35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者のお話、第231回。連載【英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」】とは
立ち食い寿司屋で、外国人観光客と大将の板挟みになった話
先日、よく行く安価な立ち食い鮨屋で、適当に鮨をつまんでいたところ、外国人観光客とみられるカップルが私の隣にやってきました。
店内は、その日あるネタが黒板に書き出されているだけ、英語のメニューはもちろんありません。もし日本語がわからなければ、なにも注文できないような店です。
大将が私の方を見て「ほら、注文聞いてあげてよ」と圧をかけてきます。
自分より若い世代はみんな英語が話せると思っているようです。
May I help you?
そこでおそるおそる、こう声をかけました。正直この一言ですら、私の下手な発音で通じたかどうか怪しいです。
けれどそこからこのカップルは怒涛のように話し始めました。
ウニを指さして「これは前に食べたけど、味が濃すぎて苦手だった」「マグロは好き」「食べたことのないネタを食べてみたい」などなど、ギリギリ聞き取れたフレーズから、好みを推測し、大将に伝えました。
「そうしたら、イエローテイルなんかどうかな? と聞いてみてよ」
大将はそう私に言いました。「イエローテイル」がなんなのかわからなかったのですが、“How about Yellow tail?”と聞いてみたら頷いたので、注文してみました。
出てきたのは、ブリでした。
その後も大将は「フラウンダーは好き?」「マカロルは?」など謎のカタカナ言葉を私にどんどん伝えてきます。大将は仕事柄、鮨ネタの英単語はたくさん覚えているようです。大将の単語力と、私の貧しいスピーキング力とリスニング力を合わせて、なんとかそのカップルを満腹にさせることができました。
習得した鮨ネタの英単語たち
この日学んだ鮨ネタ単語は以下です。
Yellow tail=ブリ
確かにブリは、尾の方が黄色がかっていますから、覚えやすい名前です。
ブリはワカシ(またはツバス)、イナダ(またはハマチ)、ワラサ(またはメジロ)、ブリと名前を変えていく出世魚ですが、英語ではそこまで厳密に名前がついていないようです。なんとなくイナダ、ワラサ、ブリあたりをYellow tailとするということ。イナダやワラサのことをYoung Yellow tailということもあるそうです。
Mackerel=サバ
主にサバのことらしいですが、アジを含む青魚全般をMackerelと呼ぶそうです。
アジとサバを区別したいときは、Mackerelをサバ、Horse mackerelをアジとするということ。ケンブリッジの英英辞典で調べてみたところ“Mackerel = an edible sea fish(食べられる海の魚)”とだけ書かれていて、ずいぶんとざっくりした説明だと驚きました。
Fatty tuna=大トロ
「ツナ」がマグロなのは「ツナ缶」のおかげで知っていましたが、大トロをなんと言っていいかわからず困っていたら、「ファッティーツナ!」と大将が教えてくれました。
「太ったツナ」「脂の乗ったツナ」ということで、覚えやすいです。
Medium-fatty tuna=中トロ
大トロがFatty tunaなら、中トロはこのように言うということ。ステーキの焼き加減みたいな言い方でこれも覚えやすいです。
Pacific saury=サンマ
ずっと、サンマをpikeだと思っていたのですが、pikeは、淡水魚のカワマスのことだそうです。サンマは太平洋に生息しているので、「パシフィック」とつくのでしょう。太平洋に面していない国、ヨーロッパなどはそもそもサンマのことを知らない人がほとんどみたいです。
Flounder=ヒラメ
ケンブリッジの英英辞典では“Flounder=a flat sea fish that can be eaten(食べられる平な海の魚)”とだけ説明されています。ヒラメなのかカレイなのか、これではあまりわかりませんが、そもそもヒラメとカレイをあまり区別しないそうです。
カップルの女性の方が、醤油皿に醤油を入れずに鮨を食べていたので「醤油はつけた方がいい」とずっと言っていたのですが、「彼の小皿から、たまにちょっとだけつけているから大丈夫」と、最後まで自分の醤油皿を使いませんでした。私の英語力では、鮨に醤油をつけることの重要性を伝えられず残念でしたが、そもそも日本食は欧米の人には塩分が多いと感じるようなので、ちょこっとでもいいのかもしれません。
外国人観光客が増えている昨今、家の近所にいても、英語の学びがあります。この日学んだ鮨ネタ英単語は、今後も使う機会がありそうです。
連載【英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」】とは……
35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者による英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」。「その英語力でよく来たね(笑)」と笑われて2年後、英語力未だ0.5であえなく帰国。だけど日本にいたって、きっともっと英語は覚えられる! 下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。