連載「意欲的新作ウォッチ」第162回は、パルミジャーニ・フルリエ「トンダ PF スポーツ」を取り上げる。
オン・オフ兼用を完璧にこなすタイムピース
創業1996年という若いブランドでありながら、まるで老舗のような貫禄を感じさせるウォッチメインキングに定評があるパルミジャーニ・フルリエ。
創業者のミシェル・パルミジャーニは、1976年にアンティーク時計の修復専門の工房「「ムジュール・エ・アール・デュ・タン」を開設。パテック フィリップ・ミュージアムやシャトー・デ・モンが所有する貴重なタイムピースを修復することで名声を高め、氏はやがて“神の手を持つ時計師”と呼ばれるようになる。
ブランドの立ち上げ後は、いち早くマニュファクチュール化を進め、有力なサプライヤーを次々とグループに収め、垂直統合型のビジネスモデルを確立。これによって、より自由度の高いウォッチメインキングや優れた生産体制を実現させている。
カジュアル化で汎用性を高めたパルミジャーニ・フルリエの新定番
ブランド当初はドレッシーなデザインが主流だったが、2020年に初のスポーツウォッチ「トンダ GT」を発表してからブランドに大きな転機が訪れる。翌2021年には、ブルガリのウォッチメイキングのレベルを飛躍的に高めた功労者のひとりであるグイド・テレーニ氏がCEOとして参画。氏はレガシーの継承と並行して、現代のライフスタイルに見合うラグジュアリーウォッチの創造を目指している。
グイド・テレーニ氏が送り出した新コレクション「トンダ PF 」は、クラフトマンシップとコンテンポラリーな感性が同居するコンプリケーションが多数揃う。そのなかでも今回の最新作「トンダ PF スポーツ」は、これまで以上にスポーティなライフスタイルにフィットする要素が散りばめられている。
これまでの「トンダ PF 」との違いは、ベゼルの刻みにある。従来のモデルの場合、225本の刻みが入るのに対して「トンダ PF スポーツ」は160本と刻みの幅を変更。視認性が約束されたシンプルなダイヤルは、「クル・トリアンギュレール」と呼ばれるギョシェ装飾を施し、独特な光の反射を生み出している。
職人の手作業によるハンドステッチが施されたコーデュラ加工のラバー製のストラップは、ラグの間に固定する部分がシームレスに設計されているため、ケースと一体化しているような印象を与える。
実用面で優れた点は、「トンダ PF スポーツ オートマティック」に搭載された自動巻きムーブメントCal.PF770は、ツインバレル方式でパワーリザーブは約60時間。もう一方の「トンダ PF スポーツ クロノグラフ」に搭載された垂直クラッチ式のコラムホイールの高振動クロノグラフムーブメントCal.PF070は、COSC(スイス公式クロノメーター検定機関)の精度認定を受け、約65時間のパワーリザーブを誇る。また全モデルの共通して100m防水性能を備えていることもスポーツモデルらしい特徴である。
シンプルなデザインと確かな存在感を兼ね備えた「トンダ PF スポーツ」の活躍の場は非常に幅広い。オン・オフ兼用のスポーツウォッチとして、これに勝るモデルを探すのは難しいと思えるほど完成度は高いだろう。新しいラグジュアリーな価値観を創出するパルミジャーニ・フルリエが発信するスポーツウォッチはまさに新定番と呼ぶに値するのだ。
問い合わせ
パルミジャーニ・フルリエ pfd.japan@parmigiani.com
■連載「意欲的新作ウォッチ」とは……
2023年も高級ウォッチブランドから続々と届く新作情報。その中から、新鮮な驚きや価格以上の満足感が味わえる“活きのいい”モデルを厳選! 時代を超えて輝き続ける、腕時計のパワーを改めて感じて欲しい。