PERSON

2022.09.20

くりぃむ有田哲平は優秀な経営者! イノベーションが起こりやすい組織づくりが上手い

くりぃむしちゅー有田哲平の知られざる魅力に迫る5回連載「天才・有田哲平という男」。2回目は、そのベースになった、幼少期から愛するプロレスのこと。そのココロは⁉

有田哲平

エンタメで必要なことはプロレスから学んだ

現在、YouTubeチャンネル『有田哲平のプロレス噺【オマエ有田だろ!!】』を展開し、過去にもプロレス解説の番組を持っていたほど、プロレスに精通している有田哲平。

「人がどんな時に驚き、どんなシーンに喜び、どんな展開に感動するのか、すべてプロレスから学びましたね。40年前に観た試合で、あのレスラーが一瞬サプライズで出てきて、すぐ退場したけど、あれにはめちゃくちゃ興奮したなとか、今でも強烈に覚えているんですよ。『脱力』(『全力!脱力タイムズ』)でも、あれをやらなきゃダメだなって。アンタッチャブル復活の回(詳細は連載1回を参照)にしても、事前に告知していたら、あの盛り上がり、歓喜はなかったんじゃないかな」

有田いわく、「プロレスの面白さは、まずは、マッチメイクにある」。

「対戦カードが組まれた瞬間、ファンはワクワクドキドキするんですよ。『寝技系の選手と打撃系選手だから、こんな展開になるんじゃないか』とか、『この選手とこの選手を戦わせたら、きっといい試合になるだろう』と、予想すること自体が、まず楽しい。『脱力』でいえば、『このゲストにはこの企画を』という部分ですね。だから、企画に関しては、その芸人さんの力量とか特徴を考えて、この“無茶ぶり”なら、しんどいだろうけどなんとか避けられるだろう、でも、ここまでやったらつぶれちゃうなって、ものすごく考え、スタッフと話し合います。勝手に呼んでおいて、『何か面白いことしろよ』と、その芸人さんに丸投げするのは嫌いなんです」

魅力的なマッチメイクでワクワクドキドキした後、試合を観て興奮し、終わった後は感想を言い合って、また盛り上がる。それをすべてひっくるめて、「プロレスは総合エンタテイメントだと思います」とも。

「そこそこのファンなら、対戦カードを見ただけで、『きっとこっちが勝つよ』って予想できるし、けっこうその通りになったりするんですよ。でも、その予想が裏切られたら、ものすごいサプライズになり、衝撃を受ける。その結果、『何が起こるかわからないんだから、やっぱり最後まで試合を観ないとダメだよな』と、なるんですよ。

テレビの世界も、視聴者の目が肥えてきたこともあって、『きっとこういう展開になる』と予想しやすくなっています。『この後、ものすごいことが起こる!』と煽っても、視聴者は、『いやいや、起こらないよね』という感じで。そうしたことも、テレビ離れにつながっている気がするんですよ。だから、『脱力』は、最後まで観ないとわからない番組にしたい。そうすることで、もともとテレビが大好きだったのに離れてしまった人たちが、もう一度戻ってきてくれるんじゃないかって」

真摯な姿勢と人へのやさしさが、周囲を動かす

『全力!脱力タイムズ』は、解説員たちの“大真面目なコント”も、毎回話題に。解説員たちが、会話の中で無理やり自分の専門知識をねじこんだり、ゲスト芸人に対してボケをかましたり。

「(経済学者の)岸博幸先生は『そんな難しい言葉わかりません』と、(文学者の)齋藤孝先生は『僕、東京大学卒業しているんですけどね』なんて、これまでのキャリアが壊れるんじゃないかと心配するようなセリフを、皆さん、面白がって言ってくださるんですよね。本当にありがたいです」

有識者たちが、キャリアを投げうって(⁉)番組に協力してくれるのは、「有田さんは天才! そして、バケモノ! 人に対する優しさや愛もあるから、『この人のためなら!』という気持ちにさせられます」という岸氏の言葉通り、有田の人望によるところが大きい。

「この番組での有田さんの立ち位置は、会社に例えるなら経営者のようなもの。現場の企画を頭から否定するようなことはせず、自由に伸び伸びとやらせているので、スタッフは安心して、どんどんチャレンジができる。イノベーションが起こりやすい組織をつくっているんですよね。しかも、現場が暴走した時は、ちゃんと入って調整してくれる。経営者としてもすごく優秀で、正しいことをしていると思います。僕は、毎回収録が楽しみでしかたがない。真似しようと思っても真似できない唯一無二の番組になっているのも、有田さんが優秀な経営者である証拠でしょう」(岸氏)

そんな賛辞の言葉に、「番組は、自分ひとりでつくれるものではなく、岸先生はじめ出演者の方々やスタッフの力あってこそです」と、恐縮する有田。

「台本が上がってきた時に、『これ、前もやったよね』とか『これだと視聴者が飽きちゃうよね』と、しょっちゅう言っていたら、だんだん革新的な台本になってきたんですよ。今では過激すぎて、『ちょっとやり過ぎでは?』と、僕が止めに入ることもあるくらい(笑)」

何本ものレギュラーを抱える超多忙な身ながら、「面白いものを作るために」、長時間に及ぶ企画会議に参加する。次回は、その想いと、プロデューサー有田哲平のルーツに迫る。

過去連載記事

Teppei Arita
1971年熊本県生まれ。’91年、高校の同級生・上田晋也とお笑いコンビ「海砂利水魚」を結成。2001年、コンビ名を「くりぃむしちゅー」に改名。現在、『しゃべくり007』『くりぃむクイズ ミラクル9』『今夜はナゾトレ』『世界一受けたい授業』などレギュラーを多数持ち、ピンでも『全力!脱力タイムズ』等に出演。俳優のほか、YouTubeチャンネル『有田哲平のプロレス噺【オマエ有田だろ!!】』も好評。

TEXT=村上早苗

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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