35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者。「その英語力でよく来たね(笑)」と笑われて2年後、英語力未だ0.5であえなく帰国。だけど日本にいたって、きっともっと英語は覚えられる! 下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。英語力ゼロレッスン「人のEnglishを笑うな」第97回!
基本中の基本。無料の水のもらい方
レストランで言う「お水でいいです」は、「ドリンクにはお金を払いません」とほぼ同義ですが、欧米や日本でも一部の高級レストランでは「お水ください」で、有料のボトルが出てきてしまいます。イギリスにいた短い間、それを知らなかった私は何度か、高い水代を払ってしまったことがあります。以来じっとまわりを見渡して、「無料の水」のもらい方を研究しました。
Tap water please
とても簡単なことでした。Tap=水道(蛇口)、Tap waterで「水道水」です。「水道水ください」でよかったのです。
そして、ほんとうに「水道水」がでてくるので、決して美味しくはありません。イギリスの水は日本とは違って硬水なので、ちょっと慣れるまでに時間もかかりました。
また生ビールは、蛇口から出てくるわけですから、Beer on tapとも表現します。
ふらりとパブに入り、なんの生ビールがあるかな? という時はこう言えるのです
What do you have on tap?(どんな生ビールがありますか?)
とはいえ、パブの場合は、ビールのロゴの入ったTapがずらりと並んでいますので聞くまでもなく、目で見えます。レストランなど、Tapが見えない時に聞くのがいいでしょう。パブでは、飲んだことのないビールを見つけた場合
Can I try it?(これ試飲できる?)
といえば、ショットグラスにちょっとだけビールを入れてくれるので味見できます。
ちなみにイギリスの古い建物だと、洗面所やキッチン、お風呂など、なぜかTap(蛇口)が二つあるところが多いのです。これは、イギリスにやってきた世界中の人が謎に思い、そして一度は被害に合うシロモノです。
片方からは煮えているのかと思うほどの熱湯が、片方からは、キンキンの冷水が出ます。中間の「ちょうどよい」温度はありませんので、両方出して自分で調節しましょう、ということのようです。これを知らずに世界中の人が、それぞれの言語で「熱っ!」「冷たっ!」をこれまで何万回も叫んできたと思われます。なんでだかは諸説ありますが、昔は給湯システムは屋根裏にあり、ネズミやゴキブリが多くいて、そういうものが水に流れてしまうことがあるため、飲み水のtapと分けた、とも言われています。
覚えておけばいざという時安心の、コックローチ。
ゴキブリ、で思い出しましたが、ロンドンで暮らしていた間はラッキーなことにゴキブリに遭遇したこともなく、その存在を忘れていました。スペイン人の友人と、オックスフォードに日帰り旅行に行くまでは。オックスフォード大学横の、博物館に入った時のことです。熊の剥製や、恐竜の骨、さまざま珍しい展示があるなかで、「生きた展示」があるというコーナーにさしかかりました。
博物館のスタッフの人がこちらへやってきました。
Are you OK? There are so many cockroaches.
(大丈夫? たくさんコックローチいるけど)
「コックローチズ?」と聞き返したら、相手はうなずいて去っていきました。「コックローチズってなんだろ?」とスペイン人の友人に聞いても、彼女はニヤニヤしながら「私は大丈夫」と言って進んでいきました。
大きなガラスケースの中に、大小さまざまなゴキブリが数十匹入って展示されていました。
人生であんなにたくさんのゴキブリをいっぺんに見たことがありません。
cockroach=ゴキブリ
だとわかりました。私は絶叫してその場を立ち去り、友人は興味深げにゆっくりとガラスを覗いていました。
博物館の方が「どうだった?」とニヤニヤしてきたので
Now I know cockroach.(コックローチ、アタラシイタンゴ、オボエタ)
と言ったら笑われました。
そして、コックローチコーナーが終わると、すぐ隣がカフェでした。なんだったらカフェからコックローチが見えました。「お茶してく?」という友人の提案を跳ねのけたのは言うまでもありません。
Illustration=Norio