週末を利用して“リセット旅”をするエグゼクティブが増えている。旅の条件として欠かせないのが、「気軽にアクセスできる」「心から寛げる上質な空間」「美食もリラクゼーションも館内で完結する」ということ。これらを満たすのが、2023年7月、名古屋に誕生した「TIAD, オートグラフ コレクション」だ。その魅力を、元ホテリエのライターMが体験してきた。
バレーパーキングにバトラーサービス…“名古屋初”にそそられる
オープン時、「ついに名古屋にラグジュアリー・ブティックホテルが誕生した!」と、ホテル・ラバーの間で話題となった「TIAD, オートグラフ コレクション」。去る7月4日に発表された国内初となるミシュランガイドのホテルセレクションで、開業1年にして1ミシュランキーを獲得。ミシュランが、「優れたエクスペリエンスを提供する宿泊施設」とお墨付きを出してはいるものの、実際のところどうなのだろう⁉
そんな疑問を抱きつつ、7月のとある日、ホテルを訪問。ホテルが位置するのは、栄という名古屋きっての都心ながら、久屋大通公園が正面という希少価値の高いロケーション。オフィスや商業施設とのシェアではなく、1棟まるごとホテルというのも、近年では珍しい。
アクセスは、最寄りの地下鉄矢場町駅から徒歩1分ときわめて良好、車の場合、名古屋エリアのホテル初となるバレーパーキングが利用できるというから、ラグジュアリーへの期待が高まる。
その期待は、レセプションがある5階に降り立ったところで、さらにアップ。エレベーターの扉が開くと、目の前には、床から天井まで採られたガラス窓から光が注ぐ明るい空間が広がり、なんとも開放的。ロビーはややこぢんまりとしているものの、そこは全150室のブティックホテル。大型ホテルで遭遇しがちな“団体客でごった返す”という状況に遭遇することは、ほぼない。これも、リセット旅には必要不可欠な条件だ。
上質なアメニティにみる“ラグジュアリーの証”
チェックインを済ませた後は宿泊者専用エレベーターに乗り換え、予約した「ユーフォリア プレミアキング パークビュー バルコニー付」へ。床面積は61㎡、ベッドスペースの先に一段下がってリビングスペースがあり、ビューバスの向こうには、眼下に久屋大通公園の緑を望めるバルコニーまで! ちなみにスイートルームなら、専属バトラーに、シューシャインやプレスサービス、バゲージパッキングなども依頼可能。こうしたバトラーサービスも、名古屋エリア初だとか。
ミニバーエリアで目を引いたのが、ラグジュアリーホテルの定番、ネスプレッソのコーヒーマシンに加え、日本茶用に南部鉄器の急須が用意されていること。マリオットグループの「オートグラフ コレクション」は、世界でオンリーワンの特色を持つホテルのみが冠することを許されたブランド。館内のインテリアをはじめ、こうしたアメニティにも日本や名古屋が感じられるものを選んでいるのは、そうした理由からのようだ。
日ごろ自宅で使うことはないけれど、ライターMがホテルで必ずチェックするのがバスローブの有無。お風呂上りにバスローブをまとって、冷えた“泡モノ”で喉を潤す。そんな非日常を体験できてこそ、リセット旅が完成するというもの。もちろん、「TIAD, オートグラフ コレクション」は全室バスローブを用意。世界のラグジュアリーホテルで採用されている、ガルニエ・ティエボー製なので、厚さや肌触りは申し分なし!
