カラダは究極の資本であり、投資先である。そう断言する堀江貴文氏が、最先端の医療と美容情報を惜しげもなく伝授する連載「金を使うならカラダに使え!」。第9回のテーマは40代を過ぎると実感しやすい"眼の老化"。人間が得る情報の8割は視覚からといわれ、眼の機能低下による情報量の減少は脳への刺激の減少であり、認知症にも関わるという。今回堀江氏は、ICL、白内障手術の権威である北澤世志博医師に最新の治療法について尋ねた。【過去の連載記事】
眼の老化を抑える、最先端の治療法があることを知ってもらいたい
堀江貴文(以下堀江) 僕は11年前にレーシック手術をして、視力はいいのですが、さすがに最近、老眼が少しきたかなと感じています。暗いところだと細かい字が見えにくくて、同年代の友達の老眼鏡をかけてみたら、確かにきれいに見えるんですよ。
北澤世志博(以下北澤) 一般的に40代後半から老眼が始まりますが個人差があって、視力2.0くらいの人は42~43歳で老眼鏡が必要になり、1.0くらいの人は50過ぎまで大丈夫だったりしますね。
堀江 老眼って、ピント調節をする毛様体が弱ったからとか、レンズである水晶体が硬くなるのが原因といわれてますが、そもそも毛様体って弱るものなんですか? 頻繁にピント調節で動かすので、筋トレになっているようにも思うんですが。
北澤 毛様体は筋肉で、人間が起きている間は休みなく伸び縮みしているので、それ以上の動きをさせて“筋トレ”することはほぼ不可能です。遠くと近くを交互に見るのが効果的ですが、毎日5~10分は続ける必要があるので。
堀江 水晶体が硬くなるのも老眼の原因ですか?
北澤 はい。角膜の後ろにある、毛様体筋に引っ張られて厚みを変える水晶体も加齢で硬化します。原因は水晶体細胞の老化とタンパク質変性ですが、近視が強いほど早く硬くなる傾向があります。
堀江 老眼の対策として進んでいる治療にはどんなものが?
北澤 ICL、いわゆる眼内に挿入するコンタクトレンズの遠近両用版です。近視、乱視、遠視、そして老眼まで矯正できます。さらに「遠近両用」より進化して、遠方から近方までなだらかに焦点が合うレンズも出てきています。
堀江 どういうことですか?
北澤 1m先の「遠方」と、本やスマホを見る30㎝先の「近方」の2焦点だと、パソコン使用時の60~70㎝先が見えづらい。そこで遠方だけでなく、中間から近方までピントの合う多焦点のICLが出てきたんです。40代後半~50代で近眼と老眼がある方が、この多焦点のICLを入れ始めていて、スマホやパソコン、仕事を含む日常生活の範囲では裸眼で過ごせます。
堀江 僕が手術を受けるなら、何歳くらいがいいんでしょう?
北澤 5~10年後。老眼鏡がないと近くが見えないころに。
堀江 その時、水晶体はどうなりますか?
北澤 透明ならば基本的に温存し、濁って白内障になっていたら取って、白内障用の遠近両用眼内レンズを入れます。年齢と白内障の状況に合わせてICLにするか眼内レンズにするかを判断しますね。
堀江 ICLの場合、水晶体を温存するのはなぜですか?
北澤 白内障でないなら取りたくないと希望する方が多いので。
堀江 僕は、どうせ白内障になるんだから、取っちゃえばいいじゃんって思っちゃうけど。
北澤 50代で、白内障は軽度だけど取ってしまおうとなれば、白内障と老眼を同時に、1回の手術で直すことができますね。
堀江 それは可能なんですね?
北澤 はい。水晶体を取れば、将来、白内障になる心配もなくなりますから。白内障用の多焦点眼内レンズは30年以上前からあって、今では30種類以上が研究開発されています。遠・中・近の3焦点、そして最先端のレンズはほとんどの距離にピントが合う5焦点のものです。
堀江 5焦点ですか!?
北澤 遠方~手前まで見え方がなだらかで、理想に近いです。
堀江 値段は高いんですか?
北澤 当クリニックでは両眼・乱視なしで約180万円です。昔と違い、高齢でもアクティブに動く方が多くなってきて、メガネなしで過ごしたいと考える方が増えています。5焦点レンズの白内障手術は、当クリニックの主流です。
堀江 患者さんの反応は?
北澤 裸眼でも見えづらい位置がほとんどなく快適で、世界が変わった、と。
堀江 いいですね! やっぱり僕も5年後くらいに入れよう!
北澤 堀江さんのように最先端の医療をご存知の方は眼内コンタクトレンズよりも、最先端の5焦点の眼内レンズを入れるという選択をされますね。
堀江 手術はどのように?
北澤 ICLはレンズを虹彩と水晶体の間に入れるだけですが、白内障の場合は、水晶体をレーザーで分割して取り出し、そこに眼内レンズを入れます。目薬の麻酔だけで10分程度で終了です。術後に眼の充血や炎症はありますが、1週間ほどですっきり見えるようになります。手術翌日は仕事を休んで、2日目からはデスクワークは可能です。術後の感染防止のため、スポーツや日常生活の制限などは担当医師に確認して指示を守ることが大事になります。
堀江 技術の進化がヤバいです。
北澤 国内の白内障手術は年間約100万件ですが、約9割が保険診療です。5焦点だと自費で高額ですが、レンズは個々に合わせて製作されます。
堀江 老化って、認知機能がいろいろ低下すること。耳が遠くなったり目が見えにくくなったりして、脳に対する情報のインプットの解像度が落ち、刺激が減少して脳が老化していく。だから老化防止のためには、眼ってすごく大事だと思うんです。
北澤 おっしゃるように、視覚から得られる刺激や情報は認知症と大きな関係があります。杖をついてやっと歩いていた人が、白内障手術をしてよく見えるようになったら、急に杖なしで歩き始めたという話もあります。
堀江 老眼や白内障は老化現象だけど、治療を先延ばしせず、裸眼で視野を維持するための治療法があることを、ぜひ知ってもらいたいですよね。
北澤 眼の手術だと「失敗して失明したら」と心配する人は非常に多いですが、例えばICLは世界で20年以上行われている治療法で、症例は積算120万症例以上。そのなかで、失明したという報告は国内外で1例もありません。
※この連載で紹介する医療は、研究中の医学に基づいて自由診療で行われており、現在も検証や臨床試験が続いています。
Yoshihiro Kitazawa
サピアタワーアイクリニック東京執刀責任者。福井大学医学部卒業、医学博士、日本眼科学会認定専門医。東京医科歯科大学、川口医療センターなどを経て2019年より現職。特にICL、白内障手術で著名。学術論文多数。
Takafumi Horie
1972年福岡県生まれ。実業家。ロケットエンジン開発や、アプリのプロデュース、会員制オンラインサロン「堀江貴文イノベーション大学校(HIU)」運営など、さまざまな分野で活動する。予防医療普及協会理事として予防医療の啓蒙も行う。