香りは時に、時間と場所を呼び戻す装置になる。街ですれ違いざまに漂った香りで昔の恋人を思いだしたり、スパイスの香りで異国の風景が蘇ったり。これは嗅覚が感情や記憶を司る脳の領域と密接に結びついているためで、マルセル・プルーストの小説『失われた時を求めて』の有名な描写にちなみ、“プルースト効果”と呼ばれている。

静謐な森の景色を想起させる、深遠なる香り
ならば香りは、失われた季節さえも呼び戻せるのではないだろうか。アンリ・ジャックの日本初上陸「スーダン リヴェール」が描きだすのは、静寂に包まれた冬の森の記憶だ。
スパイスとパインニードルの清々しさから始まり、ネロリ、ジャスミン、ローズマリーを経て、オリバナム、苔、レザーへと深まっていく。その重層的な香りは、樹木の力強さや温もりまでも表現し、穏やかに広がる。
香水を纏うことは、まだ見ぬ自分の記憶をつくることでもある。「不意に訪れる冬」に寄りそうような香りとともに、新しい季節の記憶を刻んでみるのも粋だ。
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