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2020.11.28

【中田英寿/に・ほ・ん・も・の外伝】誰もいない「上一宮大粟神社」の境内で八百万の神に思いを馳せる<徳島⑨>

2009年から’15年の約6年半、のべ500日以上をかけて、47都道府県、2000近くの場所を訪れた中田英寿。世界に誇る日本の伝統・文化・農業・ものづくりに触れ、さまざまなものを学んだ中田が、再び旅に出た。

中田英寿/に・ほ・ん・も・の外伝

旅人を癒やす隠れた名所を発見!

地元で人気の神山町のクラフトビールのブリュワー『KAMIYAMA BEER』を訪ねたあとだった。突然、前を行く中田英寿が乗るクルマが方向を転換。近所にあった神社の駐車場へと向かった。調べてみると、上一宮大粟神社というらしい。駐車場から境内は見えず、大きな鳥居の向こうには一直線の上り坂がある。

「ちょっと行ってみようよ」

そう言って坂道を登りはじめる中田をあわてて追いかける。普段は登る人も少ないのだろう。もともと階段になっていたであろう石垣はあちこち崩れていて、苔がむしている。お遍路で有名な神社が数多くある徳島だが、ガイドブックなどを調べてもここの情報はほとんどない。訪ねたのは8月後半。さっきまでビールを飲んでいたのにスタスタと坂を登っていく中田を、汗かきかき、息きれぎれに追いかける。

「やっぱり気持ちいいね。下からあの参道を見た時、ここはよさそうだと思ったんだよね」

300メートルほどの坂道を登りきると、古めかしい社殿が見えてきた。聞こえるのは木々のざわめきとセミの鳴き声だけ。境内では爽やかな風が涼を与えてくれる。境内にはだれもいない。中田が社殿に向かい、二礼二拍手一礼。手を叩く音がよく響く。境内にはだれもいない。建立の年月も不明。それでもかなり古いと思われる社殿は、手入れが行き届いている。かつては多くの人がこの社を参っていたのだろう。不信心な人間でも八百万(やおよろず)の神に思いを馳せるほどの静謐さが漂っていた。

「さ、次に行こうか」

滞在は坂の上り下りを加えても20分程度。短い時間ではあったが、中田の直感に従った“立ち寄り”で心身ともにリフレッシュできた。インターネットが普及して、旅行は一気に便利になった。だが、こういうネットにもほとんど載っていない隠れた名所を見つけることこそ、旅の醍醐味だったりもする。

 

「に・ほ・ん・も・の」とは
中田英寿が全国を旅して出会った、日本の本物とその作り手を紹介し、多くの人に知ってもらうきっかけをつくるメディア。食・宿・伝統など日本の誇れる文化を、日本語と英語で世界中に発信している。2018年には書籍化され、この本も英語・繁体語に翻訳。さらに簡体語・タイ語版も出版される予定だ。
https://nihonmono.jp/

TEXT=川上康介

PHOTOGRAPH=淺田 創

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