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2023.10.10

時価総額、現在の世界1位はApple。では約30年前の1989年は?【知っておくべきお金の知識】

連載の最終回となる今回は金融教育のすすめについて。近年はコロナウイルスの感染拡大を契機に、世界中の人々が将来やお金への不安を持ちながら生活する時代となった。そのような時代の流れの中で、私達はいかに戦略を立てて日々を過ごしていくべきか。今までのお金論をまとめて振り返る。連載「アフターコロナのお金論」とは

©️mathieu-stern/Unsplash

⾦融リテラシーは⼈⽣の武器になる

「アフターコロナのお⾦論」の連載を始めさせていただいたのが2020年春。コロナウイルスの感染拡⼤が始まって世界中の⼈々が⽣命の危機、将来への⼤きな不安を抱えていた頃でした。その前年、2019年には「⽼後2000万円」のニュースが⽇本中を駆け巡り、そこで将来のお⾦のことを初めて真剣に考えたり、向き合ったという⼈もきっと多かったのではないでしょうか。「⽼後2000万円」は⽇本の資産形成の加速に向けての⼤きなきっかけだったと思います。

私は2018年から⾦融教育サービスを提供していました。当初は、「すぐに2倍になる株はありますか?」「絶対損しない投資を教えてください!」「ビットコインは儲かりますか?」という質問が⼤半を占めていました。その当時は⽇本の⾦融リテラシーも黎明期だったと⾔えるでしょう。

連載をスタートして3年以上。⾼校でも⾦融教育が必修化され、若者のNISA⼝座開設数も約2倍に増え、来年には新NISAがスタートします。⾦融教育は国家戦略に制定され、政府から「資産運⽤⽴国」というスローガンまで発表されました。この3年間は⽇本の「お⾦」という領域においても歴史的転換期だったと思います。そして、今回の記事でこの連載も最後回となります。最後の連載は、今までのお⾦のトレーニングを振り返ってみようと思います。⾦融リテラシーは⼈⽣の武器になります。これまでの知識の復習もかねてぜひ最後までお付き合いください。

それでは、まずは住宅のトレーニングです。住宅を購⼊するときに、消費税はかかるでしょうか? 消費税がかからない場合もあるでしょうか?

答えは、売主が課税事業者の場合、消費税が10%かかります。例えば新築物件を売っているのはほとんど不動産会社ですから、不動産会社から購⼊する場合には消費税がかかるということです。ただ、売主が個⼈の場合には消費税はかかりませんので、個⼈から中古物件を購⼊する場合には消費税はかからないということになります。メルカリで消費税がかからないのと同じです。コスト⾯で考えるとこの違いは⼤きく、消費税率10%で考えると、3000万円の物件であれば消費税は300万円、1億円の物件であれば消費税は1000万円、これがかかるか、かからないかという違いです。住宅は⽣涯で最も⼤きな買い物と⾔われています。⾦融リテラシーをフル活⽤するべきタイミングです。

次に相場⼒のトレーニングです。Aさんから「100万円投資したら1年後には150万円になる投資商品がありますよ」と⾔われました。またBさんから「100万円投資したら1年後には101万円になる投資商品がありますよ」と⾔われました。あなたはどう思いますか?

Aさんの商品は相場からみて⾮常に利回りが⾼いから、何か⼤きいリスクがあるのだろう。詐欺のような商品なのかもしれない。Bさんの商品は相場からみて利回りが低いから、先進国の債券のようなローリスクな安定商品なのだろうな、とファーストインプレッションで思えたら、投資相場を知っているということになります。

ここではAさんは利回り50%、Bさんは利回り1%の投資商品となりますが、⽇本の東証⼀部上場銘柄の平均利回りは約2〜3%、世界中の株式全てに投資した場合の平均利回りは約5〜7%になり、これが投資の利回り相場となります。この相場を知っているだけで投資詐欺にあう可能性も下がりますので、ぜひご友⼈やご家族にも伝えてあげて欲しいです。芸能⼈や著名⼈、スポーツ選⼿もよく騙されています。ざっくりというなら、「利回りが10%以上」「絶対損しません」という⾔葉を聞いたら⻩⾊信号! と覚えておきましょう。

次に投資の最重要とも⾔える原理原則について、お⾦のトレーニングです。企業価値を評価する指標となる時価総額。現在の世界1位はApple、世界2位はMicrosoft、世界3位はAmazonと続きます。では約30年前の1989年、世界1位の時価総額はどの企業でしょうか?

