シャワーを浴びながら「あぁ~!」と叫ぶくらいでした。

しかし現代の私たちは、退勤して自宅に戻っても、職場でのイライラがよぎると、仕事と自分をSNSで再接続させ、寝落ちするまで没入してしまう。

感情は違えど“仕事のことを考えている”という業務は同じなので、残業しているようなものなんです。

寝る寸前まで無給で残業したいですか?

そう、なんとなくSNSとの距離感がつかめてきますよね?

100年後を想像して、SNSにブチまける

文学館に行くと、文豪のラブレターが展示されていて、読んでいるこっちが恥ずかしくなることがあります。

彼らは、100年後に自分の恋文が公然にさらされることを想像できていたでしょうか?

これは、すべての現代人にありうる未来だと思います。

いくら匿名でSNSをやっていてもIPアドレスは残ります。ならば100年後、あなたのIPを開示して、子孫たちが“SNSを通して故人を偲ぶ”かもしれないのです。

そうなったとき、祖先が会社の愚痴ばかり言っていたり、見知らぬ人にケンカばかり売っていたりしたら、お互い気まずくないですか?

SNSは、ストレス解消や憂さ晴らしにうってつけですが、「死後の個人情報保護法」なんてものが制定されないかぎり、私たちは「未来の危機」を想像しながらSNSと向き合わなければならないと思っています。

SNSは「主流」でなく「支流」にするべし

SNSのフォロワー数が、そっくり「自分の価値」だと思っている人が多いのですが、そんなことは決してありません。そのような思考だと“詰んでしまう”ので要注意です。

僕は生徒らに“SNSでは4つの人格を持とう”と伝えてきました。

その理由を語る前に、まずは日常に置き換えて考えてみましょう。

人間関係を円滑にするには、1つのコミュニティ(例:親友グループ)に属している人より、複数のコミュニティ(例:親友、職場仲間、趣味仲間、スポーツ仲間)に属している人のほうがうまくいきます。

なぜなら、複数のコミュニティを持つ人は、例え1つのグループ内でケンカをして人間関係が“不全”になったとしても、別のグループに愚痴ったり相談したりして“蘇生”できるから。

言わば、複数の“支流”を持っている人のほうが、1つの“主流”しか持っていない人よりも“循環がよい”のです。

これは、SNSと向き合う上でも有効な思考法です。

例えば、SNSでは4つの人格を持てます。「X」では文章好きな人格、「インスタグラム」では写真好き、「TikTok」では音楽好き、「Facebook」では人脈づくりに特化した人格といった塩梅です。

このように、全てのSNSを本流にせず“支流の感覚”で楽しみ、実験的につき合っていくことが、SNSに振り回されない令和の生き方だとも思っています。

それではまた来週。ご意見や取り上げてほしいテーマがあれば僕のSNSまで(笑)。

桝本 壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。

COMPOSITION=古澤誠一郎

TEXT=桝本壮志

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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