平常時は年に5ヵ月をハワイで過ごす本田直之さんが現地から情報をお届けする連載「#本田直之のハワイ新常識」。第18回は西麻布のレストラン「マルゴット・エ・バッチャーレ」の加山賢太シェフにハワイに出店した「マルゴット ハワイ」について本田さんが話を聞いた。【過去の連載記事】
加山賢太シェフ×本田直之 対談
僕はシェフとの付き合いも多い。彼らから料理や食材、酒の話を聞くのも楽しいし、彼らが努力している姿を見ていると本当に応援したくなる。西麻布のトリュフレストラン「マルゴット・エ・バッチャーレ」のシェフ加山賢太氏もそのひとり。彼が「マルゴット ハワイ」出店のため、ハワイに長期滞在中だったので、いい機会だと思っていろいろ話を聞いてみた。
フレンチと和の三つ星で腕を磨いたからこその一品
本田 「マルゴット ハワイ」ではローカルの食材もかなり使っているね。
加山 そうですね。野菜はとくにローカルのものが多いです。
本田 ハワイの料理っていい意味でクリエイティブだけど、やはり日本人シェフが作る料理と比べると繊細さが足りない。先日マルゴットで食べた甘エビとキャビアの一皿はうまかったな。
加山 モロカイの甘エビなんですが、日本の甘エビより大味なんです。だから羅臼昆布で20分だけ〆て、キャビアとフィンガーライムを合わせたんです。
本田 そういう繊細な下ごしらえのノウハウがハワイのシェフたちにも伝わったら、ハワイの食の水準がさらに上がると思うな。賢太は「カンテサンス」でフランス料理を学び、「元麻布かんだ」で日本料理を学んだという、フレンチと和の三つ星で働いたという経歴があるからこそ、こういう一品が作れるんだろうね。
加山 ありがとうございます。
本田 鰻にも驚いた。正直、ハワイであんなうまい鰻を食べたことがない。仕入れた鰻もいいのだろうけど、焼きが上手にできる料理人がいないんだろうね。
加山 あれは厨房の炭台で焼いたものを、パフォーマンスとしてテーブルの上に飛騨コンロを置き、炭で最後のひと焼きをしてからお皿にお出ししているんです。
本田 あのレベルの鰻がハワイで食べられるのは本当にうれしいよ。そば粉のクレープで、鰻と黒トリュフを巻いて食べるのもマルゴットならでは。
加山 トリュフはいかがでしたか?
本田 トリュフはやっぱり卵との相性がいいと思う。手に入りにくいワイマナロTKGの卵とタスマニアのウィンタートリュフを合わせるなんて、さすがマルゴットだよ。シグネチャーメニューの目玉焼きトーストもうまかったし、卵かけごはんがトリュフ風味で食べられるのも最高だった。あとカッチョエペペ。チーズと胡椒にトリュフっていうのも、素材がそれぞれ際立ち、唸るほどのうまさだった。正直、ハワイで今まで食べていたトリュフはどれもイマイチ。トリュフの扱いがエキスパートであり、仕入れがしっかりしているからこそ出せる味だと思った。
加山 マルゴットには、世界中から最高のもの仕入れるルートができていますからね。季節ごとにベストなトリュフをチョイスしています。
本田 金目鯛のひと皿も、皮がパリッとしていて抜群に美味しかった。
加山 あれは金目鯛の骨から出汁を引いたんですが、出汁に一番苦労しました。日本とは水が違うので、どうしても味が違う。試行錯誤して水にひと晩備長炭を沈めて、少し柔らかくして使うようにしたんです。それと調理法は「カンテサンス」で学んだんですが、金目鯛に塩を振ったあと、皮目に強力粉をつけて冷蔵庫に裸のままいれ、5〜6時間皮を乾かしてから焼いたんです。
本田 なるほど、その手間であのパリッと感を味わえるんだね。
加山 和食の技法、フレンチの技法、いろいろ織り交ぜながら考えています。
本田 賢太のような料理人はハワイの料理学校やカリナリースクールで講義する機会を作るべきだと思う。ハワイにも素晴らしいシェフたちはいるんだけど、やはりメインランドの三つ星、フレンチランドリーやパ・セ系のシェフが多い。彼らの料理はもっとガツンとくる料理。日本人ならではの繊細な料理をこれからの有望な料理人たちが学べたら、ハワイの食文化がさらにアップすると思うんだよね。ぜひこちらのシェフたちと交流すべきだよ。
加山 機会があれば、ぜひやってみたいです。
本田 マルゴットは酒のラインアップもよかったね。今、わりとシャンパンが品薄と聞いているけど、ここは揃っていた。オーナーのコレクションもあると思うけど、仕入れが何よりしっかりしている。
加山 KRUGのアンバサダーレストランでもあるので、お酒はそれなりに揃っています。
本田 先日僕がいただいたのは、シグネチャーデュスタシオン(100ドル)。他にもう少し品数が少ないプリフィックス(80ドル)やシェフズテイスティングメニュー(150ドル)もある。
加山 それに追加料金でトリュフを選んでいただいたり、キャビアをプラスするとか、肉をアップグレードするとか、フレキシブルに対応しています。
本田 賢太はいつまでハワイに滞在するの?
加山 9月いっぱいはいます。
本田 次はぜひハワイのシェフたちとの交流や料理学校での講義も視野に入れて滞在してほしい。そうしてハワイの食文化をもっと盛り上げてほしい。
加山 はい、こちらこそお願いします。
Margotto Hawaii
住所:514 Piikoi St, Honolulu
TEL:808-592-8500
営業時間:17:00~22:30
定休日:水曜