ブラックボックスの解析方法とは? 墜落事故の真相が明らかに
宣伝用のチラシのメイン写真は、ヘッドホンをした男の顔。その下に『ブラックボックス:音声分析捜査』。うーん……。面白いのだろうか……。延々2時間、音声を聞いているこの画だけで終わるのではないだろうか。それはそれで面白いか。フランス映画ならあり得そうだ。しかし、フランスで大ヒットしたというではないですか。
物語はタイトルどおり、飛行機事故の原因を探るため、ブラックボックスに残された音声から何が起きたのかを捜査するお話です。うん。そのままだなぁ。主人公・マチューを演じるピエール・ニネは、細身の優等生タイプ。以前デザイナーのイヴ・サンローランを演じ、生き写しのようだと話題になったそうです。その作品、観たんだけどなぁ。彼だったんだなぁ、とモヤモヤ、モヤモヤ。そりゃそうっすよ。忘年会もできず、実家に帰ることもできず、東京の我が家でひたすらセリフ覚えをしていた滝藤。正月からひねくれております。
しかし、これがまさかのぶっ飛ぶ面白さ! ピエール・ニネ、素晴らしい俳優だ。こんな綺麗で繊細で狂気に満ちた俳優にはなかなか出会えない。
主人公の妻・ノエミ役のルー・ドゥ・ラージュもGOOD! 彼女は飛行機の安全性及び環境適合性を認証する機関に勤めているのですが、担当した新型飛行機が墜落。その調査をマチューが担当することになり、夫婦間に緊張が走る。妻が何か隠しているんじゃないか、と。わかる! わかるよ! わかるけども! 夫婦だからこそ、どんなことがあっても開けてはいけないパンドラの箱ってあると思うんですよ。私、その箱は開けたことございません。ちなみに私は開けていただいても全然平気です。
それにしても、ひとつひとつの音声を精査し、状況を読み取るというのは面白い設定です。一歩先の近未来を題材にしていて、AIによる自動操縦など、飛行機業界の未来予想図になっているそうです。この映画の惨事が起きないように祈るばかり。いやぁ、今年も最高に面白い映画でスタートです。
『ブラックボックス:音声分析捜査』
2021/フランス
監督:ヤン・ゴズラン
出演: ピエール・ニネ、ルー・ドゥ・ラージュ
アンドレ・デュソリエほか
配給:キノフィルムズ
TOHOシネマズ シャンテほか全国公開中
2015年公開の映画『パーフェクトマン 完全犯罪』のヤン・ゴズラン監督×ピエール・ニネのコンビが贈る飛行墜落事故を巡るサスペンスドラマ。ブラックボックスに残されたイスラム過激派の男性の声。テロか、操縦ミスか、機体のトラブルか、音から事故の核心に迫る主人公の天才的な聴覚とリサーチ力に感嘆!
滝藤賢一/Kenichi Takitoh
1976年愛知県生まれ。主役の猫・マルの声優を務めるアニメ『かなしきデブ猫ちゃん』(NHK)が放送中。2022年初夏に映画『極主夫道』が公開予定。