2月下旬、ジョルジオ アルマーニの21-22秋冬コレクションショーで、ひと際存在感を放った芸術品があった。会場中心のGAロゴの上に佇んでいた大きなゴリラの「Uri」。その意図とは一体?
『私の炎、私の光』を意味する聖書の名前
今回のショーの会場中心に設置されていたゴリラ「Uri」は、アーティストMarcantonioによってデザインされたもの。映画のセットの一部だったものをジョルジオ・アルマーニが引き取り、自宅のリビングルームにディスプレイされていたものだという。
では、なぜ21-22秋冬コレクション発表の場に「Uri」を登場させたのだろうか。そこにはアルマーニの明確なる以下のようなメッセージが込められていた。
『私の炎、私の光』を意味する聖書の名前「Uri」は、通常の家庭環境においては少し馴染みにくい存在かもしれませんが「Uri」は動物や自然を愛する私の想いを反映しており、ミラノの私の家では、空間を軽やかにするオアシスのような存在です。今回のコレクションシーンの中心に置くことにしたのは、自然界を守ることの大切さを人々に思い出してもらうことが今まで以上に必要だと思ったからです。この分野において私が責任を果たすためにファッションを通して関わり合いを持てることを素晴らしく思います。
自身と映画の強い結びつきを表すとともに、環境と自然保護に対するアルマーニのコミットメントをあらわすものだった。実際、ゴリラは現在絶滅危惧種に指定されており、アルマーニグループはその保護を支援するために2020年にWWF(世界自然保護基金)へ寄付を行っている。
今季秋冬コレクションのテーマは「ワードローブの構築」。一人一人が自分の思い通りに組み合わせ、コーディネートし、自分自身を表現できる洋服の数々が発表された。
流れるようにソフトなシャツ、しなやかに体を包み込むコート、ジメトリック柄のニットなどの新しいボリュームや仕様、ベルベットとウールのジオメトリックパッチワーク……。ダークネイビーやブラックが自然な色合いとミックスされ、レザーやベルベットの光沢感とともに典型的なアルマーニの色の世界へと誘ってくれた。
ディナージャケットを羽織らずに、上質なベルベットのシャツをさらりと着こなして出かける――。そんな自信に満ちた男の肖像画の表現とともに、圧倒的な存在感の「Uri」によって発せられたショーでのメッセージは、トレンドに左右されない揺らぎないアルマーニの哲学を感じさせてくれたのだった。