特異な歴史で育まれたオキナワンカルチャー。独自の潮流が生まれ、新たなステージへ向かっている。それを牽引する目利きが見据える未来とは? 今回は、“オキナワコーヒー”の新潮流を紹介する。【特集 沖縄に住む】
情熱溢れる焙煎家やバリスタたちが盛り上げる、沖縄のコーヒーカルチャー
コーヒーベルトの最北端に位置し、新たなスペシャルティコーヒー豆の生産地として注目される沖縄。世界的に良質なコーヒー豆産地として高く評価される台湾とも近く、生産者やロースター同士の弛まぬ交流から独自のコーヒー文化の“波”を育むこの地で、焙煎士・山田哲史さんはその牽引を担ってきた人物でもある。
神奈川から移り住んで22年。「一生を通じて関われるテーマ」を模索した20代後半に沖縄でコーヒーの魅力にハマり、幾多の縁あって栄町市場に「COFFEE potohoto」を開業。気づけば“焙煎の奥深き世界”にどっぷり身を浸していた。
2006年の開業当時はコーヒー業界がサードウェーブの登場に色めき立ち、“オキナワコーヒー”も大きな転換期に突入することに。
「だからこそ、焙煎も抽出方法も定石や型にはまる必要がなくなった。自分のスタイルを追求するうえで、タイミングも運もよかったんだと思います」
いい意味で、時代の波にのって独学で焙煎を学び、インドネシアや台湾などの産地に直接足を延ばすなど、さまざまな角度からコーヒー豆と向き合った。
「沖縄は実は日本におけるコーヒー豆栽培発祥の地で、100年近い歴史を持っています。何十軒もあるうち、実際に稼働する農家はまだひと握りですが、年々品質も向上して風味のポテンシャルも高く、今やスペシャルティコーヒーとして認定される農園も3つある。焙煎家と生産者の距離が物理的にも近いことで密なやり取りがかない、互いに学び合える機会が多く持てるのも利点ですよね。言語の壁なく意思疎通できる環境で、僕がこれまで他のアジアの産地で学んできたことはもちろん、双方のフィードバックを介してお互いの技術を高め合うことができるのも魅力です」
そう熱く語る山田さんは現在、世界的に権威あるコーヒー豆の品評会「COE(カップオブエクセレンス)」の国際審査員も務め、世界を舞台にコーヒー豆の品質向上に心血を注ぐ。
「沖縄には情熱溢れる焙煎家やバリスタがたくさんいます。今回お薦めする3軒は、そんな想いを共有する仲間。多様性を受け入れる度量の広さがあり、皆で沖縄のコーヒーカルチャーを盛り上げていこうという一体感がクオリティを底上げしている」
オキナワコーヒーの新たなる潮流から、しばらく目が離せそうにない。
COFFEE potohoto/コーヒーポトホト
住所:沖縄県那覇市安里388-1(栄町市場内)
TEL:098-886-3095
営業時間:10:00~18:00
定休日:日曜
山田さんお薦めめの3軒
1.豆ポレポレ×coffee.monbeya|ストイックに技を磨く世界的焙煎士
コーヒーの焙煎技術を競う世界大会「WCRC」で2位入賞を果たす焙煎士・仲村良行さんによる、スペシャルティコーヒー豆の焙煎店。遠方から訪れるコーヒーファンも多い。
豆ポレポレ×coffee.monbeya/mamepolepole×コーヒーモンベヤ
住所:沖縄県沖縄市中央2-7-46 1F
TEL:098-960-5516
営業時間:11:00~17:00
定休日:日・月曜
2.Humming Coffee|パイオニアの血を注ぐ新世代の担い手
沖縄のスペシャルティコーヒー店のパイオニア「沖縄セラードコーヒー」を経て、焙煎士・末吉業人さんが2022年にオープンしたロースタリー。小規模農園を中心に7~8種の自家焙煎豆を扱う。
Humming Coffee/ハミングコーヒー
住所:沖縄県沖縄市久保田3-1-12 2F
TEL:098-989-0908
営業時間:10:30~L.O.18:30
定休日:火曜
3.YAMADA COFFEE OKINAWA chapteR|コーヒーライフの素晴らしさを伝えるナビゲーター
宜野湾の「YAMADA COFFEE OKINAWA」がロースティングファクトリーとしてオープンした2号店。焙煎士山田浩之さんの情熱で、多様化するコーヒー業界でも最高品質のコーヒー豆のみを揃える。
YAMADA COFFEE OKINAWA chapteR/ヤマダコーヒー オキナワ チャプター
住所:沖縄県那覇市泊2-15-6
TEL:098-975-5590
営業時間:10:00~17:00
定休日:月曜
この記事はGOETHE 2024年9月号「総力特集:人生の楽しみ上手が集う島 沖縄に住む」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら