吉田洋一郎コーチによる最新ゴルフレッスン番外編。今回は期待の若手選手アクシェイ・バティアに学ぶ、ライン出しショットを紹介する。
17歳でプロ転向した注目のエリート、アクシェイ・バティアのライン出しショット
2024年のマスターズは世界ランキング1位のスコッティ・シェフラーが貫録を見せて2年ぶり2度目の優勝を果たしたが、大会前にはマスターズ最後の切符を手にした若手選手に注目が集まった。
その選手は前週のバレロテキサスオープンで優勝した22歳のアクシェイ・バティア。22歳といってもプロ転向1、2年目の選手ではない。
プロ転向は17歳だった2019年。早くからエリート選手として一目置かれる存在だったが、5年目にしてようやく本領を発揮しつつある。
バティアはカリフォルニア州出身で、4歳年上の姉の影響でゴルフを始めた。姉のレアさんも高校と大学時代にゴルフの選手として活躍したという。
バティアは15歳でジュニアの大会で優勝すると、高校生で世界アマチュアランキングトップ10に入るなど、米国ジュニア代表の常連選手だった。2019年にはアマチュアの英米対抗戦ウォーカーカップに17歳で出場し、ジョーダン・スピースが持っていた米国代表チームの最年少記録を塗り替えた。
アメリカでは10代から注目された選手の多くは大学でプレーしてからプロ入りするが、バティアは昔から高校を卒業したらプロ入りするのが夢だったという。
その言葉どおり、彼は周囲の反対を押し切って17歳でプロ入り。精神面の課題もあり、PGAツアー下部のコーンフェリーツアーでの日々が続いたが、2023年のプエルトリコオープンで単独2位に入りPGAツアーの特別一時会員の資格を獲得した。
すると、全英オープンと同じ週に開催されたバラクーダ選手権でプレーオフの末にパトリック・ロジャースを破り、PGAツアープレーヤーの座を確かなものにした。
そして、2024年はバレロテキサスオープンで通算2勝目を挙げ、翌週のマスターズへの初出場を決めた。この試合では初日から首位を快走し、2位に4打差をつけて最終日を迎えたが、デニー・マッカーシーの猛追を受けて追いつかれた。さらに悪いことに、最終18番ホールでバーディーパットを決めてガッツポーズをした際に左肩を脱臼してしまった。
並みの若手なら、思わぬ怪我と相手の勢いに押されて動揺し、勝つことは難しかったかもしれない。
しかし、マッカーシーをプレーオフの1ホール目で下し、見事初日から首位を走り続ける完全優勝を果たした。2度の優勝がいずれもプレーオフというあたり、下部ツアーで苦労した経験が生きているのではないだろうか。
「PGAツアーのイベントで勝つためだけに成長したわけではない。メジャーで優勝することを夢見て成長してきた」と語るバティアがメジャー制覇を果たすのは、遠い日のことではないかもしれない。
ライン出しショットのポイントは同調性
私はゴルフ専門チャンネルでバティアが初優勝したバラクーダ選手権の解説を務めたが、その時のバティアのライン出しショットが印象に残っている。
プレーオフでも、正確にグリーンをとらえるライン出しショットで勝負を決定づけた。
ライン出しショットは距離よりも方向性をコントロールしたいときに有効な打ち方だ。
アイアンでピンを狙うときはもちろん、風の影響を避けたいときや林から脱出するときなど、とにかく方向性を重視したいときに役立つ。
今回はライン出しショットをマスターするためのポイントを解説しよう。
ライン出しショットで重要なのは体と腕の同調性だ。体と腕を同調させるために、シャドースイングの練習を行ってみてほしい。
両脇を締めて両腕を真っすぐに伸ばしたら、下半身の動きに合わせて上半身を回転させる。腕は上半身と連動するようにするため、腕を振らないようにその場に留める意識を持つことがポイントだ。
このシャドースイングが上手くできていれば、下半身の動きを止めれば腕もピタリととまるはず。体の動きよりも腕が動いてしまう人は、普段のスイングで腕を振っている証拠だ。
体の動きと腕の動きが同じだけ動くように繰り返しシャドースイングで練習してほしい。
シャドースイングで体と腕をシンクロさせる感覚をつかんだら、クラブを持って小さなスイングから練習してみよう。
ライン出しショットをマスターすると正確なアイアンショットが打てるようになり、コースも攻略しやすくなるはずだ。
動画解説はコチラ
吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。