俳優・滝藤賢一による本誌連載「滝藤賢一の映画独り語り座」。約6年にわたり続いている人気コラムにて、これまで紹介した映画の数々を編集部がテーマごとにピックアップ。この年末年始に、あなたの人生と共鳴する一本をご提案! 今回は、心に刺さる洋画編Vol.3
『マンチェスター・バイ・ザ・シー』
悲しみをドラマチックにしない。だから映画っぽくなくてぐっとリアルに感じられる
お兄さんのベン・アフレックは有名ですが、ちょっとその陰に隠れてきた印象ですかね。しかし、今作ではまさにオスカーにふさわしい素晴らしい演技を見せています。
昨年の主演男優賞は、熊に襲われたり獣の死体にかじりついたり、感情むき出しのレオナルド・ディカプリオが受賞しましたが、今回の主人公は過剰演技いっさいなし。ドラマチックなシーンでも、まったく勝負せず、一見、役者として何もしていないように見えます。でも彼のなかには沸騰したヤカンの蓋が蒸気に押し上げられ、今にもはじけ飛びそうな感情が沸々(ふつふつ)と煮えたぎっている。無感情なように見えて突然、沸点に到達する芝居はあまりにリアル――。
続きはこちら
『テルアビブ・オン・ファイア』
対立する国同士の壁
今回ご紹介する『テルアビブ・オン・ファイア』は、滝藤がイマイチ理解していないイスラエルの政情を扱った作品。
人気テレビドラマ制作の裏側を描いている今作。只今(2019年10月)、1月クールのドラマ『コタキ兄弟と四苦八苦』を絶賛撮影中の滝藤にとって身近なテーマです。なぜなら、このドラマは古舘寛治さんと私から始まった企画だから……。初めて打ち合わせに参加し、ドラマがどのように作られていくのかを知るのは、とても刺激的でした。おっと『コタキ兄弟』の宣伝をしてる場合じゃなかった!本題、本題――。
続きはこちら
『タリーと私の秘密の時間』
男性も女性も、子育てに悩み苦しんでいるすべての方必見です
俳優の仕事を始めて21年(2018年時点)。私には致命的に、これだけはできないということがあります。それは、短期間のうちに脂肪タプタプになって太ることです。なんで、あんなことができるんだ! 今作『タリーと私の秘密の時間』でのシャーリーズ・セロンがえらいことになっています……。
シャーリーズ・セロンといえば、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』でのあのカッコいい女戦士、『アトミック・ブロンド』では強いスパイですよ。それが今作では妊娠、出産で胴回りがなくなるほど太ってしまった中年女性の肉体を、18キロも増量して作りあげています――。
続きはこちら
『クローゼットに閉じこめられた僕の奇想天外な旅』
本当の幸せとは?
そろそろ入梅の季節ですが、じめじめした時にこそ、カラッとした映画を観たいもの。滝藤、まさに心が晴れ渡る作品と出合ってしまいました。インドのムンバイから母親の遺灰とパスポート、そして100ユーロの偽札と航空券だけで、まだ見ぬ父親に会いにパリへ旅に出てしまう青年アジャのお話です。
『バルフィ!人生に唄えば』『きっと、うまくいく』などインド映画は本当に面白い! そして、いつも思いますが、色使いがカラフル! 本作も母親の着ているサリー、大人になったアジャの青いスーツに黄色いシャツ、街の風景やインテリアなど、最初から最後まで鮮やかな差し色の使い方が素敵。センスのよさは、観ていて心躍ります――。
続きはこちら
Kenichi Takitoh
1976年愛知県生まれ。初のスタイルブック『『服と賢一 滝藤賢一の「私服」着こなし218』』(主婦と生活社刊)が発売中。滝藤さんが植物愛を語る『趣味の園芸』(NHK Eテレ)も放送中。