幼少期から人間の命や老いについて考え、医学情報を収集し続けてきたという堀江貴文氏。宇宙、野球、食、エンタメと多様な業種に時間とお金を投じるなかで、究極の投資先と言わしめるもの。それが“カラダ”だ。健康に投資をすれば、老化を克服し、“生涯現役”が叶う時代になりつつある今。情報弱者でいることは不幸と断言するホリエモンが、その脳内に蓄積された最先端の医療&美容情報を惜しげもなく伝授!驚愕の事実が続々飛び出す新連載、スタート! Vol.01「NMN」
効くかわからないけど、10年後に結果がよしとなった場合に
後悔するくらいなら、お金に余裕がある人は今から飲んでおけばいい。
僕が子供の頃、大人は真顔で「人は必ず死ぬんだよ。だから人間は尊いんだ」と語っていた。だから子供である僕が死に対して疑問を持つことはタブーとされ、少しでもそれを口にするとキレたり、否定され、話になんねえなと思っていた。
大人になっても「なんで人間は死ぬんだろう」という考えは、引き続き止まらなかった。でも残念ながらその話を共有できる人は現れず、もやもやとしたまま月日は過ぎていくばかり。でもIT企業やネットバブルが生まれ、僕ら世代の起業家の間で少しずつ同志が現れ、人間の寿命や抗老化について語り合えるようになり、僕は思った。金があるなら、健康を買うべきじゃないかと。さらに知らないでいること、無知であることが、自分を健康から遠ざけるとも思えた。そこで医者の友人らとともにサプリメントの開発や再生医療を研究する会社を起業し、まあ、ぼちぼちやっている。さらにピロリ菌や糖尿病なども調べ、『健康の結論』という本も書き、健康とは究極の資産であると説いたのだ。
人間の死について考えると同時に、抗老化についての問題意識も非常に強く持っていた。何人かの有識者に話を聞き、結果、老化というのは病気であって、克服可能であるという結論に達した。
そもそもなぜ、人は老化をするのか? 人の身体は約60兆個の細胞でできている。女性の身体の中にある受精卵というひとつの細胞から始まり、無数の分裂を繰り返し、臓器となり、神経となり、筋肉となり、人間をつくっているのだ。細胞の分裂は50回が限界といわれ、限界までいくと老化細胞と呼ばれ、増殖能力がなくなってしまう。また外的要因(紫外線、ストレス、激しい運動など)が原因で体内に活性酸素が生まれ、それが細胞を錆びさせるなど、さまざまな要因が絡み合い、要は細胞の入れ替わりがスムーズにできなくなり、組織としての機能も落ちていくのが老化だ。
老化を食い止め、若さを取り戻すとされるNMN
この老化をなんとか食い止める抗老化については、米ワシントン大学医学部発生生物学部門・医学部門の今井眞一郎教授という抗老化研究の第一人者がいて、この方から数年前にお話をうかがい「NMN」という物質の存在を知った。「NMN」とは正式名称を「ニコチンアミドモノヌクレオチド」という。
そもそも老化や寿命は、長寿遺伝子と呼ばれる「サーチュイン遺伝子」によって制御されている。このサーチュインが、脳の視床下部で活性化されることによって、そいつが全身の骨格筋に対して刺激を与えているということがマウスの研究でわかっている。表情筋も含め、ほとんどの筋肉が骨格筋なので、そこに対して神経を通じて刺激を与えるのがサーチュインなのだ。
そしてサーチュインを活性化するのがNAD+という物質であり、NMNはこのNAD+の前駆体。つまりNMNを摂取すると体内でNAD+に変化する。もともとサーチュインは代謝する際に触媒的にNAD+を大量に使うのだけど、20代をピークに体内でのNAD+の生産量は減り、血中の濃度が減ってしまう。つまり活性も減ってしまうということ。噛み砕いていえば「NMNを摂取すればサーチュイン遺伝子が活性化し、老化を食い止め、若さを取り戻せるんじゃないか?」という考え。そこで今井教授の研究では、このNMNをサプリメントとしてマウスに与えたところ寿命が長くなったという結果が出ている。今は人間に効くかどうか、研究が進んでいる段階だ。
NMNはもともと枝豆、ブロッコリー、キュウリなどの野菜にも含まれているが、ごく少量なので食品だけで補うのは無理な話。だったらサプリメントで摂ろうと、僕は5年前から飲んでいる。
実はもともとNMNは非常に高額だった。でも何年か前、アメリカと中国の研究者が大量生産できる技術を開発し、その結果、1年ほど前から価格が下がり、急速に普及していった。1日の適量は? どのタイミングで飲むのか? どのブランドを飲むべきか? 実はまだ、何が正しいのかわからない。僕らの会社では、ガスクロマトグラフィーという方法で分析し、NMNが十分に含まれているものを販売しているが、ビジネスパーソンなら、その辺は自身で販売会社のバックグラウンドを調べたり、原料を見て選べばいいと思う。正直、効くかどうか、僕にもわからないけど、10年後に結果がよしとなった場合、飲んでいなければ後悔する。だったらお金に余裕がある人は、飲んでおけばいいという考え。
僕は一般社団法人「予防医療普及協会」の理事を務めている。そこでもYouTubeを通じて、がん治療や新型コロナ、そして老化についても有識者と対談をしている。今や老化について対処するということは、あらゆる疾病(しっぺい)を防ぐ大本の話だからだ。
2003年にヒトゲノムが全解析されてから、もうすぐ20年。実はスティーブ・ジョブズがiPhoneを世にリリースするのに20年かかったけど、その間に半導体の進化などがあり、彼の理想が実現できた。たぶん老化に関しても同じで、技術的にできなかったことが、今や、できそうなところまで来ている。
最新の情報を知っていれば、死なずに済むことがいっぱいある。知らないで損するのが、一番バカみたいな話だ。そういうことを、この連載で語っていきたいと思っている。僕が実際に飲んでいるサプリや薬はNMN以外にもあるので、いずれその話もしたい。僕は健康こそが究極の資産であり、投資先と考えているが、皆さんはどう思うか。近い未来には不老長寿の薬をつくりたいとも思っている。その話は、またおいおいに。
【関連記事】
世界が注目する抗老化物質「NMN」、副作用はあるのか?
CPAPは睡眠をよくし、病気予防までもかなえる
男性ホルモンのテストステロン補充療法は、欧米では一般的
老眼や白内障は克服できる
宇宙でSEXはできるのか? 一問一答!
小田切ヒロ厳選! 最旬美容アイテム8選
Takafumi Horie
1972年福岡県生まれ。実業家。ロケットエンジン開発や、アプリのプロデュース、会員制オンラインサロン「堀江貴文イノベーション大学校(HIU)」運営など、さまざまな分野で活動する。予防医療普及協会理事として予防医療の啓蒙も行う。
Illustration=細山田 曜