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2023.09.03

美空ひばり、長嶋茂雄、高倉健…本物のレジェンドはけっして威張らない【五木ひろし】

歌手・五木ひろしが通算175枚目のシングル「時は流れて…」を2023年9月にリリース。2024年で歌手生活60周年を迎えるレジェンド五木ひろしの半生に迫る。連載13回目。過去記事はコチラ

孤軍奮闘。夷険一節。落合博満と40年交流

芸能界で50年を超えるキャリアのある五木ひろしの交友関係は広く深い。美空ひばり、石原裕次郎、高倉健、長嶋茂雄……。レジェンドのなかのレジェンドの名前がずらり並ぶ。後輩世代との交流も豊富だ。五木が司会を務めるBS朝日で『人生、歌がある』では歌謡界の後進たちにもチャンスを設けている。

そんななかでも長い間家族ぐるみで深く交流しているのが、プロ野球で3度三冠王を獲得した落合博満だ。

「落合さんとのお付き合いは1980年代から。彼がロッテオリオンズ(現・千葉ロッテマリーンズ)の若手選手だったころに出会いました。それ以前から、僕は西鉄ライオンズ(現・埼玉西武ライオンズ)の元大エースで1980年代のロッテの監督、稲尾和久さんと親しくさせていただいていました。その食事の席に、稲尾さんが村田兆治さんと落合さんを連れてきた。それが最初です」

当時のロッテは強かった。しかし、その時は西武の黄金時代。優勝から遠ざかっていた。ホームグラウンドの川崎球場は閑古鳥が鳴いていた。

「そんななか落合さんは孤軍奮闘で、三冠王を3回も獲りました。彼はよく夫婦で僕のコンサートを観に来てくれましてね。自分も満員のスタジアムでプレイしたいと話していたものです」

五木は落合のホームランにご祝儀も用意した。

「すると、彼は本当に打つんですよ。落合さんが中日ドラゴンズに移籍した時期だと記憶していますが、僕が激励に訪れたら、嬉しそうにしてくれてね。ホームラン宣言をした」

五木の姿を見た落合はにっこりと笑った。

「五木さんが観に来てくれたから、今日は1本打ちますよ」

有言実行。五木の前で強烈な一発を放った。

「当時僕が伊豆に持っていた別荘を家族でよく利用していました。清原和博君や長嶋一茂君を連れて行ったこともあったはずです。プロ野球の名球会に入らないことでもわかるとおり、本来落合さんは群れない。つるまない。でも、本気で慕ってくる人間は受け容れていました」

五木も大手事務所に所属することなく、キャリアを重ねてきた。孤軍奮闘。夷険一節。共通する性質がおたがいを引き付けたのかもしれない。

「選手時代も、監督時代も、彼はいわゆる“オレ流”を貫きましたよね。誰にも媚びることなく、自分の信じる道、信じるやり方を貫きました。監督時代は、自分の仕事は勝つこと、と言って、ファンにすら媚びませんでした。メディアへのリップサービスもなかったはずです。僕も同じ。自分の仕事は歌うこと。歌でお客さんに満足していただくことに徹しています。だからステージでも、イントロや間奏のときにお客さんに話しかけたり、客席を盛り上げるようなMCはやりません。そういう感覚を共有しているからこそ、長い交流が続いているのでしょう」

2人はもう40年、関係が続いている。

「親しいからこそあえて乱暴なことを言ってしまいますが、彼の息子の福嗣君は叱られずに育って、子どものころはとんでもない悪ガキでしてね。よくいえば天真爛漫。でも、いつのまにか成長して声優として活躍しています。2021年に開催した『五木ひろし 50th Anniversary ITSUKIフェス』がオンエアされたときにはナレーションを務めてくれました。縁を感じましたね」

目を合わせれば、その人がわかる

人間的に自分と合うか。合わないか。五木は初対面のときに、一瞬で判断する。

「判断する基準はシンプルです。目が合うか。合わないか。それでわかります。おたがいの目を見て会話ができなければ、お付き合いはできません。どんなに社会的に評価されている人でも、1対1で会ったときに目を合わせられない人と僕は付き合わない」

徹底している。

五木プロモーションのスタッフの面接でも、目を見てジャッジしてきた。

「目を見て話せば、人間性はわかる。瞳にうそがない人は採用しています。もちろん仕事のスキルは大切なので、試用期間を設け、周囲のスタッフの意見に耳を傾けて本採用にするかどうかの判断はしていますが」

本物は腰が低く、何事にも丁寧

五木自身は威張らず、腰を低くすることを強く意識している。

「レジェンドの先輩たちを見て、その姿から教えられたことです。ほんとうに立派な方、質の高い仕事を続けているかたは例外なく腰が低い。威張りません。長嶋茂雄さんはグラウンドでは華やかで、闘争心にあふれ、目立ちたがり屋でもあったと思います。でもプライベートで会うと、イメージががらりと変わります。腰が低く、ひと回りも若い僕にも気を遣って、ていねいに接してくださいます。高倉健さんも美空ひばりさんもそうです。ひばりさんは、昭和天皇の晩年、皇居に記帳に行かれています。その際もけっして特別扱いを受けませんでした。一般の方々と一緒に長い列を並び、記帳し、帰宅されていました。そういう先輩たちの背中を見て、自分の態度も気をつけています」

プライベートでは“ふつう”を心がけている五木だが、ときどきふつうであり過ぎてしまう。

「パジャマの上にコートみたいなものを羽織って、犬の散歩に出かけると、娘に厳しく指導されます。お父さん、もっとちゃんとしなさい! と。ご近所の目は気にしてほしい、と。反省しています」

TEXT=神舘和典

PHOTOGRAPH=片桐史郎

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