「コロナをどう乗り越えるか」といわれても、正直ピンときません。だって、できることは耐えるしかないですから。もちろん、耐えるのは辛いし、苦しいし、不安。でも、この先にはきっと――。今回は、そんな風に気持ちを支えてくれる本を紹介します。
Just remember in the winter
Far beneath the bitter snows
Lies the seed that with the sun’s love
In the spring becomes the rose
伝説のロック歌手ジャニス・ジョプリンの人生を描いた映画『ローズ』。主演のベット・ミドラーは同名の主題歌でこう歌います。「思い出して。厳しい冬を耐えた種は、太陽の光を浴びて春に薔薇の花を咲かせることを」と。
負け、挑戦は無駄ではない
『連戦連敗』(東京大学出版会2,400円)は、建築家・安藤忠雄の東京大学大学院での講義録。まず、あの世界的建築家もコンペ(設計競技)では敗退の連続だったということに驚かされます。なんでも安藤さんは、建築家として設計事務所をつくったとき、最初は仕事がまったくなく、厳しい現実を噛みしめながら、不安な日々を過ごしていたのだとか。頼まれてもいないのに、勝手に空き地を見つけては設計し、その土地の持ち主に「こんな建物を建てませんか?」と逆にお願いしに行っていたそう。しかし、その不安がものごとに真剣に打ち込む姿勢と、失敗を恐れずに挑戦する勇気を与えてくれたといいます。たとえコンペで勝てなくてもアイデアは残り、そのアイデアは別のプロジェクトで形になる。そう、報われないものはない。この本は勝ち負けよりも、そこにかける情熱や想いが大切であることを静かに教えてくれます。
絶体絶命からの生還
『本当にあった奇跡のサバイバル60』(日経ナショナルジオグラフィック社2,400円)は、大震災、飛行機脱落、登山事故、誘拐など、九死に一生を得た実話を集めたもの。地図や図解、当時の報道写真が収録されていて、その過酷さは半端ないものであったことが、ページを捲るたびにひしひしと伝わってきます。まさに奇跡。これを読むと、自分もちょっとやそっとのことでは動じなく思えてくる。すべてのエピソードに共通するのは、「絶対に生き延びてやる」という強い思いです。
耐える=自分と向き合う
『耐心力 重圧を制御する術がある』(幻冬舎1,400円)は、サッカー選手・川島永嗣の著書。ワールドカップ3大会連続で日本の守護神を務めた川島さんは、ヨーロッパで所属チームが決まらないという浪人生活を経験。W杯では批判の対象にもなりました。そんな想像を絶する重圧やハンディにひたすら耐えた川島さんは、2018年からフランスリーグのストラスブールに所属。当初、第3ゴールキーパーとしての加入だったが、現在は37歳にして正GKのポジションを獲得しています。この本のキャッチコピー「苦しい時に耐え、信念を貫くことで、風は吹く!」を地で行く生き方には、ただただ頭が下がります。
今の世の中、「耐える」というとブラックな印象があって、時代に逆行しているようなイメージがあります。しかし耐えている時は、自分と向き合う絶好の機会。そう思うとポジティブな感じがしてくる。コロナもそうですが、生きていると思うようにいかないことばっかりです。でも、それに耐えた先にあるのは、きっと花を咲かせた薔薇。それは成長した自分、人間としての器がデカくなった自分ではないでしょうか。