2024年のルーキー・オブ・ザ・イヤーを受賞したニック・ダンラップ。PGAツアーの歴史を塗り替えたダンラップのように安定したパッティングをマスターする方法を紹介する。吉田洋一郎コーチによる最新ゴルフレッスン番外編。
ブレイクが期待される2人の25歳
最近のPGAツアーはスコッティ・シェフラーの一強時代に突入した感もあり、双璧をなすようなライバルが現れていない。だが、毎年のように有望な若手選手が現れており、そのなかからシェフラーの好敵手になるスターが現れるのではないだろうか。
そんな若手のなかで、2025年ブレイクが期待されるスター候補として注目なのが、スウェーデン出身のルドビグ・オーバーグと、米アラバマ州出身のデービス・トンプソンだ。
2人とも1999年生まれの25歳で、大学生時代から活躍し、すでにそれぞれツアー1勝を挙げている。メジャーでも上位に食い込んだ経験があり、これまで似たような経歴を歩んできた。
2人の2024年のスタッツを見てみると、ストロークス・ゲインド(SG)トータルで、7位がオーバーグ、8位がトンプソンとなっている。
“うまさ”を数値化するSGは、全選手平均に比べて何打稼いでいるのかを表す指標。SGトータルの指標は1ラウンドあたりの選手平均に対して何打稼いでいるかを示すため、シーズンを通した実力を表している。
オーバーグとトンプソンはSGトータルのトップ10に入っている選手のなかでは最年少の25歳。実力と伸びしろの両方を持っているといえる。だが、2人とも課題があり、克服することができれば、シェフラーのライバルとして名乗りを上げることも十分可能だろう。
2人のうちどちらが先に2勝目を挙げるのか、今シーズンの戦いぶりに注目したい。
2人ともツアー1勝挙げ、メジャーでも善戦
スウェーデン南部の小さな町で育ったオーバーグは子供の頃からゴルフを始め、地元のゴルフクラブで腕を磨いてきた。
高校時代からスウェーデン代表に選ばれるなど将来を期待され、米・テキサス工科大に進学。大学時代は最優秀学生ゴルファーに贈られるベン・ホーガン賞を2022年から2年連続で受賞し、世界アマチュアランク1位にも輝いた。
2023年にはジャック・ニクラス賞、ハスキンズ賞を受賞し、3つの学生主要タイトルを独占した史上6人目の選手となった。
この年オーバーグはPGAツアーや欧州ツアーにも参加。PGAツアー・ユニバーシティで1位となってPGAツアー出場資格を獲得し、そのままプロに転向した。
PGAツアー・ユニバーシティは優秀な学生ゴルファー選手にPGAツアーや下部ツアーの出場権を与える制度。オーバーグはその資格によって2023年と2024年のPGAツアーの出場権を獲得した。
2023年はルーキーながらDPワールドツアーとPGAツアーで勝利し、欧米対抗戦のライダーカップのメンバーにも選ばれるなどの活躍を見せ、オーバーグは一躍期待の新人として注目を集めた。
2024年は優勝はできなかったものの、初出場のマスターズで2位となり、実力の片鱗を見せる。
プレーオフ2戦目のBMW選手権でも2位タイとなり、9試合でベスト10フィニッシュを記録。9月上旬に手術した左ひざの状態は問題ないということなので、ツアー2勝目を挙げる日も遠くないだろう。
オーバーグはショットのスタッツは素晴らしいものの、アプローチショットに課題があり、グリーン周りのアプローチの指標であるSGアラウンド・ザ・グリーンのスタッツは2024年105位だった。
特に30ヤードのアプローチと、バンカーセーブ率を高めることが課題といえる。
一方のトンプソンもジョージア大学時代から活躍し、2021年のPGAツアー・ユニバーシティで2位となりプロに転向した。
最初は下部ツアーからのスタートだったが、2023年にPGAツアーに昇格。いきなりザ・アメリカンエキスプレスでジョン・ラームと優勝争いを演じた。
結果は1打差の2位だったが、大いに注目を集め、翌年のジョンディアクラシックで初優勝。全英オープン出場の切符もつかんだ。
メジャートーナメントでは全米オープンで9位に入り、エリートフィールドで戦える能力を示した。あとは経験を積み、ブレイクのきっかけをつかめるかどうかにかかっている。
トンプソンはショットとアプローチのスタッツはいいものの、パッティングを少し苦手にしており、SGパッティングは90位だった。特にショートパットのスタッツがあまり良くないので改善できれば2勝目は近いだろう。
体と腕のシンクロを身につけるドリル
オーバーグはスイング中の体と腕のシンクロが素晴らしく、まるで機械のようにスイングの再現性が高い。オーバーグのように体と腕をシンクロさせるためのドリルを紹介しよう。
ゴルフのレッスンで、胸の前の三角形を保つようにアドバイスを受けたことがあるかもしれない。だが「三角形」と言われても、イメージが湧かない人もいるのではないだろうか。
両肘と胸の中央の3点を結ぶ空間の形が変わらないようにスイングすればよい。
体と腕のシンクロが崩れる原因の多くは、腕を振ってしまうことにあるため、腕を振らないための練習が必要になる。
両肘と胸の空間を崩さないようにするために、ゴムボールを使ったドリルが効果的だ。
サッカーボールより少し小さいゴムボールやクッションなどを胸と両肘に挟んで素振りをする。ボールは自分の体格に合わせて、収まりのよい大きさのものを選ぶのがおすすめだ。
こうしてゴムボールを挟んで素振りをすると、右わきが開く癖のある人は、トップ・オブ・スイングでボールが落ちてしまう。
また、インパクトで腕を振って両肘の間隔が狭まってしまう人は、両肘に押されてボールがつぶれ、上に飛び出してしまうこともある。
バックスイングからフォロースルーまでゴムボールがすっぽり収まったままスイングできれば、体と腕をシンクロした状態でスイングをしたことになるので、適切なフィードバックが得られる。
体と腕をシンクロさせることができれば、スイングの再現性が高まりミスも少なくなる。ぜひ、ゴムボールを使って再現性の高いスイングを身につけてほしい。
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◼️吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。