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2023.03.24

「”アマチュアリズム”を活かす」東大卒、WEリーグチェア髙田春奈の新・ビジネス論

ビジネスパーソンとしてキャリアを重ねるWEリーグチェア髙田春奈は現在、東京大学大学院教育学研究科博士課程にて研究を続けている。自身が起業したのち、経営を学ぶため東京大学の経済学部経営学科へ。卒業後、同大教育学部も卒業している。ビジネスにも活用している、現在の研究テーマ“アマチュアリズム”について話してもらった。

人材育成と教育は違う!

――大学を卒業後、ソニーの人事部での仕事を経て独立、経営について学ぼうと学士編入をして東京大学の経済学部経営学科へ。
「経営を学ぼうと思ったのは、ソニーで4年半働き、本当に人事のことしか分からなかったからです。自分で勉強をするのでもよかったのですが、追い込まないとやらないタイプなので(笑)」

――以前、教育をライフワークとして考えているとお話しされていましたが、それは人事部でキャリアをスタートさせたことに関係していますか?
「ソニーでは人事部に配属されて、人材育成の仕事をやらせてもらいました。長くはありませんでしたが、自分のキャリアの専門性が人事だと考えています。ソニーを離れたあとも、自分ができることは人事しかないからやろうと思いました。ただ、人材育成と教育は違うものだと思っています」

――と言いますと?
「人材育成というのは、企業に役立つ人を育てることなので、社会に役立つ人を育てることとは違います。逆に言えば、会社なのに、考え方とか生き方ということにまで踏み込むと、そんなことまで会社でやらなければいけないのですか?と思う人もいる。私自身もそれを思ったときに、自分の人生の後半、何を考えながら生きたいかを考えたときに、特に子どもたちが幸せに生きることに至りました。

だとすると、教育が軸だと思い、教育学部に入りなおしました。教育の勉強をしてみると、自分の知らない世界がまだまだたくさんあることを知り、それを学ぶことを自分のライフワークにしていこうと思いました」 

――教育の本質とはどういうことだと考えていますか?
「教育は人がより良く生きるためのものだから、役立つ人間を育てることではありません。勉強ができなくても、サッカーができなくても、幸せに暮らせる人たちをどう作っていくかを考えるのが教育だと思います。

会社のなかで、人を評価して、育成してということばかりをやっていると、人間の本質から外れてしまうなというのを逆説的に強く感じるようになりましたね。そういう疑問があり、教育学部に通いました」

――いわゆる教育現場で仕事をしているわけではないですが、研究をし続けていることのメリットとは?
「そうですね。私が今やっていることは生きていくうえでの答え探しをずっとし続けているという感じです。アカデミックな現場で、ずっと考え続けているだけだと、現実社会というか、現場がわからないというのもあるでしょうし、逆に現場だけだと、すごく目先のテクニックのことになってしまうはずです。

フェミニズムの問題にしても、すごく考えていらっしゃる先生がいて、その方々をリスペクトし続けないといけないし、私たちが簡単に女性活躍とかいうのは失礼だと思っています。だからWEリーグで仕事を始めてからは、少しずつフェミニズムについての論文や書籍を読んだりしています」

――学問を実社会に繋げるパイプにもなれるのではないでしょうか?
「考えていることを世の中に落とし込んだほうがいいと思っています。自分の教育思想のなかで、自分が考えていることと、自分が現場でやっていることがすごく繋がる瞬間がたくさんあって、ありがたい仕事をさせてもらっているなと感じます。

スポーツというのは人間がやっていて、しかも必ずしもやったことが結果に繋がるわけではありません。そういう現実と、自分の今の研究テーマがあっているので、結果的に学んでいることが仕事に役立っています」

