PERSON

2026.10.17

エイベックス松浦勝人、本気すぎる「AIでお金を儲ける」実験の中身

約5年ぶりに再開した、エイベックス会長松浦勝人による連載。現代を生きる数寄者が語る、社会のこと、仕事のこと、遊びのこととは。【その他の記事はこちら】

エイベックス松浦勝人の、本気すぎる「AIでお金を儲ける」実験の中身

マネタイズできなければ定着しない

生成AIって、どうやってマネタイズすればいいんだろう。この疑問が、そもそもの始まりだった。AIといっても、お金が儲からなければビジネスとして定着しない。それで、AIを使いながら、さまざまなマネタイズの実験をしている。noteの人生論もその中から生まれたものだ。

AIを使っていると、AIエージェントが勝手につくってしまうことがある。Xで告知した「X誹謗中傷・炎上監視レポート」も知らない間にできていた。毎朝9時にレポートメールがくる設定になっていて、「なんでこんなメールがくるのかな?」と驚いた。まったく記憶がないので、秘書に「こんな仕組みつくるように頼んだっけ?」と確認したら、そのようなものは頼まれていないと言う。「会長がご自身でつくったんじゃないですか?」と言う。

「X誹謗中傷・炎上監視レポート」は24時間Xを監視して、僕に対する誹謗中傷にあたる投稿を検出して、毎朝レポートしてくれる。必要ならば、そのまま投稿者の開示請求を提出することも可能だ。他にも使いたい人がいるのではないかと思ってXで告知をしてみた。かなりの人数の人が使いたいと言ってきたけど、その多くがAIを使いこなしていることで知られている人ばっかりなんだよね。僕にだってつくれてしまったぐらいなんだから、AIを使いこなしている人だったら同じものが簡単につくれる。これではマネタイズができない。

何かうまいマネタイズ方法はないのかと思って、Xをいろいろ見ていたら、やたらとnoteというキーワードが出てくる。どうもブログ投稿サイトなんだけど、記事の前半は無料で公開し、続きを読む場合はお金を払うという仕組みにできるという。これはマネタイズできる可能性があるのではないかと思った。

でも、noteのアカウントをつくったり、設定をするのは面倒なので、AIに「全部、お前がやってくれ」と頼んだら、アカウントつくるところから、記事の投稿までAIが勝手にやってくれるようになった。その後、多くの人から「スキ」をいただいて話題になったのはみなさんご存知のとおり。

すべてAIがやってくれているといっても、AIが適当につくった記事をただ投稿しているわけではない。僕の過去の連載記事、インタビュー記事、YouTubeの動画など、僕に関するものはすべて読み込ませている。それを各回のテーマに沿って再構成させて文章を生成させている。

生成された文章は自分で目を通して、事実関係が誤っているところや、僕らしくない考え方、僕らしくない言い回しはすべて指摘して修正させている。第3回目の「チャンスは、変な顔してやってくる」では、「幸運の女神には前髪しかない」というフレーズが出てくる。実は、僕はこの格言を知らなかった。AIが出してきた。「こんな格言、ほんとうにあるのか?」と思って、それもAIに尋ねたら根拠になる引用を出してきた。世の中で使われている表現であるのならとOKを出した。こういう作業にかなりの手間がかかる。AIはすでに120回分を用意していると言うんだけど、僕のチェック作業がまるで追いつかない状態になっている。

同じ材料を使って、小説を生成させることも試みた。事実に基づいたフィクション小説を考えた。しかし、これはまったく面白くならず失敗だった。

僕の人生に、何か物語的な起承転結があるわけではないし、感動的なラストシーンがあるわけでもない。さらにフィクションを入れると、余計な描写が増えて、それがことごとく面白くない。普通の人が読んだら退屈に感じるだろうなと、小説はボツにした。

ひとつのアイディアだけど、太宰治などの文豪の文体を学習させて、僕の材料を使って小説を書かせたら面白くなるかもと思っている。こんな風にどんどんアイディアが湧いて出てくるけど、試してみる時間がなかなか取れない。

失敗するから、AIを使うコツがわかる

noteの人生論が反響があったので、それを漫画にすることもやってみた。「島耕作みたいな感じにして」と頼んだら、それっぽい感じに仕上がって悪くない。これもXで公開してみた。

オーディブル(朗読)もつくってみた。最初は自分の声を取り込んで、僕が話しているようにしようと考えた。でも、AIは話し方をわざと下手くそな感じにしてくる。素人っぽさを出そうという気遣いなのかもしれない。でも、これでは聞きづらいし、僕もなんか恥ずかしいので、結局、公に販売されているボイスデータを購入することにした。でも、これもなんか不自然で難しい。

AIの先生をしてもらっている人に相談すると、点を意図的に入れていくと読み方が自然になるというテクニックを教わって、これもAIに「こういう風に点を入れて、自然な読み方にしろ」と命令してやってもらった。それでようやく、人に聞いてもらってもおかしくないものになった。これもXで公開している。

さまざまなものをつくってみて、うまくいくこともあるけど、失敗していることも多い。でも、その失敗からAIの使い方のコツみたいなものがわかってくる。脳に少しでも隙間があれば、あれをどうしようか、次に何をやろうか、あれもできる、これもいけると何かしら考えてしまう。AIの利用料って決して安くなくて、特に動画生成などではAPIの利用料が結構高くつく。でも、僕の場合は、飲みにいくより安上がり。だから、今日も自宅で何かをつくっては試している。

松浦勝人/Masato Matsuura
1964年生まれ。エイベックス会長、音楽プロデューサー。24歳でエイベックス創業、ユーロビートブームの発信源となる。浜崎あゆみ、TRFなどのプロデュースを手がけた。
X:@maxmatsuuratwit
YouTube:@masatomaxmatsuura

TEXT=牧野武文

PHOTOGRAPH=長尾真志

STYLING=安部賢輝

HAIR&MAKE-UP=小林潤子(AVGVST)

PICK UP

STORY 連載

MAGAZINE 最新号

2026年11月号

今から欲しい昂るコート

ゲーテ2026年11月号表紙

最新号を見る

定期購読はこちら

バックナンバー一覧

MAGAZINE 最新号

2026年11月号

今から欲しい昂るコート

仕事に遊びに一切妥協できない男たちが、人生を謳歌するためのライフスタイル誌『ゲーテ11月号』が2026年9月25日に発売となる。特集「今から欲しい昂るコート」では、トップメゾンの最上級コートからインナー選びの極意までを網羅! 表紙は朝美絢。独占インタビュー&撮り下ろし8ページもお見逃しなく。

最新号を購入する

電子版も発売中!

バックナンバー一覧

GOETHE LOUNGE ゲーテラウンジ

忙しい日々の中で、心を満たす特別な体験を。GOETHE LOUNGEは、上質な時間を求めるあなたのための登録無料の会員制サービス。限定イベント、優待特典、そして選りすぐりの情報を通じて、GOETHEだからこそできる特別なひとときをお届けします。

詳しくみる