リラックスして音楽と向き合える場所
三代目J SOUL BROTHERSのボーカリストとしてデビューして2年後の2012年、自宅での制作環境を整えるべく今市隆二さんは、パソコンや音楽制作ソフトとともにDUORESTの「DR-7501SP」を購入。その日から9年、グループはミリオンセラーを生みだし、この夏、ソロとしても通算3枚目のオリジナルアルバムをリリースする。今市さんを取り囲む環境は変化し続け、自宅の録音機器も次々とアップデートされていくなかで、この椅子だけは変わることなく、常に今市さんの側で制作を見守り続けてきたという。
「愛着があるんでしょうね。セッションしている間は、10時間以上、この椅子に座って作業をする日もありますが、座ると仕事モードになるというよりは、リラックスできる椅子です。僕は仕事だと思って音楽をつくるのでなく、リラックスしてつくりたいと思っているので、まさに適した椅子だと思います」
コロナの影響で、ライヴが延期となり、必然的に自宅の作業部屋で過ごす時間が長くなった。その際に、この椅子に座って制作された楽曲が、7月にリリースされたソロアルバム『CHAOS CITY』に収録されている。
「最初の緊急事態宣言の時につくった楽曲がメインです。その時に感じたものを、その時のうちにリアルに表現しておきたかった。普段はこの椅子で歌詞を書くことはあまりないんですけど、今回の収録曲にはあります。そう考えるとこの椅子はまさしく『CHAOS CITY』が生まれた場所。使いこんで、首の部分が壊れてきていますけどね」
アーティスト・空山 基はじめの描く「セクシーロボット」がアイコンになっている、近未来仮想都市「CHAOS CITY」の世界を描く本作。今後「CHAOS CITY」は、このアルバムだけではなく、新たな楽曲やプロジェクトの舞台になるのだという。
「現代の状況は、パンデミックだけでなく、カオスだと思うんです。この先の未来のことも含めて、メッセージとして伝えたい。そのためには『CHAOS CITY』というひとつの舞台をつくったほうがワクワク感もあるし、エンタメとしても届けやすいなと考えました。『CHAOS CITY』には、近未来の雰囲気のエリアや荒廃したエリアがあったり、それぞれの場所で起きていることを切り取った楽曲を展開しています。ライヴも、『CHAOS CITY』を意識して、工夫して仕かけていく予定です」
今年3月、約1年ぶりに観客を入れて開催されたEXILETRIBEのライヴ。歓声を出してはいけない、という感染対策のなかで行われたが、そこに大きな驚きがあったという。
「ライヴだから、実際はお客さんも少しは声が出てしまうんだろうなって思っていました。でもいっさい歓声が出てこなかった。ここまでルールを守ってくれるのかと、その光景に感動しました。声を出せなくても、表情でお客さんが楽しんでくれていることが伝わってくるんです」
現代の苦しい状況だからこそ、見つけられるもの、届けられるものもある。今市さんは、その想いを、これからもこの椅子に座って作品にしていくのだ。
RYUJI IMAICHI
1986年神奈川県生まれ。2010年三代目 J SOUL BROTHERS ボーカルとしてデビュー。2018年1 月よりソロプロジェクトを始動し、自身初となるソロアリーナツアー「RYUJI IMAICHI LIVE TOUR 2018〝LIGHT>DARKNESS〞」を全国11都市22公演開催。24万人を動員した。