髙田春奈/Haruna Takata
1977年5月17日長崎県佐世保市生まれ。国際基督教大学卒業後、ソニーに入社。秘書、人事を経て、2005年独立。主にジャパネットグループにおける人事コンサルティング、広告代理店業(メディアバイイング、クリエイティブ)を経て、2020年Jリーグ V・ファーレン長崎の代表取締役社長に就任。2022年3月にはJリーグ常勤理事となり、同年9月には公益社団法人日本女子プロサッカーリーグ(WEリーグ)のチェア(代表理事)に。2008年には東京大学経済学部、2015年には同大教育学部をそれぞれ卒業。東京大学大学院教育学研究科修士課程を修了し、現在は同院博士課程にて研究を続けている。趣味はゴルフとジャズを歌うこと。

問題を放置していてもストレスはなくならない

――現在の研究テーマを教えてください。
「いくつかあるのですが、これを話し出すと長くなります(笑)。そのひとつがアマチュアリズムです。アマチュアリズムは、たとえばスポーツ選手はプロになった瞬間、スポーツが仕事になります。本当はサッカーを夢中でやってたはずなのに、仕事になった瞬間、結果を求められて、意欲の質が変わったり、なくなってしまったりすることがあるかもしれない。

だから、アマチュアリズムの良さを労働の場でも活かせないかと考えます。教育の場でも何かができるようになるのではなくて、その人が生き生きと輝き、活躍できるような教育をする。そういうことを研究しています」

――WEリーグでの仕事を始める前からですか?
「そうですね」

――WEリーグが始まり、選手たちもプロ契約を結ぶことになりました。サッカーを仕事にできる喜びもあるでしょうし、サッカーに集中できる環境が整うという利点もありますが、求められるものやライフビジョンにもたらさせた変化はポジティブなものばかりではなく、不安をいだく選手もいるのではないかと危惧します。
「そうですね。プレッシャーも変わるだろうし、それで苦しんでいる選手もいるとは思います。

でも、プロになったとき、プロフェッショナルとはなんだろうと考える機会になればとも考えます。本当に超一流といわれるアスリートは、アマチュアリズムを失っていないようにも思います。ある種の哲学者みたいな感じと言いますか。そういう意味でも、考え方としてのアマチュアリズムをプロの世界にももっと導入できるのではないかと思います」

――改めて、アマチュアリズムとは?
「楽しむとか、自由であるとか多様であること。WEリーグの理念になりますね」

――それは特別なことではないですね。
「はい。今まで、スポーツの仕事を専門にするまでは、仕事の現場でのアマチュアリズムというのが自分のテーマではあったのですが、せっかくスポーツに携わるようになったので、スポーツのアマチュアリズムについて考えるようになりました。スポーツの由来を考えると、遊びとかそういうところに辿りつくので。せっかくだから、スポーツをテーマに考えています」

――髙田さんの学びや研究こそがアマチュアリズムだなと感じます。
「何も言われなくても考えてしまうし、なんでかなと思ってしまう。教育思想は過去の哲学者の理論を適用し、現代の現象を説明するものです。昔の人たちもこんなに考えていたのか、すごい、と思うことが多いですね。それを今に紐付けて考えています」

――アマチュアリズムをビジネスで実戦していることはありますか?
「チームで実戦をしているわけではありませんが、人材を登用するときに過去の経験を重視しないというのはありますね。たとえばサッカーを知らない人でも成長の余地や可能性を感じ、やってくれると思ったら登用します」

――日常の仕事のストレスをリフレッシュするためにやっていることはありますか?
「1回考えるのを止めます。とらわれてしまっているときは、1回離れて冷静に考えてみるようにしています。もしかしたら、そんなに悩むことではないと思えるかもしれない。テレビを見たり、本を読んだり、違う世界に身を置いてみると、この常識は常識ではないと見えてくることがあります。ただ、それでは解決にはならないですよね(笑)。」

――解決のための手段を探すしかない。
「解決したいときには、問題や悩みに近い本を読んだりします。自分のなかにモットーとしては、”悩んでいることは放置していても解決しない”があります。問題を解決しないと、自分の悩みは晴れない。そのためのヒントを本や外の人にもらうことはありますね」

TEXT=寺野典子

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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