PGAツアーで活躍する注目のプロゴルファーに学ぶスイング術を、吉田洋一郎が指南。
マックス・ホマのような再現性の高いスイングを身に付ける片手素振りのドリル
熱戦が繰り広げられているPGAツアー2022-23年シーズンは昨年9月に開幕したが、その開幕戦フォーティネット選手権を大会連覇で制したのがマックス・ホマだ。ホマは今年1月のファーマーズインシュランスオープンでも、最終日に5打差を逆転して優勝。
2月のザ・ジェネシス招待でもジョン・ラームと優勝争いを演じて2位になるなど好調で、今シーズン開幕時には22位だった世界ランキングは6位にまで急上昇している。正確性の高いショットと勝負強いパッティングを武器としたプレースタイルで、メジャー初制覇に期待がかかる。
マックス・ホマはカリフォルニア出身の32歳。日本では知名度が低いが、アメリカではSNSなどでのファンへの気さくな発信が好評で人気が高い。今はゴルフに専念するためにやめてしまったが、月に数回配信していたポッドキャストも多くのファンを楽しませていた。
試合中、テレビ局のマイクを付けてプレーするという役割も快く引き受ける。一流のプレーを見せるだけでなく、ファンを楽しませる重要性を心得ているアスリートだと言っていいだろう。
ホマがプロに転向したのは2013年。カリフォルニア大学バークレー校時代にはNCAA全米学生選手権を制し、アマチュアとして全米オープンにも出場するなど、輝かしい実績を引っ提げてのプロ入りだった。
プロ入り後も下部ツアーで優勝し、間もなくPGAツアーに昇格したが、そこからPGAツアーと下部ツアーを行き来する時期が長く続いた。ついにはドライバーのイップスにも悩まされ、下部ツアーでも予選落ちするようになり、2018年には世界ランク1200位台にまで落ちた。
飛躍のきっかけとなったのは、2020年にコーチとなったマーク・ブラックバーンと取り組んだスイング改造だった。ブラックバーンは2020年のレッスン・オブ・ザ・イヤーにも選ばれたコーチで、最近はジャスティン・ローズのコーチを引き受けて復活優勝に導いたことでも話題を集めた。科学的な視点を大切にしたティーチングが特徴で、ホマも以前とトップの位置が変わるなど目に見えてスイングが良くなっている。
右腕を固定して体と腕のシンクロを身に付ける
PGAツアーで快進撃を続けるホマの長所はショットの正確性だ。ホマのスイングは体と腕がシンクロしており、スイングの再現性が高い。特にバックスイングをアウトサイドに上げることで、両肘と胸の空間の形を変えないようにして体と腕がシンクロを保っている点はアマチュアゴルファーも参考にしてほしい。
今回は体と腕をシンクロさせる感覚を養うための片手スイングのドリルを紹介しよう。
利き手の右サイドを過度に使う傾向にある人は、バックスイングでクラブをインサイドに引いてしまいがちだ。右腕の運動量が増えることで、体と腕のシンクロが崩れ、再現性が低い手打ちスイングになってしまうので気を付けたい。
片手での素振りは試してみたことがある人も多いと思うが、このドリルでは右手でクラブを持った後、さらに左手で右前腕をつかみながら、両肘と胸の空間を崩さないようにバックスイングをする。この時、左手は右腕を動かさないように、その場に留めるように力を加えてほしい。
このような状況では右腕を自由に動かせず、手や腕でクラブを引き上げられなくなる。それまで右腕でクラブを引き上げていた人は、どのようにバックスイングを始動すればよいのか分からなくなるかもしれない。
しかし、下半身からスイングを始動し、体を回転させながらバックスイングを行うことで、胴体の動きに合わせて腕は上がっていく。腕を振らずに体の回転でバックスイングをすることで、両肘と胸でできた空間を崩さずにバックスイングできるはずだ。さらに体と腕のシンクロを高めたい人は、タオルやヘッドカバーなどをわきにはさんでもいいだろう
体の動きにつれて腕が上がっていく感覚に慣れていないと、思うようにクラブが上がらず、かなり窮屈に感じるかもしれないが、これが体と腕をシンクロさせるということだ。
非常にコンパクトなスイングに感じるかもしれないが、そのように感じる人は、今まで腕が自由に動きすぎてオーバースイングになっていた可能性が高い。
左手で右前腕を押さえて行う片手打ちに違和感がなくなれば、今度は両手でスイングしてみよう。右わきを締め、右前腕が動かない感覚を忘れずにバックスイングをすることで、体と腕がシンクロしたバックスイングを行うことができる。
こうして体の回転でクラブを引き上げられるようになれば、体と腕がシンクロした再現性の高いスイングが身に付くはずだ。ホマのようなコンパクトで再現性が高いスイングを目指して練習に取り組んでほしい。