答えは、NTT。⽇本企業です。このときの世界2位は⽇本興業銀⾏、世界3位は住友銀⾏、世界4位は富⼠銀⾏と続きます。このときの世界トップ10位のうち、7社が⽇本企業です。⽇本が世界経済で最も強かった時代です。ただ、そこからバブル崩壊やインターネットという新しい産業の誕⽣などにより、世界の経済情勢も⼤きく変わりました。今までの当たり前の概念が⼤きくアップデートされ、新しい当たり前がたくさん生まれ、急激に変化しました。

そういう時代の流れをみたときに投資の観点で⼤事になってくるのが、「卵を⼀つの籠に盛るな」という投資の基本です。卵を一つの籠に盛るとその籠を落としたとき、すべてが割れてしまう可能性がありますが、複数の籠に盛っておくともし一つの籠を落としてしまったとしても他の籠の卵は無事ということになります。つまり、リスクを分散するべきであるという投資の基本の考え⽅で、分散投資のことです。

分散投資の方法としては、異なる資産や銘柄を組み合わせて運用する方法があります。例えば、株式とは異なる値動きをすることが多い債券を組み合わせたり、国内だけでなく外国株式や外国債券を組み合わせたりする方法です。また、運用する時間でリスク分散させる方法もあります。ドルコスト平均法といいますが、価格が変動する金融商品を常に一定の金額で、時間を分散して定期的に買い続ける手法のことで、長期的な資産形成の基本手法として有名です。少額でも毎月定額の投資をすることで、リスクを分散しながらコツコツと資産を増やしていくことができます。投資の基礎は、「長期」「分散」「積立」です。投資の原理原則ですので一生覚えておきましょう。

“Our favorite holding period is forever.”(好きな株式保有期間は永遠)

“Only buy something that youʼd be perfectly happy to hold if the market shut down for 10 years.”(今後10年間市場が閉鎖しても喜んで持ち続けられる株だけを買いなさい)

これは世界⼀の投資家と⾔われているウォーレン・バフェット⽒の⾔葉です。持続的に成⻑し、利益を上げ続けるであろう企業を⾒極め、⻑く保有することが投資の基本なのです。

次にビジネススキル、稼ぐ⼒のトレーニングです。世界的に脱炭素の⽅針が加速し、電気を原動⼒とする⾃動⾞が当たり前の世界になりつつあります。電気⾃動⾞を開発するテスラの時価総額は、世界第6位となる急成⻑を遂げています。では、ガソリン⾃動⾞と電気⾃動⾞。変わったものと変わっていないものはなんでしょうか? これはビジネスを新しくスタートする上で本質となる考え⽅です。

まず変わったものは動⼒。時代の流れに合わせてガソリンから電気に変わっていきます。そして変わっていないもの。それは少しでも速く、少しでもラクに移動したいと願う⼈間の欲求です。⼤昔は⾺に乗って移動していましたが、その欲求はそのときから現代でも変わっていないということです。⾃然の摂理にのっとっているということができます。

これはお⾦も同じです。姿形を変えながらも、その本質はずっと変わっていません。お⾦の本質は、それ⾃体が⽬的になるものではなく、⼈⽣を豊かにするための道具です。その本質が⾃然の摂理と合致しているからこそ、⻑い時がたっても⽣き残っている⼈類最⼤の発明なのです。キャリアを選択するとき、投資をする商品を決めるとき、多くの局⾯でビジネスの未来を予測することが求められます。私は、未来予測の際に「変わらないものは何か?」「変わる余地はあるのか?」を必ず考えます。変わる余地が⼤きいということはこれからビジネスチャンスがあるということです。

お⾦のスキルは、⾞の運転スキルと似ています。正しいスキルを⾝につけて⽇々注意を怠らないことで、⾃分の⼈⽣の⽬的地にたどり着く可能性があがります。⾞の運転と同じなのは、教習所で知識や練習もすることなく道に出るとすぐ事故にあうでしょうし、またしばらく運転をしていないと⼀度覚えた知識や実践スキルも低下してペーパードライバーとなってしまうことです。

資産形成において基礎となるお⾦のスキルを⾝につけて、少額から実践してみることが⼀番の近道です。実践においていろいろな経験をするなかで、⾃分の実⼒や予測⼒も上がっていきます。何度か失敗もするかもしれません。でも、その失敗経験が⾃分の確かな実⼒として⾝についていき、それが10年後、30年後、50年後のどうなっているかわからない世界において、あなたが⾃分で⾃分の⼈⽣を切り開いていく切り札となることでしょう。

お⾦の不安のない社会をつくりたい。そういう想いからこの連載をスタートしました。3年以上にわたって読んでいただいた読者の皆様、本当にありがとうございました。

皆様のこれからの⼈⽣が、少しでもお⾦の不安がなくなることで、さらに挑戦とワクワクにみちたものになることを⼼より祈っております。

■連載「アフターコロナのお金論」とは
新型コロナウイルスにより、多くの人がお金について真剣に考えたはずだ。先行きが見えないなかで、今後どうお金と付き合い、増やしていけばいいのか。この連載では、お金のトレーニングスタジオ「ABCash」ファウンダーの児玉隆洋が、コロナ後のお金と資産運用についてレクチャー。お金とは何か、投資とは何かを考える。

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児玉隆洋/Takahiro Kodama
ABCashファウンダー。1983年宮崎県生まれ。大学卒業後、サイバーエージェントに入社。Amebaブログ事業部長、AbemaTV広告開発局長を歴任。2018年、海外に比べて遅れている日本の金融教育の必要性を強く感じ、株式会社ABCashTechnologiesを設立。すごいベンチャー100受賞、スタートアップピッチファイナル金賞。著書に『未来のお金の稼ぎ方 お金が増えれば人生は変わる』がある。

TEXT=児玉隆洋

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