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2024.07.31

行動科学の専門家が指摘。人は「続けなきゃ」と思うから「始められない」

英会話、資格の勉強、ダイエット、禁煙など、始めたいのにできない人には共通の傾向があった……! 行動科学マネジメントの第一人者、石田淳さんが誰がやっても成果を出せる実践的メソッドで「始め方」を指南。『始める力』より、一部を抜粋してお届けします。

勉強に飽きてふざける少年の写真

続けるかやめるかの答えを出すことに「始めた意味」がある

なにか始めたいことがあるのに躊躇している人に、勘違いしないでほしいことがあります。「始めたからにはやめられない」ものでもないし、「始めたことをやめてしまうのはマイナス」でもないということです。「始める」とは、それだけで、あなたの人生に確実なプラスをもたらす行動なのです。

なにかを始めたあとには、必ず2つの選択肢が待っています。

  • 1 始めたことを続ける
  • 2 始めたことをやめる

多くの人が、「1」でなければならないと考えてしまいます。しかし、実際には、このどちらであってもいいのです。意外に思われるかもしれませんが、始めたことを、やめてもいいのです。なぜなら「続けなくていい」という答えが出たのですから。

一番まずいのが、「もう続ける必要ないんじゃないか」と思いながらやめないこと。つまり、ずるずると答えを出そうとしないことです。

ところが、仕事でも恋愛でも、そういうケースがかなり見受けられます。

「この会社にいてもしょうがないんじゃないか」と思いながら、ぐずぐず辞めずにいて転職ができない年齢になってしまう。

「この人とは別れたほうがいいんじゃないか」と思いながら、とりあえず一緒にいる人が欲しくてつき合い続け、腐れ縁になっていく。

あなたの周囲にも、こういう人が多いのではないでしょうか。

人は、一度手に入れたものを手放すことが、なかなかできません

「あれもこれも持っていたほうが、最後は有利なんじゃないだろうか」

「捨てることはいつだってできるのだから、とりあえず確保して……」

などと考えるからです。

しかし、得をしたくて手を放さないでいるために、本当につかむべきものをつかめないということが起こります。

もちろん、続けることは力になりますし、そこに意義を見いだせるなら頑張る必要はありますが、超セルフマネジメントの時代には、自分を苦しめるだけの選択はすぱっとやめて、新しい世界を探る勇気も持たなくてはなりません。

「なにかを始める」ということは、いずれそのことに答えを出すこと。どんどん始めて、どんどん答えを出していけば、自ずと決断力もついていきます。

あなたが始めたことならば、続けるのもやめるのもあなたが自由に決める。その答えを出せるのは、あなたしかいません。

「続けなくては」と思うと始められない

たとえば、仕事場における良い挨拶について考えてみましょう。そのやり方を教えてもらって理解しても、続けることができなければ、「挨拶一つできないやつ」という評価を下されます。いくら良い行動の取り方がわかったとしても、それを継続できなくては、良い結果にはつながらないのです。

だから、なにかを始めるということは、それを続けることが前提になっています

あなたが、勉強やダイエットやスポーツなどを始めようとしているとき、三日坊主で終わらせたいとは思っていませんよね。良い結果が得られるまで継続することを前提として取り組むはずです。

「始める」と「続ける」がセットになるのが、理想なのです。そして、ここに、良くも悪くも大きなポイントがあります。

始めたからには続けられればベストですが、それに縛られると、「始める」ことそのものが困難になります

ある30代の男性は、友人から指摘されたことを気にしていました。

「そんなに仕事ばかりしていて、なにか趣味はないのかよ」

友人は軽い気持ちで言ったのでしょうが、彼にはぐさりと刺さりました。

「もしかしたら、自分はつまらない人間で、だから彼女もできないんじゃないか……」

「認知のゆがみ」も加わって、居ても立っても居られない気分になりました。

そこで彼は思いきって、テニススクールに入ってみました。日曜日の午前中なら必ず行けるし、女性会員も大勢いそうだったからです。

でも、独特の社交的雰囲気になじめず数回通ってやめてしまいました。

その後もいろいろな趣味のサークルなどに属してみたものの、ほとんどが三日坊主。そのうち、なにかを始めるのが怖くなってきたようです。

「これ以上いろいろやっても、どうせやめてしまう自分がいるのかと思うと弱気になってしまうんです」

彼は、「続けられない自分」を責めていました。

しかし、ここは発想の転換が必要です。彼が始めたことはどれも、本当に彼がやりたいものではなかったということです。それがわかっただけでも、いろいろ手を出した価値があります。「続けられなくて良かった。やりたくないことがわかったから」ということです。

それに、彼があれこれチャレンジして、そのたびにやめてみたところで、誰にも迷惑はかからないし、誰に非難されるものでもありません。もちろん続けることが目標ですが、だからと言って「やめる」ことを避けなくていいのです。嫌だったらやめる。そして次のことを始める。

「始める」ことよりも「続ける」ことを意識すると、自らハードルを高くしてしまいます。

この記事は幻冬舎plusからの転載です。
連載:始める力
石田淳

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