連載「I Don’t WEAR Jewelry. I WEAR Art」。今回は、全世界の女性が憧れる名作バッグをジュエリーに落としこんだ「エルメス」。
たったひとつのパーツだけで、エルメスとわかる
数あるメゾンのなかでも、比類なき存在。生みだされたいくつもの名作は、多くの時代を超えてきた。バッグ「ケリー」はその象徴的な存在だ。誕生は1930年。「オータクロア」の系譜を継ぐバッグとして登場し、ハリウッド女優からモナコ王妃となったグレース・ケリーが愛用したことから、その名を冠するようになった。
デザインにおいて目を惹くのは、フラップを留める「トゥレ・クラスプ」。その留め具のモチーフをブレスレットにアレンジしたのが「ケリー・グルメット」だ。馬具の銜(くつわ)に用いるグルメット・チェーンと組み合わせ、41粒のダイヤモンドをセット。これが何であるか。名を語らずとも、きっとわかるはずだ。
シルエットに惹かれ、精巧なつくりにため息をつく
その存在に気づいた時、女性はきっと色めき立つはず。クロスさせたチェーンの先にあるのは、なんとも小さなバッグ「バーキン」。2012年のハイジュエリーコレクションで誕生したシリーズ。本体にはピンクゴールドによるチェーンが採用されている。ニットのように繊細かつ精密につながれたチェーンが、「バーキン」の象徴的なシルエットを表現する。
そしてフラップを留めるクラスプとストラップには、合計1.17カラットものダイヤモンドが施される。ハンドルまで精巧に再現している洗練されたそのデザインが、ひと目でそれとわかるのは名作「バーキン」ゆえ。チェーンにあしらわれている「シェーヌ・ダンクル」も、そのアイコニックな印象を強める。
■連載「I Don’t WEAR Jewelry. I WEAR Art」とは……
時にファッションとして、時にシンボルとして、またはアートに……。ジュエリーを身につける理由は、実にさまざまだ。だが、そのどれもがアイデンティティの表明であり、身につけた日々は、つまり人生の足跡。そんな価値あるジュエリーを紹介する。