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2024.02.25

世界のクリエイターに話題、幻のカレンダー「ピレリカレンダー」一部公開

イタリアのタイヤブランド「ピレリ」が毎年制作している、世界で最も有名なカレンダー。単なる日程表という立ち位置を飛び越え、その存在はまるでアートブックの様相だ。世界中のアートコレクターやファッション関係者、そして写真家などから熱い話題を集める50作目、2024年版のピレリカレンダーをご紹介。

Prince Gyasi(The Cal 2024)

世界で最も有名な、買えない(!?)カレンダーとは

フェラーリやランボルギーニ、F1などでお馴染みのイタリアのタイヤブランド、ピレリが1964年から発行しているカレンダー「The Cal」。

著名フォトグラファーによるアーティスティックな作風と、時代を象徴するセレブやモデルたちが登場する、いわばアート写真集としても高い評価を得てきた。限定発行にも関わらず、アートコレクターやファッション関係者、写真家など、世界中に多くのファンを持つ。

2023年末、ロンドンにおいてグリニッジ近くの「マガジン・ロンドン」で開催されたピレリカレンダー60周年を祝う発表会に筆者が参加。2024年版ピレリカレンダーは、実に50回目を数える芸術的かつ文化的価値をも備える。

創刊版となる1964年版カレンダーは、ザ・ビートルズのジャケット写真(『With The Beatle』から『Rubber Soul』まで)を手がけたロバート・フリーマンが担当。

以降、カレンダーのディレクションはロンドンで行われるのが慣例となり、写真家たちは毎年テーマに則ったクリエーションを創作してきた。これまでハーブ・リッツ、ブルース・ウェバー、ヘルムート・ニュートン、スティーブン・マイゼル、アニー・リーボビッツ、ピーター・リンドバーグなど、豪華顔ぶれの面々だ。

最近の傾向では、女性や人種などのトピックスに敏感なテーマが選ばれてきた。例をあげると、2018年版はティム・ウォーカーがオールブラックキャストで「不思議の国のアリス」の世界を作りあげたのは記憶に新しい。

今回の『The Cal』 2024年版を担当したのは、ビジュアルアーティストのプリンス・ジャスィ(Prince Gyasi)。1995年にガーナで生まれ、10代のときにiPhoneを使った写真作品で、一躍世界にその存在を認められるようになったアーティストだ。

日本では、2022年に行われた『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭2022』に招待されて大きな話題を呼んだこともあって、「たいへん好意的に思っています」とロンドンでのインタビューの際に語ってくれた。プリンス・ジャスィの起用は、ナイスキャスティングだと思った次第。

作品の多くは、アフリカ系の人たちを主人公に、ビビッドに色処理された背景などと組み合わせた作風が特徴。

最新版「The Cal」でも同様だ。モデルのナオミ・キャンベルや、バイデン大統領就任式で自作の詩を読んだアマンダ・ゴーマン、シンガー・ライターのザ・ブリッツことジェイムズ・サミュエルらが、ガーナ出身の元サッカー選手らとともに登場。鮮烈な原色に近い背景色とともに強烈な印象を与えてくれる。

人選の理由を「タイムレスというテーマに従って、自分が子どもの時から今に至るまで、アイコン的存在であり、インスピレーションを与えてくれたひとたち」とプリンス・ジャスィは説明する。

「アフリカ系のひとたちのみ取り上げてきているのは、ガーナ出身の自分の作品でもってアフリカに色を付け直し、ネガティブなイメージを払拭したいからです。アフリカのひとびとの美しい生活を知ってもらいたいという思いをもって作品を作ってきました」

そして、もうひとつのテーマがある。「それは被写体たちが象徴するもの」とプリンス・ジャスィ。

「自分にやりたいことがあるときは、そこに集中していくことが大事なんだ、と『The Cal』に出てくれたひとたちは教えてくれています。環境、年齢、名声、お金などと関係なく、自分の才能を信じていれば道を切り拓いていける。それを感じてもらえれば」

この言葉は、プリンス・ジャスィの活動「Boxed Kids」につながる。聞き慣れない言葉だけれど、ガーナ首都アクラにいて、状況や地域に閉じ込められた(boxed)青少年たちに、教育などを通して可能性を与えるプロジェクトだ。

プリンス・ジャスィの思想と活動は、ビジュアル作品の出来のよさとともに、「The Cal 2024」を特別なものとしていると感じられる。

本作品で出演するのは多彩な才能を持ち活躍する方々。ガーナの画家兼ビジュアルアーティストであるアモアコ・ボアフォ(Amoako Boafo)をはじめ、1994年「ティナ」でアフリカ系米国人初のゴールデングローブ主演女優賞を受賞した米女優のアンジェラ・バセット(Angela Bassett)からガーナ人の母を持つ英国の売れっ子俳優イドリス エルバ(Idris Elba)、そしてThe Bullittsで知られる英国のシンガー・ソングライタージェイムズ・サミュエル(Jeymes Samuel)など、多数が出演している。

高級タイヤの開発、販売やモータースポーツへのタイヤ供給だけではなく、アートカレンダーの制作も行うイタリアのピレリ。「The Cal」は残念ながら非売品。ごく一部の方にのみ贈られるもので、通常では手に入らないことでも知られている。どうしても欲しいという諸兄には美術本を扱う書店で見つかることが稀にあるとだけお伝えしておこう。

TEXT=小川フミオ EDIT=ダニエル利樹(ANGIE Castro)

PHOTOGRAPH=Pirelli The Cal

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