ひとひねりある美味と美酒に酔いしれる
客室でまったりと過ごした後、レセプションフロアの片隅に密やかに佇む日本料理店「SHUHARI」でディナー。引き戸を開けると、昆布だしの香りが鼻腔をくすぐり、食欲のスイッチが全開に。
ここで供されるのは旬の素材を使った月替わりのコースのみ。7月は開業1周年ということで、伊勢海老のお造りなどおめでたい料理を組み入れたスペシャルなメニューで構成されていた。金目鯛の炙りに鱧のお椀、かますに鮎と、夏を感じる逸品が絶妙なタイミングでサーブされ、そのたびに、「うわぁ!」「なるほど!」と唸らされる。金目鯛には大徳寺納豆を使ったソース、鮎には蓼酢の代わりにスイカ酢と、どれもひとひねり効いていて、記憶に残る料理だった。
おいしい料理を口にすれば、アルコールも自ずと進んでしまうというもの。シャンパーニュに始まって、日本酒、焼酎、そして、最近話題のオレンジワインまで、気づけば5、6杯ものグラスが空いており……。こんなにまで堪能してしまったのは、にこやかな料理長やかわいらしい女性料理人との楽しいおしゃべりも一因だったような⁉
テラスで風と光を感じながらブレックファースト
キングサイズベッドとパリッと糊のきいたシーツのおかげでぐっすりと眠ったからか、翌朝の目覚めはスッキリ。昨夜あんなに食べたというのに、ほどよくお腹が空いている。ということで、早速朝食をとりに、オールデーダイニング、「Table For Tomorrow」へ。屋内も天井が高くて気持ちの良い空間だが、この日は天気に恵まれたのでテラス席をセレクト。5階に位置しているため公園の木々が近くに感じられ、その先には名古屋のシンボル、MIRAI TOWERが。名古屋の中心地とは思えないほど空が広く感じられ、心身をリセットするのに最適だ。
ホテルの実力は朝食にこそ表れると考えるライターM、まずはビュッフェ台を下見がてら一回り。ジュースにミルクといったドリンクバーに、サラダ、フルーツ、コールド&ホットミール、ミューズリー類というラインナップ。だし巻き卵といった和食や点心もあるものの、圧倒的に洋食が多い。特筆すべきはベーカリーのバリエーションの豊富さ。ハード系からデニッシュ系まで15種類以上並び、ミニサイズのパンケーキも。ホットミールは、松坂ポークのベーコンや田原豚のソーセージなど銘柄肉が並んでいるあたりは、ラグジュアリーホテルとしての矜持⁉
こうしたセミビュッフェに加え、メインディッシュが選べるのには心くすぐられた。ホテルはサービスを楽しむ場所でもあるのだから、「ご自由にお取りください」だけでは、味気ないもの。
ちなみに「Table for Tomorrow」は、ランチ&ディナーはグリル料理が売り。コースだけでなく、アラカルトも用意されているので、ひとりでサクッと食べたい時も、グループでおしゃべりを楽しみながら食事をという時にも使えそうだ。
スタイリッシュなウェルネスエリアで癒される
朝食をとったら、急いで荷造りをしてチェックアウト……なんて野暮な設定はしないのが、ラグジュアリーホテルというもの。「TIAD, オートグラフ コレクション」のチェックアウトタイムは12時なので、それまで6階にあるウェルネスエリアで汗を流すことに。プール、ジム、温浴施設がそろっており、利用できるのは16歳以上の宿泊者のみ。スイムウェアもトレーニングウェアも無料で貸してもらえるのもうれしいところ。
エリア内は自然素材を多用し、寛ぎ感満載。インドアプールにはデッキチェアやソファが置かれ、二面に開かれた窓から差し込む光が水面をキラキラと輝かせる。うーん、なんとも言えずピースフルな雰囲気、これは癒される!
プールで泳いだらデッキチェアに寝そべり、隣接するサウナで汗をかいた後はテラスのソファでひと涼み。プールエリアをたっぷり1時間堪能した後は、マシンが並ぶジムで軽く運動し、仕上げは温浴施設でお風呂→ミストサウナ→お風呂のループ。このエリアにはインルームスパも併設されているけれど、それはまた次回のお楽しみとしよう。
緑に抱かれるラウンジで優雅にヌン活
チェックアウトを済ませたら、リセット旅の仕上げとして3階にある「ザ・ラウンジ」へ。足を踏み入れたとたん目に飛び込んでくるのは、久屋大通公園の木々。木目を多用したインテリア効果もあいまって、「ここは軽井沢、それとも蓼科⁉」という気分に。
ここでのお目当ては、季節ごとにメニューが変わる「アフタヌーンティー」(平日12:00~14:00、15:00~17:00の二部制。土日祝は5階で提供、時間は問い合わせ)。パティシエ特製のスイーツ&セイボリー、スコーンと共に、フランスのプレミアム・ティー・メゾン、KUSMI TEAをはじめ20種類以上もお茶やコーヒーがお代わり自由とあって、“ヌン活”に勤しむ女性たちが連日押し寄せ、予約必須のメニューなのだ。
ラッキーなことに、7・8月は開業1周年の記念としてハリー・ウィンストンとのコラボ・メニューを展開しているとのこと。運ばれてきた3段プレートには、憧れのジュエラーのロゴが入ったマカロンにチョコレート、美しきセイボリーにスイーツが並び、思わずため息がもれる。あちらこちらのテーブルでスマホカメラのシャッター音が鳴り響くのも納得の“映えっぷり”に、ホテルメイドならではのおいしさ。こんな優雅な時間を男性からプレゼントされたら、喜ばない女性はいないのでは。
15時にチェックインをし、12時のチェックアウトまで、外に一歩も出ることなくホテル内で過ごした2日間。上質な空間で、美味に舌鼓を打ち、ほどよく体を動かす。心身ともにじゅうぶんエナジーチャージできた、至福のリセット旅だった。
TIAD, オートグラフ コレクション
住所:愛知県名古屋市中区栄5-15-19