異世界の扉を開ける新譜『ゴーストアルバム』
妖しくも中毒性たっぷりのサイケデリック・ミュージックを奏でる3人組バンド、Tempalay。アンダーグラウンドなシーンではすでに一目置かれる彼らが、いよいよ飛躍の時を迎えている。前作『21世紀より愛をこめて』から約1年9ヵ月ぶりの新作アルバムは、アジアや北米ツアーも行い、BTSのRMが楽曲をSNSで紹介するなど国境を超えて注目を集める彼らが「最新型の摩訶不思議な日本」を見せる1枚だ。
『ゴーストアルバム』というタイトルからもさまざまな想像がかき立てられる新作。民謡をベースにしたオープニングの「ゲゲゲ」から、不協和音の合間を浮遊するメロディが心地よい「GHOST WORLD」と、冒頭からかなりユニーク。そのほかにも、ユーモラスなタイトルでジャズとヒップホップを融合させた「忍者ハッタリくん」など挑戦的なナンバーが並ぶ。二胡の響きに「らっせーら!」の掛け声が混じり合うラストの「大東京万博」にいたるまで、誰も聴いたことのないオリエンタルな音世界を打ち立てている。
世界的な潮流でもあるモダンサイケのムーブメントに共振しつつ、日本古来の美とも通じる異次元世界の扉を開ける音楽には、唯一無二の興奮がある。
Tomonori Shiba
音楽ジャーナリスト。ロッキング・オンを経て独立。音楽やサブカル分野を中心に幅広く記事執筆を手がける。著書に『ヒットの崩壊』『渋谷音楽図鑑』がある。