役者・滝藤賢一が毎月、心震えた映画を紹介。超メジャー大作から知られざる名作まで、見逃してしまいそうなシーンにも、役者のそして映画のプロたちの仕事はある! 役者の目線で観れば、映画はもっと楽しい!!
男性も女性も、子育てに悩み苦しんでいるすべての方必見です
俳優の仕事を始めて21年。私には致命的に、これだけはできないということがあります。それは、短期間のうちに脂肪タプタプになって太ることです。なんで、あんなことができるんだ! 今作『タリーと私の秘密の時間』でのシャーリーズ・セロンがえらいことになっています……。
シャーリーズ・セロンといえば、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』でのあのカッコいい女戦士、『アトミック・ブロンド』では強いスパイですよ。それが今作では妊娠、出産で胴回りがなくなるほど太ってしまった中年女性の肉体を、18キロも増量して作りあげています。
もう、あの華麗なる美女がセイウチにしか見えません。衝撃的な変化で、彼女の役に向かうストイックな女優魂に感服しました。
勿論、そこまで役作りをしているので映画の内容もかなりハードです。
ふたりの子育てに奮闘し、戦争のような毎日なのに、中年期での予期せぬ妊娠。ますます、眠れない日々が続きます。この先、何年もと考えると……。私も4人の子供を授かり、とても充実した幸せな日々を送っておりますが、子育ては綺麗事ではいきません……。特に母親はよりいっそう大変です。
ダンナは優しいし、子供ともいっぱい遊んでくれる。しかし、妻の疲労には気づかない。シャーリーズ・セロン演じるマーロの壊れていく様が見るに耐えない。男性陣は自分が思っている以上に奥様を気遣ってケアしてあげないと、取り返しのつかないことになりますよ! そして、マーロの窮状を見かねて夜だけ派遣されることになるベビーシッター、タリー。マーロの心と肉体をみるみるうちに救っていきます。自分に余裕ができれば子供との関係もよりよくなっていく。こんなことなら、ウチも子供が小さかった頃にベビーシッターさん頼めばよかった! と今更ながら思いました。
普段、家族をないがしろにしている読者の方に、鑑賞を薦めます(笑)。ということで、私もこれから奥さんと久々のデートに行ってきます!
『タリーと私の秘密の時間』
オスカーを受賞した『モンスター』での怪演とは違う意味で、衝撃的な肉体をさらすシャーリーズ・セロンの最新作。『JUNO/ジュノ』のジェイソン・ライトマンと組んで、マタニティーブルーの状態を、謎のベビーシッターと絡め、ミステリー仕かけでみせていく。
2018/アメリカ
監督:ジェイソン・ライトマン
出演:シャーリーズ・セロン、マッケンジー・デイヴィスほか
配給:キノフィルムズ
8月17日より、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開予定