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ENTERTAINMENT

2021.05.09

コロナ禍の理不尽な状況に立ち向かう母親の強さと弱さ【滝藤賢一の映画語り座】

役者・滝藤賢一が毎月、心震えた映画を紹介する連載「映画独り語り座77」。超メジャー大作から知られざる名作まで、見逃してしまいそうなシーンにも、役者のそして映画のプロたちの仕事はある! 役者の目線で観れば、映画はもっと楽しい!

何かを演じなければ耐えられないほど生きにくい世の中

あいつとの関係は戦友というべきだろうか。俺はまったくの無名俳優。あいつはカンヌ女優とは言え、日本での知名度はまだそこまでだった時。互いに原田眞人監督の『クライマーズ・ハイ』に抜擢され、可愛がられた仲。その後のあいつの活躍は言うまでもない。以来、尾野真千子を観ると「元気にやってんなあ」という安心する気持ちと、負けたくないという悔しい気持ちが入り混じる。

そういう同期的な存在は、なかなかいない。稀有(けう)な人物だ。まぁ、あいつは俺のことなんかなんとも思ってないだろうが……。むしろ、真千子より真千子の母親のほうが俺のことを気にかけてくれている。このままだと真千子と俺の思い出話で終わりそうだから本題に入ろう。

今作は石井裕也監督のオリジナル脚本。まるで真千子のために書かれたかのような脚本、と言ったら語弊があるかもしれないが、ピッタリだと感じた。映画『舟を編む』で日本アカデミー賞を受賞した時の石井監督の「この作品は松田龍平さんが主演男優賞を取るために撮った」みたいなスピーチをふと思いだしました。

真千子が演じる良子は、事故で夫を失ったうえに、コロナ禍の影響で経営していたカフェを閉店。昼は花屋、夜は風俗で働きながら子供を育てています。とても厳しい状況ですが、本人は「まあ頑張りましょう」を口癖に明るく前向きに生きている。この時代、母子家庭がいかに大変か、その現実を突きつけられ、やるせない。

「お芝居だけが真実。田中良子の真実」。劇中のこの言葉に衝撃を受けた。「あれはどういう意味だ」と考え続けています。現実社会では嘘や欺瞞(ぎまん)を飲みこんでお芝居をしていかなくては日常が成り立たないけど、演劇は本物の感情を吐きだすことができるということか。ということは……うお! 危ない! これ以上は言えない! ぜひ、映画館で観ていただきたい!

真千子に「めちゃくちゃ素晴らしかった」とメールしようかと思ったが、どうせ「せやろ」ぐらいしか返ってこないので、誌面で存分に褒めました。

滝藤賢一がお薦めする1本

『茜色に焼かれる』

©2021『茜色に焼かれる』フィルムパートナーズ

『茜色に焼かれる』
今年、映画『アジアの天使』の公開も控える石井裕也監督が脚本、編集も手がけた最新作。幼くして母親を亡くした石井監督が、コロナ禍の理不尽な状況に立ち向かう母親の強さと弱さを女優の尾野真千子に託し、描いた作品。
2021/日本
監督:石井裕也
出演:尾野真千子、和田 庵、片山友希ほか
配給:フィルムランド 朝日新聞社 スターサンズ
5月21日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

Kenichi Takitoh
1976年愛知県生まれ。4/9に映画『バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら~』、4/29に『くれなずめ』、8/20に『孤狼の血 LEVEL2』が公開予定。

COMPOSITION=金原由佳

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