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2022.04.14

【高木菜那】劣等感に長く苦しんできた波乱万丈の競技人生。第二の人生へ──連載「コロナ禍のアスリート」Vol.49

まだまだ先行きが見えない日々のなかでアスリートはどんな思考を抱き、行動しているのだろうか。本連載「コロナ禍のアスリート」では、スポーツ界に暮らす人物の挑戦や舞台裏の姿を追う。

写真:アフロスポーツ

3大会連続で五輪に出場を果たして得た想い

金メダル2つ、銀メダル1つが飾られた壇上には晴れやかな表情の高木菜那(29)がいた。2022年4月5日に都内で行われた引退会見。記録にも記憶にも残るレースを積み重ねてきたスケーターは一線を退く2つの理由を明かした。

「最後の最後に高木美帆の姉ではなく、高木菜那として氷の上に立てた。それが引退を決意した理由の一つです。もう一つは第2の人生を考えた時にすごくワクワクしたこと。スケートと同じぐらいやりがいのあることを見つけたいと心から思えた」

スピードスケート女子で2014年ソチ五輪から3大会連続で五輪に出場。’18年平昌五輪では団体追い抜きとマススタートを制して、日本女子として五輪史上初の2冠を達成した。集大成と位置付けた今年2月の北京五輪では連覇を狙った2種目でともに最終コーナーで転倒。団体追い抜きは銀、マススタートは1回戦敗退に終わった。

波瀾万丈の競技人生は妹・美帆(27=日体大職)の存在なくして語ることはできない。スーパー中学生として注目を浴び、15歳で’10年バンクーバー五輪に出場した妹と比較され続けた現役生活だった。五輪通算7個のメダルを獲得している妹に対する劣等感に長く苦しんできたが、集大成と位置付けた北京五輪シーズンは「(妹の存在を)1番気にしているのは自分」と受け入れて、乗り越えた。

「妹がいたからこそ、ここまで世界で戦えた。乗り越えないといけない壁はたくさんあったし、辛かったけど、それがなければ高木菜那はいない。妹が妹で良かったと心から思う」

引退会見の日は偶然にも美帆のシーズン総括会見と重なった。都内の別会場で1時間半後に会見した妹は「ライバル関係がなくなるのは複雑。寂しい気持ちもあり、もう競わなくていいのだなと思う部分もある」と心境を吐露。「姉が姉でよかったと思う」と実感を込めた。姉の引退会見で花束を贈呈する案も出たが「(会見は)姉の舞台」と辞退。代わりに会見後に控室で待ち受けるサプライズを敢行し、引退記念に高級炊飯器などをプレゼントした。

感謝を伝え、報道陣にクッキーをプレゼント

姉妹は同じ中距離を本命種目とするライバルだったが、団体追い抜きではチームメートとして’18年平昌五輪で金メダル。’20年2月に樹立した世界記録は今も破られていない。2人の五輪メダル数の合計は10個に上る。個人種目での金メダルは、ともに1個ずつ。’18年平昌五輪マススタートで菜那が先に頂点に立っており「あれは私が頑張ってきたことへの神様のプレゼントだと思う」と振り返った。

菜那の身長は1m55で、北京五輪に出場したスピードスケート日本女子で最も小柄。体格差を埋めるため、いかに効率良い滑りをするかが競技人生のテーマだった。

「小さくても大きい選手と戦わないといけない。体を言い訳にしたくない。どうやったら世界の選手と戦えるのかを毎日考えながら試行錯誤した。他の人よりもつま先から頭の先まで全身をつかって滑らないといけないとずっと思ってきた」

最後のレースは3月12日、オランダで開催されたW杯最終戦の女子1500m。5位で表彰台に立てなかったが、上々のタイムで滑った。「レース後にヨハン(・デビッド=’15年からナショナルチームコーチを務め、昨年度末に退任)が〝こんなに小さくて軽いのに1500mをこんなに速く滑れる選手はいない〟と1人で自慢げに言っていた」。長く指導を受けてきたコーチからの言葉が何よりも嬉しかった。

今後については「いろいろな角度からもっとスポーツを学んで、伝えていきたい。機会があればメディアや講演などを通して、自分の経験を自分なりの言葉で多くの人に伝えていきたい」と青写真を描く。会見後には報道陣にクッキーをプレゼント。「北海道・浦幌町にある私のおじいちゃんの牧場でとれた牛乳が使用されているクッキーです」と紹介し、来場者一人ひとりに手渡しした。感謝を伝えるとともに、クッキーのアピールも忘れない菜那らしい演出。偉大な妹に負けない存在感を放ってきたキャラクターは第2の人生でも必ず生きる。

TEXT=木本新也

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