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2025.04.19

ミカン箱の上で演説していた孫正義が、売上数兆円企業のトップになれた認知科学的理由

「仕事」にモヤモヤや物足りなさを感じているにも関わらず、現状を変えられずにいるビジネスパーソンは多い。認知科学に基づいたコーチングで10,000件を超えるセッションを行い、多くの人の人生を変えてきたミズカラ代表取締役CEO兼エグゼクティブコーチの村岡大樹氏が、本気で自分を変える方法を伝授。『自分の変え方 認知科学コーチングで新しい自分に会いに行く』の一部を抜粋して紹介する。【そのほかの記事はこちら】

Unsplash / Muhammed Nishal ※画像はイメージ

より強い臨場感を抱けた方向性が、新たなコンフォートゾーンになる

人間の脳には、「今か、未来かは関係なく、より強い臨場感を抱ける方を『コンフォートゾーン』とみなす」という特性があります。

今とは、現在リアルに生きている物理空間のこと。未来とは、脳の中で思い浮かべた、今のところはまだ実際に存在するわけではない情報空間のことです。認知科学のコーチング的なGOALを設定せずに普通に生きていれば、当然現在リアルに生きている物理空間の臨場感が強くなっていきます(一定数、過去に臨場感を抱いてしまっている人もいます)。そのため、GOALを設定せずに生きている期間が長いほど、今(もしくは過去)のコンフォートゾーンの確信度は深く強くなります。

しかし、GOALを設定し、今のところはまだ実際に存在するわけではない、未来の情報空間であっても、あなたの脳の中でありありと思い浮かべたら、現在リアルに生きている物理空間に勝る臨場感を抱くことができます。

つまり、「今の生き方よりも、今の生き方の外側のGOAL世界により強い臨場感を抱くことは可能である。そして、今の生き方の外側のGOAL世界により強い臨場感を抱くことができたら、そちらがあなたのコンフォートゾーンになる」ということなのです。

この現象を、私たちは「コンフォートゾーンが未来にズレる」と表現しています。

成功者はコンフォートゾーンが未来へズレている

このような脳の特性を、成功者たちは自然に活用しています。代表例は、ソフトバンクグループの代表である孫正義さんです。ソフトバンクを立ち上げた頃、孫さんはミカン箱の上に乗り、数人の社員を前に、「これからわが社は豆腐屋になる。売上を1丁(1兆)、2丁(2兆)と数えるようになるのだ!」と語ったそうです。

その演説を聞いた社員はあきれて、会社を辞めてしまった人もいると言われていますが、注目したいのは「孫さんがミカン箱に乗っている今と、売上数兆円企業のトップになる未来のどちらに強い臨場感を抱いていたのか?」という点です。孫さんは未来に強い臨場感を抱き、その未来こそがコンフォートゾーンだったのです。だからこそ、そのときミカン箱に乗っている状態は、彼にとって違和感のある状態だったわけです。

人間は、違和感のある場所から脱出し、コンフォートゾーンにとどまろうとします。その人間の習性を利用して、孫さんは、「社員が数人しかおらず、売上もごくわずかな会社の社長(臨場感を抱けない、自分にとって居心地の悪い“現在の物理空間”)」⇨「売上数兆円の世界的企業のトップ(臨場感を抱ける、自分にとって居心地のよい“未来の情報空間”)」といったように、未来の側にコンフォートゾーンをズラすことが自然とできていたのだと思います。

孫さんの脳は、「自分ならできる気がする」を信じ続ける状態を維持していたと言えるでしょう。自分の脳内でビジュアル化した未来に、自分自身がワクワクしていたのです。こんな話を聞くと、「そんなふうに自分の実現したい具体的な光景をイメージするなんて、孫さんのような偉人だからできるんでしょ?」と思いますよね。たしかに、普通に生きている人で、自然にGOALのイメージが出てきて、しかもそこに臨場感を抱いているなどという人はごくごくわずかです。

ですが、大丈夫です。

そのためにコーチがいるのです。また、孫さんの事例からもわかるように、ビジュアルがもたらすパワーは非常に大きいものです。ダニエル・カーネマン氏は、無意識のパワーをゾウにたとえましたが、素晴らしいたとえだと思います。その言葉のとおり、脳内の映像によって可視化されたビジョンは、ゆっくりと、しかしとてもパワフルに、私たちがGOALに近づいていくための後押しをしてくれます。

村岡大樹/Daiki Muraoka
株式会社ミズカラ代表取締役CEO兼エグゼクティブコーチ、一般社団法人日本認知科学コーチング協会代表理事。1987年東京都生まれ。2016年、外資系製薬企業で働いていた際にコーチングと出会う。その後、コーチとして独立するも失敗。2021年に合同会社LIMITを設立し、ジム、サウナ、民泊事業を経営(2024年2月事業譲渡)。2022年、株式会社ミズカラに参画し、「キャリアコーチング」「セルフコーチングプログラムREBOOST」を立ち上げる。2023年12月に株式会社ミズカラの代表取締役CEOに就任。キャリアコーチングのセッション数は10,000件を超え、累計受講者数は3,000名を超える。セルフコーチングプログラムREBOOSTの累計は受講者2,000名を突破。現在も、「夢中になれる人生をすべての人に」届けるため、200名を超えるメンバーと共に日々活動している。

TEXT=村岡大樹

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