英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者のお話、第320回。

ケチではなく、節約上手
外出する時は必ず水筒を持って出るし、靴下に穴が空いたらかがってはき続けます。
スーパーでは1円でも安いものを買いたいし、近所の薬局では月に数回の10%のオフの日にしか買い物をしません。
そんな自分の話をしていたら、日本語ペラペラのアメリカ人にこう言われました。
You really know how to stretch a dollar.
直訳すれば「君は1ドルを伸ばす方法を本当によく知っているね」となります。なんとなく意味はわかるような気がしますが、初めて聞いたフレーズなので、念のため日本語で聞いてみたところ、こういうことでした。
stretch a dollar=やりくり上手
1ドル札を長く引き延ばして、少ないお金でやりくりする、そういうイメージなんだそうです。「ケチ」というようなネガティブな意味はなく、「節約上手」というニュアンスなんだとか。
「1ドル札」となっているので主にアメリカで使われているスラングで、たまにカナダなんかでも聞かれるフレーズみたいです。
少し調べてみたら、イギリスでは同じ意味で“make your money go further”というフレーズがあるということ。go furtherは「さらに〜する」とか「もっと先へ行く」という意味なので「お金を最大限先へ行かせる」ということになり、まぁ「お金を最大限活用する」といった意味になるのも納得できます。
しかし常にstretch a dollar生活をしている私でも、金銭感覚が崩壊するシチュエーションがあります。それが居酒屋です。
生野菜をもりつけてマヨネーズがかかっただけの「野菜サラダ」700円。お醤油をかけただけの「冷奴」450円。
普段八百屋やスーパーでは1円単位できりつめているのに、居酒屋に来るとなぜかバンバン値段を気にせず頼んでしまいます。
でもいいんです。大将がもりつけてくれた野菜サラダはなんだか家で食べるより美味しいし、楽しそうに笑う周りのお客さんの熱気を感じながら食べる冷奴は格別です。
「ここでお金を使うために、普段節約しているからいいの」
自分にそう言い聞かせて、居酒屋から帰れば翌日もまた1パックで3回分くらい出した薄い麦茶を水筒に詰めてstretch a dollarを続けている次第です。