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2023.05.21

「堀江貴文は投資の天才」田端信太郎と藤野英人が語る、ライブドア事件後の変化とは?

ひふみ投信シリーズのファンドマネージャー藤野英人氏が率いるレオス・キャピタルワークスが運営するYouTubeチャンネル「お金のまなびば!」から、藤野氏と、名経営者を側で見てきたインフルエンサーで企業PRを務める田端信太郎氏の対談を3回に渡って紹介。第1回は、ライブドア時代の部下だった田端氏が堀江貴文氏を側で見て、学んだことを語る。

田端信太郎と藤野英人

金は、直接追うと逃げる! 金そのモノに支配されるな

NTTデータ、リクルート、ライブドア、ZOZOなどを経て、現在は企業のPR・ブランディング、さらにオンラインサロン「田端大学」などの運営を行う田端信太郎氏。その氏に、藤野氏はいつものごとく尋ねた。「お金は、好きですか」と。

「正々堂々とお金を稼ぐのが好き」

田端氏は間髪入れずにそう答える。お金というモノが好きなのではない、お金を稼ぐ過程が好きなのだと。田端氏はさらに続ける。

「『貨幣とは鋳造された自由である』というドストエフスキーの言葉があります。お金を持っているということはそれだけ自由なんです。例えば今日、急に雨が降ってきたらどうするか。タクシーに乗るかもしれないし、傘を買うかもしれません。そして、春雨のいい季節だからと、あえて濡れて帰ることもあるのかもしれません。ポケットの中に、タクシーに乗れる、傘を買えるお金が入っていて、濡れて帰るのと、他に選択肢がないから濡れて帰るのでは全然意味が違う。お金はそういう意味では自由に生きる前提条件としてとても大事です。けれどお金を得ること自体が目的化してしまって、かえって不自由になっているという状態もよくはないですよね」

田端氏は自身のYouTubeチャンネル「田端大学 YouTube支店」などで、つみたてNISAやiDeCoをしない者は愚かだと、時に強い口調でまくしたてる。なぜ語気を荒げてまで、お金について語るのかと、藤野氏が問うと。

「世の中のほとんどの不安って、お金と健康と人間関係。僕が誰かの不安を第三者として拭ってあげられるのはお金しかないですから」

投資家である藤野氏自身も日本人が持つ「お金の不安」の大きさを感じているという。不安ゆえにコツコツ貯金をし、死んだ時その貯金額は生涯のピークになっているという皮肉。つまり金を持つ者は金に支配され、金を持たない者の方が自由であるという状況に陥っているのだという。

「しかも金は、直接追うと逃げますからね」。田端氏も静かに頷く。冒頭で田端氏が言った「正々堂々とお金を稼ぐのが好き」とは、この金そのモノに執着してしまわないため、自身の仕事を見失わないための、呪文のような言葉なのかもしれない。

左:藤野英人/Hideto Fujino
早稲田大学法学部卒業後、国内・外資大手資産運用会社でファンドマネージャーを歴任。2003年レオス・キャピタルワークス創業。中小型・成長株の運用経験が長く、ファンドマネージャーとして豊富なキャリアを持つ。投資信託「ひふみ」シリーズ最高投資責任者。
右:田端信太郎/Shintaro Tabata
慶應義塾大学経済学部卒業後NTTデータ入社。2001年にリクルートへ転職、2005年堀江貴文氏と知り合いライブドアへ。事件後はコンデナスト・ジャパン、NHN Japan(現LINE)、スタートトゥデイ(現ZOZO)に勤務。2000年よりフリーランスとして企業PRやブランディング、自身のオンラインサロンの運営などを行う。

ライブドア事件から20年。堀江貴文の最大の変化とは

これまで多くの優秀な経営者を側で支えてきた田端氏には、ライブドア在籍時に見た堀江貴文氏の姿が忘れられないという。

「最初に堀江さんと仕事をした際、『タイムイズマネー』とよくおっしゃっていました。『ゾウの時間ネズミの時間』というベストセラーになった本がありましたが、堀江さんと他の人とでは生命体として基本の心拍数、リズムが違う。堀江さんは常にこの『タイムイズマネー』が念頭にあり、『お金が寝る』のをすごく嫌がるし、ものすごくせっかちなんです。そういう面では堀江さんはもしかしたら経営者というより、投資の天才なんだなと思うのです。藤野さんはどう思いますか?」

この問いに対してファンドマネージャーとしてキャリアを重ねてきた藤野氏は続ける。

「そうですね。投資家としても優れているのかもしれません。けれどもし堀江さんがライブドア事件の時に逮捕されなければ、今のFacebookは存在していなかったのではないかと僕は思います。堀江さんが先にFacebookを作っていたと思うんです。そういう面でみると、あの逮捕は国家的損失でした」

堀江氏とともにライブドアを生きた田端氏にとって、その言葉は今も励みになるようだった。

「僕も当時はライブドアの一員でしたから、そう言っていただけるとやはり嬉しいですよね。でももし、堀江さんがファンドマネージャーなんかしたら、すごく成果を出していたと思います。サイバーエージェントの藤田(晋)さんと堀江さんは朋友のように語られますが、やはり藤田さんは実業家であり、人間に対する見方が違う。実業家は人間を見るのが大事なんでしょうね。けれど堀江さんは新卒採用をして、5年10年人材が育つのを待つことはできないと思います。せっかちだから(笑)。日本でスケールする会社を作ろうとしたら、常に中途のエキスパートを、市場価格でオンデマンドで採用したらいいっていう、堀江さんのやり方は無理があるんです」

藤野氏と田端氏、ふたりは今の堀江氏を見て変化を感じているという。藤野氏は言う。

「堀江さんはせっかちだとおっしゃる田端さんには、ほぼほぼアグリーなんですが、けれど出所後は、堀江さんの中の時間の流れが変わったような気がするんです」

田端氏もうなずく。

「近年どんどん変わってきました。インターステラテクノロジズ(北海道で観測ロケットや衛星打ち上げロケットを独自開発。堀江氏がファウンダー、取締役を務める)を始めるにあたって、投資だけではなく、実業家としての視点を持つようになったなと。ライブドア事件から20年近くが経って、そこが1番堀江さんのなかで変化したのかもしれません」

正々堂々と稼ぐ。その過程を楽しむ。その冒頭の田端氏の発言は、ビジネスにまっすぐに立ち向かう現在の堀江氏をリスペクトする言葉でもあるのかもしれない。

次回は、田端氏がZOZO創業者の前澤友作氏から学んだお金の考え方を語る。

動画で対談を見たい人はこちら↓↓↓↓

TEXT=安井桃子

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