心を滾らせる運命の一脚を探せ!
椅子の世界は奥が深い。デザインの変遷を体系的に考察したり、人間工学に基づいた機構を開発したり、ライフスタイルの進化に合わせて素材を変えたりと、常に進化を続けているジャンルだ。しかしいわゆる“語れる椅子”となると難しくなる。椅子は家具のなかで最も嗜好性が高く、ヴィンテージ市場も活況だ。
それゆえ単に快適に座れればよいということではなく、何年のデザインか? 誰がデザインしたのか? どこのブランドから発売されているのか? といった周辺の蘊蓄(ウンチク)も含めて重視される。それゆえ圧倒的に、“巨匠が手がけたマスターピース”が人気なのだ。
しかしそれだけでは面白くないだろう。現代の巨匠デザイナーやこれからを担う新鋭たちもまた、多くの椅子のデザインを担当している。当然ここから未来のマスターピースが生まれることは容易に想像できる。
つまり椅子の選び方は、既に確立した価値を持つマスターピースを愛でる、もしくはこれから価値が出るであろう新しいアイコンを探すというふたつの方向性があるということになる。
座るための実用品でありながら、嗜好品でもあるからこそ、椅子選びは楽しいのだ。
1919
Designed by レンツォ・フラウ
POLTRONA FRAU(ポルトローナ・フラウ)
ポルトローナ・フラウの創業者であるレンツォ・フラウがデザインし、今も製作し続けているマスターピース。ボタン留めやアームレストの優雅な仕上げといったクラシックなデザインを丁寧に継承している。かつてはシガーを置くための場所だった小さなテーブルは、今ならスマートフォンを置く場所として活用したい。W90×D95×H93(SH50)cm。¥1,260,000(ポルトローナ・フラウ東京青山 TEL:03-3400-4321)
Vitra/不思議な造形を楽しむ小さな建築物
ウィグル サイド スツール
Designed by フランク・ゲーリー
Vitra(ヴィトラ)
ビルバオ・グッゲンハイム美術館やウォルト・ディズニー コンサートホールなど、有機的な造形で知られる建築家、フランク・ゲーリーがデザイン。その美意識が強く反映されたグニャグニャのスツールは、本体がダンボールで側面が硬質繊維板でできている。価格は控えめながら彫刻のような美しさがあり、空間のなかで静かに主張する。W40×D43×H40.6cm。¥59,400(ヴィトラ TEL:0120-924-725)
Zanotta/現代アートにも通じる歴史的傑作スツール
メッツァドロ
Designed by アッキレ・カスティリオーニ
Zanotta(ザノッタ)
イタリアの巨匠デザイナーが手がけたスツールで、1957年のデビュー以来、今でも愛されるマスターピース。現代アートの手法のひとつである“レディメイド”のスタイルを家具デザインに取り入れ、座面に使用しているのはトラクターのシート。奇抜なデザインだが、メタル製の脚がしっかり沈みこむので座り心地もよい。W49×D51×SH51cm。¥151,800(エスティック/フォルマックス表参道 TEL:03-5786-2556)
Up50
Designed by ガエターノ・ペッシェ
B&B Italia(ビー・アンド・ビー イタリア)
1969年に発表された椅子で、包みこまれるような造形が特徴。ポリウレタン製なのだが、購入時は真空パックされたペシャンコ状態で届き、袋を開けると文字どおりムクムクと“UP”する。こちらは誕生50周年を記念して復刻したファブリック。足元の球体はオットマンとして使用する。チェアW120×D130×H103(SH67)cm、オットマンφ57cm。¥1,024,100(ビー・アンド・ビー イタリア東京 TEL:0120-595-591)
Knoll/スチール素材を繊細な表現で楽しむ
プラットナーコレクション サイドチェア アンド スツール
Designed by ウォーレン・プラットナー
Knoll(ノル)
アメリカ出身の建築家、ウォーレン・プラットナーがデザイン。1966年にデビューしたこのコレクションは、100を超える極細なスチールロッドを連続させることで、繊細で柔らかみのある造形をつくりだした。その美しさは竹細工のようでもあり、モダンながら和室にも合う佇まいが魅力。スツールφ43.5×SH54.5cm。¥306,900~サイドチェアW73×D58×H76(SH50)cm。¥512,600~(ノルジャパン TEL:03-6447-5405)
01チェア
Designed by 倉俣史朗
CAPPELLINI(カッペリーニ)
1960年代から日本のデザイン業界を牽引し、その芸術的な作風で海外からも高く評価されたインテリアデザイナー、倉俣史朗。彼が生前にコラボレーションしていた家具ブランドのカッペリーニから復刻されたこの椅子は、スチールパイプの繊細な美しさが最大の特徴。まだまだ知る人ぞ知る存在の椅子だからこそ、未来に遺すアイコンとして愛でたい。W65×D58×H75(SH45.5)cm。¥434,000(カッペリーニ ポイント 東京 TEL:03-6821-8890)
ボレア
Designed by ピエロ・リッソーニ
B&B Italia(ビー・アンド・ビー イタリア)
軽量パイプで構成されたシンプルなフレームに、華やかなクッションを合わせたアウトドア用の椅子。その意匠は飛行機のデザインやディテールから着想を得ている。足先をちょっとだけ曲げることで、軽やかな雰囲気を演出。フレームはスタッキングできるので、収納も便利。クッションにはリサイクル素材を採用し、サステナブルな製品となっている。W69×D61×H83(SH45)cm。¥345,400~(ビー・アンド・ビーイタリア東京 TEL:0120-595-591)
Moooi/瞬間を永遠に封じこめた座れる現代アート
スモーク ダイニング アームチェア
Designed by マルティン・バース
Moooi(モーイ)
前衛的なデザインと思想を楽しむオランダの家具ブランド、Moooiの代表作。実際に家具を炎で焼き、その燃え残りをエキポシ樹脂でコーティングしており、椅子としての機能は残しつつも、はかない一瞬を封じこめたアート的な魅力がある。椅子の燃え方は個々に異なるため、すべてに一点モノの価値と魅力があるというのも面白い。W60×D63×H106(SH49)cm。¥391,600(トーヨーキッチンスタイル TEL:03-6438-1040)
EDRA/ワイヤーが絡み合う正体不明のオブジェ
コラーロ
Designed by フェルナンド&ウンベルト・カンパーナ
EDRA(エドラ)
ブラジル出身の兄弟デザインデュオは、自然からインスピレーションを受けた作品が得意。一見するとなんだかわからないこのオブジェは、実は椅子。サンゴ礁をイメージし、スチールワイヤーをつなぎ合わせて椅子の形にしている。前衛的な作品だが、何百もの溶接した部分を丁寧に磨いており、繊細な仕上がりになっている。W140×D90×H90(SH45)cm。価格未定(中津家具 TEL:0120-211-390)
レプリ
Designed by 大城健作
POLTRONA FRAU(ポルトローナ・フラウ)
イタリアで活躍するデザイナー、大城健作による美しいスツール兼ベンチ兼プーフ。名門ポルトローナフラウの職人技を活かした柔らかなプリーツやボタン留めで、優しい表情をインテリアに与える。張地は最高峰のペレ・フラウ レザーのほか布地なども選べる。小サイズW39×D39×SH46cm。¥180,000~。中サイズW125×D45×SH46cm。¥398,000~。大サイズW106×D106×SH46cm。¥515,000~。(ポルトローナ・フラウ 東京青山 TEL:03-3400-4321)※写真は参考色