35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者。「その英語力でよく来たね(笑)」と笑われて2年後、英語力未だ0.5であえなく帰国。だけど日本にいたって、きっともっと英語は覚えられる! 下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。英語力ゼロレッスン「人のEnglishを笑うな」第99回!
水がsimmerになるまで待つってどういうこと??
毎日英語を読んだり聞いたりしないと、せっかくついた0.5の英語力もすぐになくなってしまいます。とはいえ、何もする気力がない時は、せめて英語の料理レシピを読むか、料理動画を見ることにしています。レシピは簡潔に書かれていますし、しっかり理解しないと次の料理の手順がすぐ意味不明になるので、「なんとなくわかった気がする」があり得ず、明快です。
私は特に料理が得意なわけではありません。そもそもシンプルなレシピでないと言語以前の問題で理解できないので、先日は「シンプル 卵料理」で検索しました。
まずは「ポーチドエッグ」を作るにあたって、いきなりこの単語にひっかかりました。
Simmer
Wait until the water is simmer.
(フライパンに水を入れて)「水がsimmerになるまで待つ」というのです。
水を火にかけているのだから、沸騰まで待つのかなと、次のページに行くと、「沸騰していてはダメです」という注意書きがありました。
フライパンに水を入れ火にかけただけの料理としては、最初のステップでもう脱落してしまった感があります。
simmer = 沸騰する直前の状態
だそうです。日本語訳では「弱火で火にかける」と書かれているものもありましたけど、検索すればBoilの状態とsimmerの違いを動画付きで丁寧に説明してくれるサイトまでありました。ポーチドエッグを作る時は、沸騰した状態では火が通りすぎてしまうので、このsimmerの状態がよいそうです。
確かに、とろとろの黄身がポーチドエッグの命です。火が通り過ぎはよくないでしょう。そしてこの「とろとろの黄身」は“runny yolk”というそうです。これはレストランやホテルで、目玉焼きやゆで卵の好みを聞かれた際に“I prefer runny yolk(黄身がとろとろの方が好きです)”といつも答えていたので知っていました。とろとろすぎて、黄身が流れてしまう、走っていってしまう、みたいなイメージで覚えやすいです。
スクランブルエッグと目玉焼き
簡単な料理のはずなのに
卵料理2品目はスクランブルエッグです。
さすがにこれは簡単かと思いきや、1行目ですぐつまずきました。
Beat eggs
Beatは「叩く」だから、卵を割ることかなと思いましたが、イラストがどうにも卵を混ぜているように見えます。
Beat eggs = たまごをかき混ぜる
この場合のBeatは、「勢いよくかき混ぜる」ということでした。「卵を割る」という説明に「叩いて割れ」は考えてみれば確かに随分乱暴でした。卵を割る際は“Crack egg”と言うことが多いようです。
ここまできて、わりと簡単な料理の簡単な単語でひっかかっていることに改めて気がつきました。ポーチドエッグや、スクランブルエッグといった、ちょっとひと手間必要な料理ではなくて、もっともっと簡単なレシピならどうだ、と次は目玉焼きのレシピを見てみました。まずは「用意するもの」から読み始めます。
spatula
「スパッチュラ……?」
料理のステップに入る前の、道具の説明からもうわかりませんでした。これは「ヘラ」でした。そういえば、イギリスにいた時、これを購入したくて、名前がわからず、ジェスチャーでお店の人に説明したことを思い出しました。せっかく覚える機会があったのに、ジェスチャーで伝えるには難易度が高い「ヘラ」を、見事動きだけで伝えられた喜びで、ちゃんと覚えることをしなかったのです。イギリスで上がった技術は、英語力ではなくてジェスチャー力でした。というか、わざわざジェスチャーにしないで、せめてスマホで画像検索して見せればよかったと思います。
Illustration=Norio