暗号資産やブロックチェーンが持つ、世界を変える大きな可能性について各界のキーパーソンに取材していく連載。今こそ知っておくべき、暗号資産の知識とビジネスへの活用例とは? 連載「キーパーソンを直撃！ 暗号資産は世界をどう変えるか?」vol.8
2021年10月20日、1BTC（ビットコインの単位）の価格が6万6000ドル（約750万円）を超えて史上最高値を更新。暗号資産の盛り上がりはとどまるところを知らない。今回は4月14日に米NASDAQに上場し、8月19日に日本でのサービスを開始した世界最大級の暗号資産取引所、コインベースの日本法人で代表を務める北澤直（なお）氏に、暗号資産が金融システムに与えるインパクトについて話を聞いた。
金融インフラを世界的に画一化、均一化するために
コインベース日本法人の代表に就任したのは2018年。モルガン・スタンレー証券での投資銀行業務を経て、お金のデザインという会社でフィンテックのサービスをつくる経験をした後のことです。使い勝手を含め、消費者向けの金融サービスの課題はまだまだ多いと感じる一方で、暗号資産をはじめとしたテクノロジーの進化が、既存の金融システムを根底からアップデートする可能性を感じていた時でした。
コインベースのブライアン・アームストロングCEOとは、サンフランシスコで話をしました。もともと、Airbnbのエンジニアだった彼はさまざまな国を渡り歩くなかで、いまだに金融インフラが世界的に画一化、均一化されていない現状を目の当たりにします。そんな状況に革命を起こすためには、政府や企業に帰属しない分散型マネーである暗号資産を活用するしかない。だから、コインベースを設立したんだとブライアンは語ってくれました。私は彼の熱意、ビジョンに共感し、コインベースにジョインすることを決めたんです。
コインベースが世界中で受け入れられる理由
コインベースのサービスをひと言で言うと、＂Most trusted, Easiest to use＂（最も信頼され、最も使いやすい）です。日本にはコインベース以外にもたくさんの暗号資産取引所がありますが、強みとしては大きくふたつあると考えています。
まずは、セキュリティの強固さ。コインベースは世界最大級の暗号資産取引所ですが、今まで一度もハッキングによる被害を受けたことがありません。その堅牢性、安全性はコインベースのもっとも信頼のおけるところだと胸を張って言えます。ふたつ目は、PayPalやMUFG、Barclaysなど、世界中の名だたる金融機関とのパートナーシップを結んでいる点です。これによって、暗号資産取引所の運営に不可欠な法定通貨と暗号資産の交換を、フリクションレスにユーザーへサービスを提供することができます。
コインベースは単なる取引所だけではなく、DApps（分散型アプリケーション）や暗号資産決済など多岐にわたる領域でビジネスを展開しています。また、暗号資産のコミュニティ開発や暗号資産プロジェクトにも積極的に投資をしている。金融に変革をもたらすために、これからもどんどん活動の幅を広げていきます。
暗号資産に必要なのはマーケットの成熟
コインベースのNASDAQ上場やビットコイン史上最高値の更新など、’21年は暗号資産にとって飛躍の年でした。さらに、米国を中心に一部の機関投資家たちが暗号資産への投資に力を入れ始めてきていて、少しずつではありますが暗号資産が世の中を変えつつあることを私は実感し始めています。ただ、暗号資産はまだまだ未成熟。もっと多くの人たちが市場に入ってきてマーケットとしての厚みが出てくれば、暗号資産への理解も深まり、市場がさらに成熟度を増していくと思います。
意外と思われるかもしれませんが、実は日本は官民ともに暗号資産の導入に対して積極的な国です。ハッキング等の事象から学んで、国や行政が暗号資産取引の安全な枠組みを、世界に先駆けてつくっています。
「インターネットの成長のスピードに、お金の進化がついてきていない」と言われることがありますが、暗号資産のテクノロジーこそが、まさにお金のイノベーションです。世の中のパラダイムが転換する現場に、その第一線でプレイヤーとして立ち会える機会はめったにありません。私はコインベース日本代表として、暗号資産が今まさに歴史を刻んでいく瞬間を、皆さんと共有していきたいと思っています。
Illustration＝細山田 曜
