35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者。「その英語力でよく来たね(笑)」と笑われて2年後、英語力未だ0.5であえなく帰国。だけど日本にいたって、きっともっと英語は覚えられる! 下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。英語力ゼロレッスン「人のEnglishを笑うな」第112回!
息を飲む美しさって英語だと?
リモートワークが中心になり、プライベートと仕事の切り替えがつかず悩んでいる方も多いでしょう。私もその一人ですし、私の日本語オンラインレッスンに来てくれるイギリス人の青年も、同じことを言っていました。
「1週間、ベッドとデスクとトイレとキッチンの往復を続けているだけだ」
「気が滅入る」
と流暢な日本語で言うので、「綺麗な景色でも見て、癒されよう」とグーグルで世界遺産をイメージ検索して感想を言い合うことにしました。
マチュピチュの様子を見ていたところ、彼はその美しさにみとれ、うっかり英語が出てしまいました。
Breathtaking!
ブレーステイキング? なんですか、それは? と聞いてみたところ。
すごくエキサイティング、すごく綺麗、すごく驚いた
という時に使う形容詞だということです。
他にも
take your breath away
という言い方があるようで、日本語でいう「息を飲む美しさ」に近そうです。
では、Breathtaking でグーグル検索すると、美しい景色がどんどん見られるのでは? と思いやってみると、映画の情報サイトで日頃私も頼りにしているIMDbが「20 Breathtaking Movies」という記事を出していました。
「息を飲む映画20本」ということで、どんな作品が上がっているのか見てみたところ。
スティーブン・スピルバーグの戦争映画『プライベート・ライアン』、クリント・イーストウッド監督の差別と戦いながらラグビーワールドカップ優勝を目指す『インビクタス 負けざる者たち』など、ただ「美しい」ということではなくて、まさに「息が止まりそう」なシーンもたくさんある名作が挙げられていました。
確かに日本語の「息を飲む」も、美しいだけではなく、スリリングなものや怖いものを見た時など心が動いた時に使う言葉ですから、Breathtakingと「息を飲む」はほぼ同じなんだなぁと実感しました。
しかし実感した直後に、「20 Breathtaking Movies」に『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』がランクインしているのを発見。
独身最後の夜に飲みすぎてしっちゃかめっちゃかになるこのコメディ、確かに名作ですが果たして「息を飲む」映画なのか……。再びBreathtakingの意味がわからなくなってしまったので、今晩久しぶりに『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』見てみようかなと思っています。
(ちなみにホアキン・フェニックスがアカデミー賞主演男優賞を受賞した『ジョーカー』とこの『ハングオーバー!』の監督が同じ人だったことに今回気がつきました。この衝撃もBreathtakingと言えるのでしょうか)
ブリースとブレスの違いって?
Breathtakingを覚えたところで、「日本語では『息を飲む』だからDrink breathe(ドリンク ブリース)って言うんだよ」とイギリス人の青年に話したところ。
「Breath”e”(ブリース)ではなくBreath(ブレス)ね」
と注意されました。
Breathe(ブリース)は「息をする」という動詞なので、Breath(ブレス)という名詞にしないと「飲む」ことはできません。
日本語を教えようと思っているのに、私が次々新しい英語を教えてもらうことになってしまい申し訳なくしゅんとしていると。
「まぁ、しょうがないよ、イギリス人もよくBreatheとBreathを書き間違える」
と、フォローされてしまいました。
Illustration=Norio