紹介者がいなければ訪ねられない店が京都にはある。同じ価値観を持つ店主と客がつくる空間は心地よく和やか。伝手(つて)を探して訪れたい。※GOETHE2022年11月号掲載記事を再編。
1.鮨と和食とイタリアンが融合してたどりつく唯一無二の味「きう」とは
岡山にこの店ありと名を轟かせる「すし処ひさ田」が京都に新店を開業するらしいと話題になり、全国の鮨ファンが沸きたった。そんななか2020年7月、京都の街中に待ち焦がれた店がついに開業。「店名は? どこにあるの? すぐにでも予約して行きたい」と食いしん坊は思ったはずだ。だが、ある意味、その期待は裏切られた。なぜなら、開業した「きう」は、完全紹介制だったから。
店主の久田和男さんは東京で生まれ、大阪の調理師学校ではイタリアンを学んだという。だが、卒業後に入店したのは、叔父が営む大阪の鮨店。幼い頃にテレビドラマで見た鮨職人が粋でいなせ。その姿に憧れたそうだ。そして23歳という若さで独立し、岡山で店を開いた。瀬戸内の魚介類を使った鮨はたちまち評判になり、全国から食通が足を運ぶ人気店になった。
2.白川の畔に開店! 京都の紹介制・割烹料理店「青柳」
「もともと美味しい魚だからこそ、どう調理するかが料理の要です。季節の野菜と組み合わせることで、魚本来の個性を引きたてます」と話すのは、店主の青柳旭紘さん。大学卒業後に専門学校で学び、フレンチや和食、スパニッシュとさまざまな店で経験を積んだ。そして、30歳で独立。魚介類メインの割烹を営むなかで、魚の知識も調理技術も深まっていったという。
そんな青柳さんが満を持して白川の畔に開店したのが紹介制で客をもてなす「魚料理 青柳」。「繁華街からは少し離れた静かな場所で、丁寧につくった心づくしの魚料理を特別なお客様に味わっていただきたい」と青柳さんは言う。
3.時間を忘れ寛げる路地奥の店「Gibier MIYAMA」
花街・祇園のなかでも、とりわけ風情のある石畳の路地を進むとたどりつくのが「Gibier MIYAMA」。京都・美山のジビエや野草などを使ったコース料理を味わえる紹介制のレストランだ。L字型のカウンター前には炭焼場があって、食材が焼ける様子だけでなく、香りや焼ける音など、五感で料理を楽しめるライヴ感もいい。
オーナーシェフの神田風太さんは、花街のワインバーなどで調理やサービスを経験した人物。幼い頃から出身地・美山のジビエや野草に親しんだこともあり、それぞれの特徴はもちろんのこと、旬や味わい、個性の引きだし方にも長けている。