サッカー選手兼監督兼投資家兼起業家・本田圭佑は、言葉を使うことで、自らをインスパイアし、世界にサプライズを起こす。その脳にはどんな 言葉=「思考」が隠されているか紐解いた連載を一挙に振り返る。【2019年の掲載記事を再編】
「お金は未来のビジョンのためにある」
僕は財布を持っていない。いつもクレジットカード1枚だけを持って生活している。メキシコでもオーストラリアでも現金を使った記憶がないから、少なくともこの2、3年は札もコインも持ったことがないと思う。
かといって、カードをバンバン使っているかというと、そういうことでもない。カードを使うのは、カフェでエスプレッソを飲む時くらい。オーストラリアでの移動はほぼウーバーなのでカード払いだが、カードそのものを出すことはない。
意外に思われるかもしれないが、僕は物欲のない人間だ。きちんと栄養管理された食事だったり、人前に出る時の衣装だったりと、プロとして必要なところにはお金をかける。でもそれがなければ、正直何でもいい。毎日コンビニ弁当でいいし、着るものは毎シーズン買い換えたいとも思わない。ハイヤーやリムジンで移動したこともある。快適ではあったが、必要だとは思わなかった。安全さえ確保できていればウーバーで問題ない。豪華な食事をして、ブランド品に身を包んで、リムジンやチャーター機で移動することが幸せだとは、全然思わない。
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「やりたくないことを続けた先にしか結果はついてこない」
僕は努力する人を尊敬する。
その大切さとつらさを自分がよくわかっているからだ。まったく練習しないプロアスリートは、世界中どんな競技を捜してもいないだろう。誰もが大なり小なり身体のどこかに痛みを抱えてもいるはずだ。だからこそトレーニングをしなければならない。トッププロであればあるほど、地味でつらいトレーニングを続けているのは間違いない。
僕はいつも人間はやりたいことをやるべきだと言っている。だがやりたいことをやるためには、やりたくないこともやらなければならないのも事実だ。
フィジカルトレーニングが好きなアスリートなんて存在しないはずだ。僕だってできればシュートや試合形式の練習だけをしていたい。でも日々つらいトレーニングを続けている。それはプロであるための最低条件なのだ。面白みはまるでない、ただつらいだけのトレーニングができなくなったとしたら、それがプロアスリートをやめるタイミングなのかもしれない。
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「監督とは24時間考え続ける仕事」
僕は今、”就職活動”の真っ只中だ(2019年9月5日現在)。33歳のプレイヤーの移籍が簡単ではないことはわかっている。それでも僕は、悲観していない。少しでも自分が輝ける場所、新しい経験を与えてくれる場所を探し続けているし、そのプロセスだけでもワクワクする。
サッカーというのは、本当にすごいスポーツだ。言葉が通じなくとも、観ている人を感動させ、元気を与えることができる。だから、長くプレイし続けたいと思うし、監督という仕事を通してこのサッカーの魅力を多くの人に伝えたいと思っている。
カンボジア代表の監督をやることを決めたのは、去年の今ごろ、W杯が終わってメキシコのチームとの契約も終わり、今のように”就職活動”をしていた時期だった。カンボジアでもサッカーは盛んで、頑張ってサッカー選手になりたいという子供はたくさんいる。でも彼らが生まれ育った場所には、そのチャンスを得られる場所がないということを知った。
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