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2021.06.27

【松浦勝人】「僕は弱いところ、悪いところを見せてしまうけど、そっちのほうが人間らしくて面白いよね」

松浦勝人

最後に話したいこと。【後編】/【前編はこちら

Q1. 経営者として自己採点すると何点?

50点。これでも高く点数をつけているほう。僕はまったく経営者には向いていない。経営者は聖人君子でなければならないと言われるけど、僕には無理。孫正義さんのように型破りな経営者もいるけど、孫さんはいいほうに型破りなのであって、僕は悪いほうに型破りだから。自分の弱いところ、悪いところばかりを人に見せてしまう。なんで? ってよく聞かれるけど、そっちのほうが人間らしくて面白いと思う。そもそも、そんなにたいした人格者じゃないしね。

Q2. 創業者として、後継者の育成には努力した?

僕はエイベックスに限らず、創業者を超える後継者はなかなか出てこないと思っている。今のエイベックスには、みな〝就職〞という形で入ってくるんだから、僕と同じ考え方の人間がいるわけがない。いても、すぐに辞めて自分で起業するはず。 

創業者がつくった会社はとんがっていたり、いびつだったり、世の中に受け入れられなかったりする。それが2代目、3代目となると、どんどんまともになり、面白みのない会社になっていく。そして、気づけば新しいとんがった会社にやられてしまう。黒岩(克巳社長CEO)のことは5年くらい前から次の社長にと思ってきたけど、後継者として僕みたいになってほしい、なんてことはまったく思わない。僕は、自分がいなくても会社が回る仕組みはつくってきた。その仕組みを中心となって回してほしいけど、それ以上に、黒岩が自分の考えで新しいことを始めて、中興の祖みたいになってくれたら嬉しい。それで、エイベックスがまったく違う会社になったとしても、僕は何も言わない。黒岩のエイベックスをつくってくれればそれでいい。

Q3. ご自身のなかでのベストアルバムは?

浜崎あゆみのファーストアルバム『A Song for xx』になると思う。Every Little Thing(ELT)も死ぬ気で取り組んだけど、五十嵐 充という才能がいた。自分の全力を出し切ったのは、やはり浜崎あゆみ。ずっと浜崎を超えるものに挑戦してきたけど、正直、それ以上に時代を風靡(ふうび)するスターはつくれていない。

改めて考えると、僕らの仕事とは、その人自身が実際に持っている魅力をそれ以上に見えるように"演出"して、偶像をつくることだったのかもしれない。でも、時代が変わった今、いくら僕たちが「これが売れています」と言ったところで、中身がなければすぐに見透かされてしまう。

浜崎は、僕たちがつくり上げた偶像を、さらに上回る才能を秘めていて、それを開花させた。そういう逸材がもはやいないのか、それとも僕たちが見つけようとしていないのかはわからない。でも、諦めてはいない。世の中に熱狂を起こすことを諦めてしまったら、仕事がなにも楽しくなくなる。

Q4. 熱狂の中心にいることは快感? それとも恐怖?

めちゃめちゃ気持ちいい。自分の関係ないところでいろいろなことが起きる恐怖や、このポジションをいつまで続けられるのかという不安はあったけど、それほど大きくは感じていなかった。世の中が、自分が思ったとおりに動いていく気持ちよさ、スターになり、自己主張が強くなったアーティストが、僕の言うことだけは聞くという気持ちよさ。僕は根がS体質なので、自分のなかの征服感のようなものが満足させられる。

Q5. 自分で下した決断で、最もクレージーだと思うものは?

小室哲哉さんとの決裂。当時のエイベックスの売上は、半分が小室さん関連だった。小室さんサイドの力が強くなりすぎて、エイベックスの音楽がつくれなくなっていた。我慢に我慢を重ねて、最終的に決裂した。

当時は上場も控えていて、ELTは売れ始めていたけど、あの時、もし浜崎あゆみが売れなかったら上場はできなかっただろう。しかも、僕たちの株式が希釈しないように、みな個人的に借金をして株主割当増資をしていた。上場に失敗したら借金だけが残る。それどころかエイベックスは倒産、借金を背負って路頭に迷うこともありえた。

負けたら何もかもなくなる。小室さんとの決裂は、そんなケンカだった。常識的な経営判断だったら、なんとか関係を修復する選択をする。小室さんサイドは、そういう事情をわかっているので、どんな理不尽な条件を突きつけても僕らが飲むと踏んでいた。それを「そんなの関係ない」と言ってひっくり返したんだから、しびれたね。

あの頃の僕は殺気立っていたと思う。近寄る者はみなカミソリで切り刻んでいくような感じだった。今だったら、パワハラで訴えられている。オフィスのトイレに入って座ったら、3時間、ずっと立てなくなったこともあった。気絶していたのかもしれない。自分のなかにあるコップから水が溢れて、もう、どうしていいのかわからないという状態だった。その後、この決裂よりきついこともたくさんあったけど、コップのほうが大きくなっていたので、溢れ出るようなことは一度もなかった。

あの頃に戻りたいとは思わないけど、今思うと楽しかった。若かったというのもある。先のことなど何も心配していなかった。不思議なもので、年をとってからのほうが先のことを心配するようになるんだよね。僕もずいぶん丸くなったものだと思う。そんな僕が、ゲーテという雑誌で毎月連載をしていることに違和感を感じるようになっていた。それがいったん連載をお休みする理由。でも、引退をするわけではないし、新たなビジネスに向けて動き始めてもいる。また、誌上でお会いできることもあると思う。本当に長い間、この連載を楽しみにしていただき、ありがとうございました。

最後に話したいこと。【前編はこちら

TEXT=牧野武文

PHOTOGRAPH=有高唯之

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