結成25周年を迎えた3ピースロックバンド「ACIDMAN」。「宇宙」「生命」をテーマにした壮大な世界観と、ドラマチックなサウンドがデビュー時から変わらぬ支持を集めている。そんなACIDMANで、ギターとボーカルを担当する大木伸夫さん。競争が激しい音楽の世界で成功をつかむための個性の打ち出し方や、今秋に主催するロックフェスティバル“SAI”について語ってもらった。
個性がない人なんていない
ACIDMANの結成は1997年のこと。高校時代の軽音楽部仲間とバンドを組み、大学進学を機に本格的に活動を始めました。ですから、ちょうど25周年。2021年10月29日にはアニバーサリーイヤー突入を記念し、Zepp Tokyoにてアニバーサリーライブ「This is ACIDMAN」を開催。現在は12枚目のアルバム『INNOCENCE』のリリースツアーで全国を巡っています。
最近は「もうベテランですね」と言われることが増えました。でも、自分にはそんな気持ちはまったくないんです。デビュー当時から、自分がやりたいことをまっしぐらに貫いているだけ。僕自身も、ACIDMANも、何も変わらずに、目の前のライブに全力投球しているんです。気分はベテランなんかじゃなく、今も“裸一貫”のロッカー。おそらく60歳になっても、70歳になっても、同じことをやっていると思います。
ただ、若いアーティストからは「どうやって個性を打ち出しているんですか」など、アドバイスを求められる機会が多くなりました。音楽シーンで生き残っていくためには、個性や独自性が重要ですから。でも、「個性とは何か」って難しく考えることはないんですよ。だって、個性って誰もが持っているものでしょう。今、世界には約78億人分の個性がある。そう考えれば、「自分には個性がない」なんて思い悩む必要はまったくありません。
僕は、その個性を外に出す勇気を大事にしています。勇気を持って、自分の殻を打ち破り、心の内をさらけ出すことで、個性の表現に繋がっていくと思います。
結成時のACIDMANは4人組で、当時のボーカリストが詞を書いていて、恋愛をテーマにした曲が多かったですね。その後、僕がギターとボーカルを兼任することになった。僕には恋愛ソングは、得意じゃない。じゃあ、自分の好きなことをテーマにしようと決意したんです。
そのテーマというのが「宇宙」と「生命」。どちらも僕の大好きな世界です。というか、僕には得意分野がそれしかない。だから、このテーマをとことん追求していくしかなかったんです。2人のメンバー(佐藤雅俊と浦山一悟 )もそれに納得してついてきてくれている。僕のような自己中なヤツと付き合ってくれて、感謝しかないですね(笑)。
ロックフェス“SAI”の第二弾を開催
自分のやりたいことをやりたいようにやるため、2013年に独立し、事務所「FREE STAR」を開設しました。2017年には、さいたまスーパーアリーナにて「SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI”」を主催。同世代、先輩、後輩、錚々たるバンドが集まってくれて、チケットは即日完売。会場は、ものすごい熱気でしたよ。その熱狂の渦の中にいるうちに、「これを超えるものを、もう1回やりたい」という思いが湧き上がってきました。
そして、ついに第二弾「“SAI” 2022」の開催が決定しました。会場は前回と同じくさいたまスーパーアリーナ。会期は11月26日、27日の2日間です。前回は1dayでしたが、今回は2daysです。
今、日本には個性的でおもしろいバンドがたくさんいる。国内の音楽シーンは最高にアツいですよ。その盛り上がりを、お客さんに伝えられれば幸せですね。
しかも、アーティストはコロナ禍で満足にライブ活動ができなかった鬱憤がたまっている。僕自身も一時期は、音楽活動よりもオンラインミーティングに費やす時間が多かった。「今後、どうしようか」と、リモート打ち合わせの日々が続いたんです。
音楽をやりたいのにできない期間に蓄積した思いを、すべて「“SAI” 2022」にぶつけます。期待していてください。