父親とはどうあるべきか『ビューティフル・ボーイ』~滝藤賢一の映画独り語り座 vol.52

役者・滝藤賢一が毎月、心震えた映画を紹介。超メジャー大作から知られざる名作まで、見逃してしまいそうなシーンにも、役者のそして映画のプロたちの仕事はある! 役者の目線で観れば、映画はもっと楽しい!!  

最愛の息子を絶対に救えないとわかった時、父親としてどう生きるのか……。

4人の子供を持ちながら、滝藤はいまだにどういう父親であるべきか日々、右往左往しています。私の父親は放任主義で、中学時代にウルフカットにしようが高校で金髪にしようが一度も怒らない人でした。嬉しいような寂しいような。今となっては、それがよかったと感謝しておりますが、自分が親となると話は別。特にこういう映画を観ると考えさせられます。

実話を基にしたこの『ビューティフル・ボーイ』。運動も成績も優秀で、6つの名門大学に合格した輝かしい息子がドラッグに手を染め、抜けだせなくなっていく。父親役は、本連載の1回目『フォックスキャッチャー』で主役を演じたスティーヴ・カレル。どこにでもいる、息子をこよなく愛する父親。息子を更生施設に送ったり、施設から逃げだせば懸命に捜したりと甲斐甲斐しく世話をします。挙句の果てには、息子が溺れるドラッグがどんなものなのか試したり。いくら親が手塩にかけて育てても道を外してしまうこともある。正しい育て方などないのだと痛感させられました。

その父親の人生を容赦なくボロボロにしていく息子役を演じるのは『君の名前で僕を呼んで』のティモシー・シャラメ。なぜアカデミー賞にノミネートされなかったのか不思議なくらい魅力が炸裂していました。なんてセクシーで美しいのでしょう。アメリカ映画はなぜかガタイがよいアメフトのスター選手が人気があり、ハイスクールのマドンナを射止めるという傾向が多い気がする(笑)。しかし、ティモシー君は別格。次元が違う。

信じたいのにそのたびに裏切られる。20年近くともに生きた息子とはまるで別人。今まで見たことのない、ぞっとするような冷たい目つき。いっそ縁を切って忘れて生きたほうが楽になれるのか。子供を授かるということは、人生を豊かにしてくれると同時に、どこかで自分中心の人生を諦め、子供の為に生きるという覚悟を決めないといけないのかもしれない。それだけ我が子というのは特別な存在であり、親になった以上はその責任を果たさないといけないということなのでしょう。


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『ビューティフル・ボーイ』
音楽ジャーナリストのデヴィッド・シェフによる回想録『Beautiful Boy: A Father’s Journey Through His Son’s Addiction』と、彼の息子で現在は脚本家として活躍するニック・シェフの手記を映画化したもの。好奇心からドラッグ中毒に陥る息子と、彼を救おうとする父の葛藤を静かに見つめた作品。
2018/アメリカ
監督:フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン
出演:スティーヴ・カレル、ティモシー・シャラメ
配給:ファントム・フィルム
4月12日より、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開


Composition=金原由佳

滝藤賢一
滝藤賢一
1976年愛知県生まれ。4月10日スタートのドラマ24『浦安鉄筋家族』(テレビ東京系)に出演する。公開待機作に映画『コンフィデンスマンJP プリンセス編』『さんかく窓の外側は夜』。
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