コロナ禍にあって、オフィスの在り方が問われている。家でもカフェでも、どこでも仕事ができる今、オフィスに行く意味とは何か。今回ゲーテは、ここ2年の間に新たに誕生したオフィスを取材。そこから見えてきたのは、最先端のオフィスは単に生産性が高いだけではない。ここに来れば仲間に会え、アイデアが生まれ、クリエイティブな働き方ができる場所であるということ。それは、行かなければいけないではなく、行きたくなるワークプレイスだ。
新事業の創出を最適化するためオフィスをWeWorkがデザイン
国際ビジネス拠点として、国家戦略特区である竹芝エリアに誕生した東京ポートシティ竹芝。ソフトバンクは最新のITインフラを備えたこのビルに、今年1月本社を移転した。
グループ企業を含めて12階から39階に入居し、延床面積は2万5000坪。本社に勤務する従業員数はグループ全体でおよそ1万5000人。7月現在の本社出勤率は15%程度で、コロナ後もオフィス出勤率は5割以下を目標としており、席数も50%程度に抑えた設計となっている。
この新本社プロジェクトを指揮した同社グループオフィス戦略部長の佐藤信秀氏は「特に本社の場合、オフィスは知的生産性を最大化するための場所であるべきです。働き方が多様化する状況下においてそれを実現するために、グループ企業であり、コワーキングスペースサービスを提供するWeWorkとともに新たなオフィスの在り方を模索しました」と話す。
今後、在宅ワークが浸透し、オフィスは不要という考えも一部ではあるようだが、ソフトバンクの場合は在宅とオフィス、サテライトオフィスを使い分けるハイブリッドな働き方を推進していくという。
目指すオフィスは、ホーム
また、同社は通信事業を軸に、グループ内外の多様な分野の企業と連携しながら新規事業を立ち上げ、成長を続けてきた。ゆえに本社に求められているのは事業を創造できる環境であり、新たな発想や閃きを生みだすためには、スタッフ同士が直接顔を合わせ、居心地のよい雰囲気でコミュニケーションを取れることが不可欠だという。
「これまでのオフィスはデスクと会議室で成り立っていましたが、当社のオフィスが目指すのは、それとは真逆のホーム(家)です。書斎やキッチン、リビング、ダイニングの要素を取り入れてインテリアを設置し、人が集まるエリアを主役にしました。アートや植栽もふんだんに飾っています。オフィスを作業する場所から社員同士がコラボする場所へと変えたのです」
そのなかでこだわったのが3フロアごとに内階段でつなぐこと。中央のフロアにエスプレッソマシンやビールサーバーを置き、コミュニティバーと呼ばれる社員からの問い合わせに対応する窓口を設けた。これによってこのフロアに自然と人が集まる環境を実現している。
つまり、WeWorkと連携した狙いは、デザイン性の高い空間ではない。新しい働き方や文化をつくっていくことなのだ。
COMPANY
ソフトバンク
EMPLOYEES
約15,000名(全国各地、グループ含む)
OFFICE SPACE
27フロア、約83,000㎡
KICK OFF
2021年1月
オフィスの移転を発表したのは2019年1月。1万人を超える規模のオフィスの移転だけに、引越し作業は10回程度に分けて行われた。新オフィスの窓の外には海が広がる。