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2022.10.12

史上最年少の三冠王! ヤクルト・村上宗隆が才覚を魅せた高校時代

ヤクルトが圧倒的な力を見せた、2022年のセ・リーグレギュラーシーズン。今シーズンを語る上で絶対に外せないのがヤクルト・村上宗隆だ。今回は、歴代最年少三冠王となった村上宗隆がスターとなる前夜に迫る。連載「スターたちの夜明け前」とは……

村上選手

写真:日刊スポーツ/アフロ

王貞治超えのスター誕生

プロ野球のレギュラーシーズンも終わったが、2022年の最大の出来事と言えばやはり村上宗隆(ヤクルト)の活躍ではないだろうか。6月からは3ヵ月連続で月間MVPを獲得するなどホームランを量産。最終的に打率.318、56本塁打、134打点の大活躍で、NPB史上8人目となる三冠王に輝いたのだ。

ちなみに22歳での三冠王は、歴代初。これまで落合博満(当時ロッテ)の持っていた28歳を大幅に上回る記録である。またシーズン56本塁打はバレンティン(当時ヤクルト)の60本塁打には届かなかったものの、日本人選手としては王貞治(当時巨人)の55本を抜く歴代最多であり、それをシーズン最終打席に放つというのもスターの証と言えるだろう。

村上についてはこの連載でも2021年6月に「高校時代、村上宗隆は捕手としても大きな可能性を秘めていた。」というテーマで一度取り上げているが、これだけの活躍をしたということで、アマチュア時代のプレー、そしてプロ入り時点の評価などについて再度深堀りしてみたいと思う。

村上の名前を最初に知ったのは九州学院に入学した直後の2015年の春だった。1年生ながらいきなりファーストのレギュラーつかみ、5月に行われた早稲田実との練習試合で、同じく1年生で高い注目を集めていた清宮幸太郎(現・日本ハム)の前でホームランを放ったことが大々的に報じられたのだ。夏の熊本大会でも初戦の第1打席でいきなり満塁ホームランを放つなど、極めて順調な高校野球のスタートを切っている。

しかし前回のコラムでも書いたように、その後出場した甲子園では2022年のドラフト候補に挙げられている遊学館のエース小孫竜二(現・鷺宮製作所)に完全に抑え込まれており、強い印象は残っていない。そんな村上の打撃に驚かされたのは、翌2016年5月12日に行われた九州大会、海星(長崎)との試合だ。

この試合で村上は2本のヒットを放ち、2つの四球を選んで4度出塁しているが、その打撃の安定感は1年夏の甲子園とは別人と言えるものだった。当時のノートにも「少しバットのヘッドが中に入るが、それ以外は目立って悪いところがない。バットの動きが小さく、ゆったりとした動きでタイミングをとり、ステップも慎重。トップの形が安定して、振り出しの鋭さ、ヘッドスピード、インパクトの強さ全て目立つ。打ち損じても打球が速いのでヒットになる。相手の守備も極端なシフト。大物感は凄い」とある。村上を翌年のドラフト候補として意識して見るようになった瞬間だった。

その期待通り、村上はその後もホームランを量産。最終的には高校通算52本塁打をマークしている。この数字自体はそれほど驚くべき数字ではないが、際立っていたのが飛距離だ。熊本県の高校野球のメイン会場であるリブワーク藤崎台球場は外野が広く、ホームランが出づらい球場として知られているが、3年春にはそこで場外ホームランも放っている。この頃には九州担当のスカウトの間では、ナンバーワンの打者という評価は不動のものとなっていた。

まだまだ止まらない、球界のスターとしての成長

2017年に広島の苑田聡彦スカウト統括部長に密着した『プロフェッショナル仕事の流儀』(NHK)の番組冒頭で、九州担当の田村恵スカウトが「部長、九州にとんでもないのがいるんですよ。久しぶりに高校生でこんなバッター見ました」と映像を見せているシーンがあるが、その選手こそが村上だったのだ。田村スカウトはホームランの映像を見せながら冗談交じりに「170メートルくらい飛んでいった(笑)」とも話しており、その飛距離がいかに規格外かだったかが分かるだろう。

しかしこの年のドラフト会議で、村上にいきなり1位指名する球団はなく、最終的には清宮の外れ1位(ヤクルト、巨人、楽天が競合)となっている。清宮の評価が高かったことは間違いないが、村上のバッティングに対して課題があったこともまた確かだろう。当時の熊本は秀岳館が全国レベルのチームとして君臨しており、村上の所属していた九州学院は2年夏、3年夏とも決勝で秀岳館に敗れている。

そしてこの2試合合計の成績は8打数1安打、6三振と完璧に抑え込まれているのだ。秀岳館の田浦文丸(現・ソフトバンク)と川端健斗(立教大卒)の2人はプロも注目するサウスポーだったが、そんな相手とはいえ、ここまで結果を残せない点に不安を感じたスカウトもいたのではないだろうか。

先日、村上のプロ入り後2年間ヘッドコーチを務めていた宮本慎也氏に話を聞く機会があったが、宮本氏もホームランは打てても、打率を残すには時間がかかると感じていたと話していた。実際にプロ入り2年目の村上の成績は36本塁打を放ちながらも打率は.231と低く、リーグワーストの184三振も記録している。

そこから翌2019年は打率3割をクリアし、5年目の今年は首位打者まで獲得しているというのは改めて驚きである。持っていたポテンシャルの高さはもちろんだが、その後の成長スピードが尋常でなかったことは間違いないだろう。

今シーズンも55本塁打を放ってからはしばらく当たりが出ず苦しんだ時期もあったように、発展途上と言える部分は残されている。逆に言えば今年で22歳という年齢を考えても、まだまだここから成長することも期待できると言えるだろう。令和初の三冠王がこの先どこまでの打者に上り詰めていくのか。今後も村上のバットから目が離せない。

Norifumi Nishio
1979年愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。在学中から野球専門誌への寄稿を開始し、大学院修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

■連載「スターたちの夜明け前」とは……
どんなスーパースターでも最初からそうだったわけではない。誰にでも雌伏の時期は存在しており、一つの試合やプレーがきっかけとなって才能が花開くというのもスポーツの世界ではよくあることである。そんな選手にとって大きなターニングポイントとなった瞬間にスポットを当てる!

過去連載記事

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TEXT=西尾典文

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