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2022.09.12

三浦瑠麗「親の体面主義になってないか?」受験に潜むリスクを問う

好きなことに時間を費やしたいと、中学受験をしないことに決めた三浦母娘。「勉強を面白く思えないようなやり方は有害」という三浦さんが指摘する教育の問題、そして、未来を切り開くのに必要な学びとは!?連載「イノベーターの子育て論」とは……

国際政治学者 三浦瑠麗さん

情報番組のコメンテーターなど、メディアで幅広く活動する国際政治学者の三浦瑠麗さん。

幼少期は人生哲学を学ぶ時期

兄と姉は私立大学に進んだが、三浦さんと妹、弟は、国立の大学に進学。5人きょうだいだったこともあり、生家は金銭的余裕がなく、下三人にはそれ以外の選択肢はないと感じた。当然、きょうだい全員、中学受験とは無縁だ。

「時代が違いますし、地方と都心の事情が異なるのも理解できますが、それでも、今の中学受験の凄まじさに、ちょっと驚いています。もちろん、目標に向かって努力することは素晴らしいことですし、私自身、学歴によって道が開けた人間なので、学歴を否定する気持ちはありません。ただ、受験のためだけの勉強に終始するのであれば疑問です。膨大な時間を受験勉強に費やして難関校に合格したとしても、入学の時点で、その学びは一度リセットされてしまいますから」

塾を掛け持ちして猛勉強の末合格した生徒も、特別な勉強をせずに合格した生徒も、入学後は、同じスタートラインに立つことになる。そこで、”その学校に入るための勉強“が、アドバンテージになるとは限らない。学問や研究を極めるための学びが長距離走だとしたら、受験を勝ち抜くための学びは短距離走。学びの目的も質も、大きく異なるためだ。

日本で名門校に進学するより、幼少期から海外のボーディングスクールに入れる方が、価値がある。そんな声も聞かれるようになったが、こうしたグローバル教育の低年齢化にも、三浦さんは疑問を呈する。

「家庭によって考え方は様々あるのは承知しています。ただ、私自身は、幼少期から海外の寄宿舎に入れる必要性は感じていません。エリートコミュニティの仲間入りができるといったメリットはあるとは思いますが、幼少期は人生哲学を学ぶ時期。親自身の人生哲学が確立しているのであれば、親が近くにいて、子供に関与した方がよいと思っています。何より、自由な時間がたっぷりとれるのは、幼少期ならではの特権ですからね。私は、その自由な時間を、親子で楽しみたいと思っています」

受験に潜むリスクについて語る三浦瑠麗さん

三浦さんが初めて海外旅行をしたのは大学生の時。すでに、日本社会の在り方に窮屈さを覚えていたがゆえに、海外で味わった自由な空気に感動したという。そんな風に、海外での体験で得られるものは、その時の自分のありようによっても変わってくる。「幼少期からではなく、日本である程度経験を積んでからでも遅くない気がします」。

体面主義の子育ては、親子ともに不幸

子供には豊かな人生を送ってほしい。そのためにも、考え抜かれたカリキュラムと優秀な教師のもとでハイレベルな授業を受け、キラキラした仲間たちと切磋琢磨できる教育環境を与えてやりたい。親がそう考えたとしても、間違ったことではないし、他人が否定すべきことではない。ただし、それが、親が世間体を気にし、自分のプライドのために、子供に強要しているとしたら、どうだろう。親子ともに不幸ではないだろうか。

「エリートである自分の子供はエリートであるべき。だから、名門校に通わせ、卒業後は、誰もが知る有名企業に入社させたい。そんな風に考えている親御さんも、少なからずいると思います。そうした体面主義の教育に、意味はあるでしょうか」

上を目指したいという向上心は尊い。しかし、人生を幸せに生きる能力を身につけることこそが最も重要だと、三浦さんは指摘する。

「必死に頑張って、目指す場所に到達しても、今度はそこに留まり続けるために、さらに走り続けなければならない。なぜ走り続けるかというと、転落の危機を感じるから。そして、転落の先にものすごい不幸が待っていると怯えるからでしょう。それでは、人生がつまらないものになってしまいます。それよりも、お金だけに追いまくられず、好きな風物を楽しんだ方が、人生が豊かになると思います」

そもそも、私たちが他人を評価する際、「〇〇大学出身だから信用できる」「〇〇で役員を務めているから好人物だ」など、所属や出身校で判断することは、あまりない。それよりも、「あの人は気持ちがいい人だ」「誠実で、信用できる」というように、人格を判断基準にすることの方が、ずっと多いはずだ。

「けれど、対象が子供となると、勉強ができるとかスポーツが得意など、能力で判断しがちです。それって、おかしなことだと思いませんか?」

最後に、三浦さんが考える、次世代を生きる子供たちにとって必要な力とは?

「ひとつは、人の気持ちを推し量れる力ですね。人の役に立つには、相手がどんなことを望み、どうすれば助かるか、喜んでくれるのか、察することが必要です。それができれば、社会のなかでうまくやっていけると思います。

もうひとつは、やり抜く力。この力がなければ、何事かを成すことはできません。好きなものがあれば、自然とやり抜こうとするようになるでしょうけれど、日々の暮らしをきちんと回すことでも、この力は養えます。たとえば、朝6時半に起きて、スイミングに行き、朝食をとり、洗濯や掃除をしてから仕事に行く。何でも構わないので、毎日の習慣を決め、それを確実にこなしていくことで、やり抜く能力は磨かれると思います」

教育とは、子供を偏差値が高い学校やエリートが集う名門校に入れるためのものではなく、豊かに生きる力を育むためのもの。三浦さんの子育て論は、本来の教育の在り方を再認識するきっかけになりそうだ。

■三浦瑠麗を育てた「お金より手」をかける家庭環境。庭でニワトリ、カセットで音読etc.(Vol.1)
■【三浦瑠麗】小学生に家事スキルを身に付けさせた狙いとは(Vol.2)

Lully Miura
1980年神奈川県生まれ。東京大学農学部を卒業後、同公共政策大学院及び同大学院法学政治学研究科総合法政専攻博士課程を修了。博士(法学)。東京大学政策ビジョン研究センター講師を経て、山猫総合研究所代表取締役。博士論文を元にした『シビリアンの戦争――デモクラシーが攻撃的になるとき』(岩波書店)でデビュー。『孤独の意味も、女であることの味わいも』『21世紀の戦争と平和――徴兵制はなぜ再び必要とされているのか』などの著書があり、「朝まで生テレビ!」「めざまし8」「ワイドナショー」「クローズアップ現代+」といったテレビ番組などメディアでも活躍。

過去連載記事

連載「イノベーターの子育て論」とは……
ニューノーマル時代をむかえ、価値観の大転換が起きている今。時代の流れをよみ、革新的なビジネスを生み出してきたイノベーターたちは、次世代の才能を育てることについてどう考えているのか!? 日本のビジネス界やエンタメ界を牽引する者たちの”子育て論”に迫る。

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TEXT=村上早苗

PHOTOGRAPH=古谷利幸

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